三話:ギルド
「ウルト様、失礼いたします」
そう言って男が訓練場に入ってくる。
「何のようですか?」
そして、訓練場の真ん中で一人黙々と剣を振る男がいた。
「『七聖人』様からのご命令です。今すぐ東にある『初心の森』へ向かってください」
「わかりました。ですが…東の森に何が?」
ウルトと呼ばれた男が入ってきた男に目を向ける。
「東の森にて『黒の魔法』の反応があったため、その調査へと」
「『黒の魔法』……魔女ですか?」
いきなり雰囲気が変わったウルトに男はたじろぎながら答える。
「お、恐らくそうかと思われます」
「それならば急ぎで向かいましょう。このグラン・ウルトが!」
そう言ってグラン・ウルトは入ってきた男を置き去りにして訓練場をあとにした。
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「ようこそ、冒険者ギルドへ!」
俺はディーナ達に連れられて、『冒険者ギルド』と呼ばれる場所へと来ていた。
「なあディーナ、ここで何をするんだ?」
「あぁ……まずはアキヒトを冒険者として登録しなくちゃならないんだ。だからここで申請をしにね」
なるほど、冒険者になるにはまず登録をしなくちゃいけないのか。
「まあ申請つっても、説明聞いて魔力の登録するだけだけどな」
「魔力?」
なに?こっちでは魔法があるのか!クララにもっと詳しく聞かなくては!
「なあクララ、魔力の登録ってどうするんだ?」
クララは首を傾げながら「どうって……こうパッとしてピカーっとだな──」と説明してくれたが、全然わからなかった。
「もしかして、魔力のことも知らねえのか?」
そう言って今度はスミスが俺に説明を始めた。
「人はそれぞれ自分だけの波長を持った魔力が体に流れてんだ。そんでその魔力には波長とは別に四種類の色があってざっくり言うと、赤色が『火』、青色が『水』、黄色が『土』、緑色が『風』って感じになるんだ」
「へぇー」
「ごく稀に二種類の色を持ってる奴がいて、色を合わせて違う色にして魔法を使ったりもする」
「なあスミスの魔力は何色なんだ?」
「オレか?オレは青色だぜ、だから『治療者』──つまり『ヒーラー』をしてるんだ」
「色で職業も決まってくるのか?」
「嗚呼、大体な。ディーナは黄色だから守りの『騎士』で、クララは緑色だから速さをいかして『盗賊』をやってんだよ」
「なるほどなー」
わかったような、わからないような。
「次の方どうぞ──」
「アキヒト、君の番だよ」
ディーナが俺の番が来たのを教えてくれた。
「スミス、説明ありがとう」
「礼はいらねぇよ。これから仲間なんだしよ」
スミスに礼を言ってから、ギルドのカウンターにいるお姉さんの所に向かう。
「はじめまして、新規の登録でよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「ではまず説明を─」
俺はカウンターのお姉さんに簡単な説明を受けた後、魔力の登録に取り掛かる。
「ここのクリスタルに血を一滴落としてください。そうすればこのギルドカードに貴方の情報が記録されます」
「わかりました」
俺は少し痛いのを我慢して、指に針を刺した。
血が出てきたのを確認して、クリスタルに血を一滴落とした。
すると、クリスタルが淡く輝きだした。
「おおー」
俺は思わず感嘆の声をあげた。
クリスタルの下にセットされたカードに文字が浮かび上がってきた。
─────あれ?
浮かび上がってきた文字は見覚えのあるものだった。
───てゆうか日本語だった。
何で日本語なんだ?
「はい、出来ましたね。では確認いたします。───へ!?」
俺が頭を悩ませていると、カウンターのお姉さんが素っ頓狂な声をあげた。
「サオトメ・アキヒトさん──」
「はい、登録出来ましたか?」
「─ま、魔色が……私も見るのは初めてなんですが……」
「何です?」
魔力の色のこと『魔色』って言うんだ。
「……貴方の魔色は、し、白色です!」
白?そんな色さっき説明されてないぞ。
不思議に思ってスミスの方を見ようと振り返ると。
他の冒険者達がみんな驚いた顔をしていた。
「今……魔色が白っつったか?」
「まさかあの『英雄』と同じ色!?」
え?なに?なにごと?
「すごいよアキヒト!あの『英雄』と同じ色だってさ!」
ディーナが大はしゃぎで、俺の背中を何度も叩いてきた。
なんだかよくわからないが、なんかすごいらしい。