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ジュテームアラフォリ  作者: ウサギのスープ
第一章:出会い
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五話:信奉者

 ある大きな建物の屋根に、全身黒ずくめのやせ細った男が立っている。


「なにやら変わった気配の方をつけてみれば、面白いことを聴いてしまったのですデス」


 黒ずくめの男が、独り言を言いながら建物内の様子を探っている。

 すると、この建物に向かってくる男達の姿が見えた。


「おや?おやおやおやおやおやぁ、あれはもしや『正教会』の教会騎士ではないですデスか!」


 そう言いながら、黒ずくめの男は彼らからは見えないように身を潜めた。

 黒ずくめの男は、不気味な笑顔を浮かべている。


「我らの宿敵はこんな所に何の用なのですデスかね。……もしや、我らの動きを嗅ぎつけたのでしょうかね」


 黒ずくめの男が独り言を言っている間に、彼らは建物の中に入っていった。


「失礼させてもらう」


 中から大きな声が鳴り響くのを聴きながら、黒ずくめの男は意識を建物内に向ける。


「これはこれは、何やら面白そうなことが起ころうとしているではないですデスかぁ──」


 黒ずくめの男は、不気味な笑顔を浮かべたまま、窓のない屋根を凝視している。

まるで、黒ずくめの男には中の様子が見えているかのように。


********************


 ギルドの扉が開かれ、入ってきた男達の先頭に立つ赤髪の男は、自分達が何者なのかを大声で告げた後こう言い出した。


「我々の目的が済んだらすぐに出て行く。だから君達は動くな」


 そう言ってこちらに命令してくる男は、白を基調とした鎧を身に着けていた。


「ふざけんじゃねえ!何でおれ達がおまえ等の言うことを聞かなきゃ何ねぇんだよ」


 酒に酔ったオッチャン達が騎士を名乗る彼らに、怒鳴りながら近づいていく。


「動くなと言ったはずだが?」


「はぁ?おれらの話聞いてたか?」


 赤髪の男は同じ鎧を身に着けた男達の方を向いて話だす。


「おまえ達は調査を始めろ。コイツらの相手は私がやる」


「ハッ!」


 赤髪の男の指示で、他の男達が動き始める。


「なに勝手なこと言ってんだ。ここはおれ達の場所だぞ!」


 オッチャン達が鎧を着た男達を取り囲んでいく。


「どきたまえ」


「おまえ等、今の状況分かってんのか」


 そう言いながら、オッチャン達が一歩踏み出した。


「状況なら分かっているとも、分かったうえでの命令だ」


 赤髪の男はそう言うと同時に、腰に下げた剣を抜きはなった。

 オッチャン達が武器を構えるより速く、赤髪の男の剣はオッチャン達を斬り伏せる。


「なっ──!」


「おいおいおい……」


 一瞬の出来事に動けないでいたディーナと、大急ぎで一緒にいたお姉さん達と、ピクリとも動かないクララをスミスが避難させる。

 そして俺は、オッチャン達がやられるのを見ているしかできなかった。

 何故かというと俺は、赤髪の男と同じ鎧を着た男達に囲まれていたからだ。


「ウルト様、この者から『黒の魔法』の反応が!」


「はぁ?今なんて──」


「そうか、なら仕方がないな」


 赤髪の男は一瞬で俺の前に現れて、俺の首筋に剣を突きつけていた。


「──ッ!?」


「私の質問に答えれば殺しはしない。だから動くな」


 あまりの迫力に、指先まで動かせなくなってしまった。


「キミの名は?何故キミから『黒の魔法』の反応があるんだい?」


「ひ、人に名前を聞くときは、まず自分からだろ……」


 なんとか絞り出した俺の言葉を、赤髪の男は鼻で笑ってから答える。


「いいだろう、教えてやる。私の名は、グラン・ウルトだ。さっきも言ったように正教会の騎士をしている。さぁ答えたぞ、次はキミが私の問に答える番だ」


 更に迫力が増したグランが俺に言ってくる。


「俺は、サオトメ・アキヒトだ。それと、もう一つの質問については何も知らない」


「知らないだと」


 剣を突きつけたまま、グランは俺を睨みつける。


「そんなはずがないだろう。この魔水晶ますいしょうが、キミから『黒の魔法』の反応があると教えてくれているんだ。もしやキミ、『魔女信奉者まじょしんぽうしゃ』の者か?」


「魔女──信奉者?」


「あぁそうだ。キミから『黒の魔法』の反応があるとゆうことは、少なからず魔女と関わりがあるということになる。それはつまり、魔女信奉者の者しか有り得ない!」


 そう言って今にも俺の首を切り落としそうなグランの勢いに、俺もおされていく。


「お、俺は魔女信奉者なんかじゃねーよ!何なんだよさっきから魔女、魔女って!」


 そう言いながらも、『魔女』という単語を聞く度に、俺の頭の中には、あの銀髪の少女の姿がチラチラとよぎっていた。


『うふふふふ────』


 彼女の笑い声が、彼女が色の変わった両目で俺を見た瞬間が、鮮明に蘇ってくる。


「キミの顔には、心当たりがあると書いてあるが」


 グランの声で我に返った俺は、今の状況を思い出す。

 いったいどうすれば────

 そう思ったとき、俺のポケットが強い光を放ち出す。


「なんだ?」


 俺はポケットに手を突っ込んで、中に入っていた一枚のカードを取り出す。


「それは……」


「ギルドカード?」


 ギルドカードの【スキル】とかかれた欄が強く光っていた。


「アキヒト!」


 声の方を見ると、ディーナがこっちに呼びかけていた。


「それは、そこに書いてある『スキル』が使えるようになった証だよ!そこに書かれてる言葉を声に出せば、スキルとか魔法が使えるよ!」


 俺にそう教えてくれたディーナは、鎧を着た男達に取り押さえられていた。


「一か八かだ」


 ──これなら使えそうだ。


「使わせると思っているのかい?」


 俺が、ギルドカードから使えそうなスキルを見つけるのと、グランが、俺の首に当てた剣を引こうとするのは、ほぼ同時だった。

 俺がカードの言葉を口に出す方が早かった。


「フラァァァッシュッ!」


 そう叫んだ瞬間、俺の右手が強い光を放った。


「なにッ!?」


 グランの声を最後に、冒険者ギルドのある建物は、光に包まれた。

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