四話:廃れた教会
宿屋で簡単な装備を揃え、初のパーティーでの依頼に向かう。
リーダーは職業が『騎士』で守りが担当のディーナ・シー
回復が担当の『治療者』スミス・ガンコナー
戦闘や偵察など多彩な『盗賊』クララ・ヘイスティングス
そして俺、早乙女秋人である。
村の舗装がされていない道を歩きながら、俺達はちょっとした会話を行う。
「え!アキヒト『詠唱者』をやるの!」
ディーナは少し驚きながら俺に聞き返してくる。
「あぁ、そうだよ。ギルドで鎧を着たボボって人に向いてるんじゃないかって言われてな」
「え、ボボさんに!──あの人帰ってたんだ……」
ディーナが言うにはボボはよく遠出のクエストを受け、ギルドにいる方が珍しいらしい。
「まぁ、ボボが言うなら一回やってみたらどうだ。うちのパーティーは火力が足りないしな」
スミスがそう言い、ディーナは考え込む。
「『詠唱者』って、アキヒト魔法使えるのか?」
クララはそう言うとギルドカードを見はじめる。
「──それ俺のギルドカードじゃネェか!?──返せ!」
俺はあわてて取り返そうとするが、軽くかわされる。
「固いこと言うなよ──ん?『ライトニング』ってなんだ?他にも知らないのばっかだし」
「今クララに向けて使ってやろうか?」
「それは遠慮しとく~」
クララは俺のギルドカードを放って、俺の方に飛ばした。
「投げるなよ」
クララは「ニャハハ」と笑い、話を聞いていない。
「アキヒトの魔色は『白』だからね──ボク達が知らない魔法があっても不思議じゃないよ」
『魔色』とはそのままの意味で、人が持つ『魔力』の色らしい。
それによりその人が使える魔法も変わってくるそうだ。
「まぁ、とりあえずはアキヒトが実戦でどれだけ魔法が使えるかによるから、その後で『詠唱者』がやっていけそうか決めよう」
ディーナはそう言い、話を切り上げた。
そうして歩いて少しすると、ポツンと寂しげに建つ建物が視界に入る。
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それは村の外れに建っていた。
全体が石造りで所々にヒビが入っており、さらには植物の蔦が絡まっていた。
「これは酷いな」
スミスが建物を見上げながら、そう呟いた。
「これの修復って何日かかんだよ──あ!十字架が折れてる!」
クララが指差した先に、『T』の形をした石の飾りがあった。
「これは職人とかに任せるレベルだろ」
てゆうか、こっちの教会も十字架なんだな。キリスト教なのだろうか?
俺達が外で騒いでいると、教会の扉か開いた。
「あの……どちら様ですか?」
こちらを窺うように顔を覗かせたのは、黒い服にフードのようなものを頭に被り、まさに頭の中に思い浮かべる『修道女』姿の少女だった。
少し覗く髪は水色で、髪と同じ色の瞳でこちらを見ている。
「お騒がせしました、ギルドから依頼を受けて来たものです。責任者の方は居られますか?」
ディーナがそう問い返すと少女は不審そうな顔のまま答える。
「私が、この教会の責任者です」
「──え!?こんな子どもが責任者?」
スミスがそう言うと、少女は扉の影から出てきて、俺達の前まで出てくる。
「そうですよ。私がこの教会を一人で管理しています───ですが、一人では教会の修繕がなかなか進まないのでギルドに依頼をしたんですよ」
少女は俺達に向き直り──
「それでは、これからお手伝いをお願いしますね。私のことは気兼ねなく『シスター』と呼んでください」
そう告げたのだった。




