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今日もコーヒーは苦かった  作者: さかしん


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部活のかわいい後輩

鬱陶しい、イライラする、ぶん殴りたい!


真壁のネチョっとしたしゃべり方にいつもの反応をしてしまい自己嫌悪になる俺。


理想の自分は、

おおらかで人のことは気にせず、何かに没頭していて、人気があり、周りには常に人がいて何かと頼りになる存在。

でも現実は違う。

人のしゃべり方ごときに心を揺さぶられ、イライラして、出来もしないのに

「ぶん殴りたい」

などと心でつぶやく。

友達もほとんど居ない。

ダサい・・・ダサすぎる。


部活も理想はサッカー部キャプテン。

だが現実は、ユーティリティー部とかいうよくわからん部活に入っている。

部員も全員でたった5名。

一応3年は俺しかいないので名ばかりの部長になっている。

入った経緯も、入学時に3年生に声を掛けられ体験入部をし、そのままただ断るのも面倒だったので入部という形になっている。

先輩は1年の時にこのユーティリティー部を立ち上げ、2年間1人で活動していたらしい。

俺は未だに体験入部のつもりなのだが、部長となってしまった。


活動方針は、

色々なことに触れて知見を広めよう

的な感じだったと思う。

実際には何をしてるのかといえば、

校舎の傷んだ部分にペンキを塗ったり、先生方の雑用が主。

他には、木の枝を拾ってきてアート的なものを作ったりしている。

テーマは毎月俺が決めるのだが、そろそろネタ切れで来月は何をするかと常に頭の片隅にある。


こんな、もの好きしか寄り付かないようなユーティリティー部に3年は俺1人、2年、1年は2人ずつ合計5人の部員がいる。



体育倉庫の奥には俺が1年の時に先輩と作った部室がある。

部室といってもパテーションを並べた空間に長テーブルを置いただけの部屋だ。

昼休みそこで弁当を食べるのが習慣となっている。


パテーションの隙間から人が見えた。

2年の佐々木だろう。

この佐々木はなぜか俺のことをこの世で唯一慕ってくれている人物だ。

ことある毎に

「先輩はどうお考えですか?」

と俺の意見を求める。


「おつかれ~っす」

俺はそう言いながら部室に入って奥の席に着いた。

佐々木は珍しく神妙な面持ちで俺の目をまっすぐ見ながら、

「先輩!ちょっとご相談が」

と切り出した。


「どうしたの?そんな顔して」

と少しでもこの場の空気を変えるために1トーン高めに発した声も

佐々木の沈黙によりリセットされた。


「先輩!気が付いたら先輩もう来年卒業じゃないですか!」

佐々木が、急に上げすぎた音量で話はじめたので少しドキッとした。

「うん、まぁそうだけど。それがどうしたの?」

佐々木は少し睨むような目つきで

「どうしたの?じゃないです!ぼく、先輩と離れるの嫌です!」

と少し涙目になりながら言い、すぐに黙りこくった。


相談ってそれ?と思いながらも

「まぁ、ありがとう」

俺はほんの少しもらい泣きしそうだったがバレないように低い声でつぶやいた。

こんなに俺を慕ってくれる奴は今までいなかったし、これからもコイツほど慕ってくれる奴は現れないと思った。


佐々木は少し考えたのち、何かを閃いたような表情をこちらに向け、

「先輩、来月のテーマぼくに決めさせてください!」

と声を張った。

その声は体育倉庫中に響いた。




月が替わり、部員全員が部室に集まったところで

「では今月のテーマ発表をします、が今月はどうしても佐々木が決めたいということで佐々木からテーマを発表します。」

俺は事前にテーマを聞いていなかったので内心ドキドキしていた。

少なからず俺の卒業と関係するテーマだろうとは思ったが、今まで避けてきた体力的、精神的にキツいテーマだけは勘弁してくれと願った。

「え~、では今回はぼくのほうからテーマを発表します、今月のテーマは、ユーティリティー部の思い出を作ろう!です。」

言い終えた佐々木は少しドヤ顔で斜め上をみて胸を張っていた。

数秒間の間があったのち、

「テーマ選定の理由は、先輩が卒業しても、このユーティリティー部を忘れないような衝撃体験をしたいと思いこのようなテーマにしました。」

要は自分を忘れてほしくないという事らしい。

まぁ今まで無難なテーマでやってきたから1回くらいこんなテーマがあってもいいか、と内心少しワクワクした。


「で、具体的にはどんな事を想定してるの?」

という俺の質問に佐々木は

ニヤリとした。


佐々木は

「見せたいものがあるのでついてきてください」

といい、部室から出た。

俺と他の部員も佐々木に続いた。


佐々木は廃校さながらの旧校舎の前で止まった。

今は滅多に人が出入りしないところなので草が伸び、木造の校舎には何とも言えない不気味さがあった。

「先輩、この校舎って入ったことあります?」

「うん、1度だけ部長とキャンプする為に使ったよ」

「今はそういう用途の時だけ生徒に開放してるらしいんですよね、でも実際には先輩がキャンプしたとき以来、後にも先にも何年も誰も使ってないんですよ。」

なんでお前がそんなこと知ってるんだ?という言葉が喉まで出かかったところで佐々木が話をつづけた。

「正確にはぼく以外か。」

その場にいる佐々木以外が

「ん?」

という反応を見せた。


佐々木いわく、

この校舎が現役で使われていた150年前の事を調べたら、ここは元々小学校として使われていたらしい。

そのときの生徒が25人とその担任があるとき不可思議な神隠しにあったとのこと。

その子どもたちの魂を弔う意味合いで今も壊さず残しているとのこと。

それを知った佐々木は真相を調べるべく監視カメラを設置して、その映像をみていたらある発見をしたという。


「これ見てください。」

佐々木はカバンから取り出したタブレットに何か映した。

俺たちは佐々木のタブレットを覗き込んだ。

旧校舎のどこかの部屋みたいだった。

教室の真ん中に小さいが白くて強い光が空中に留まっている。

「なにこれ」

うちの部の紅一点、1年の三宅が不安とも興奮ともとれるトーンで言った。


佐々木が画面をスライドさせると、別の日の映像に切り替わった。

そこにも先ほどと同様教室の真ん中には強い光がとどまっていた。

いや、正確には先ほどより少し大きくさらに強い光でビー玉ほどの大きさだ。


佐々木はさらにタブレットの画面をスライドし、また別の日の映像を流した。

その光の大きさは握りこぶしくらいになっていた。


「中秋の名月」

佐々木が呟くように言った。

「ん?なんだよ佐々木、はっきり言えよ」

2年の井上が恐怖心を苛立ちに変えるようにいった。


「中秋の名月を見ようってことで150年前にみんなでお泊り会をしたんだよ。その教室にいた25人と担任1人が忽然と姿を消した。」


「今週末じゃないですか?今年の中秋の名月って。今朝テレビでみました。」

1年の山中が自分もこの会話に参加できるのが嬉しそうに言った。

「先輩、もうお分かりですよね。ユーティリティー部週末キャンプ開催します!」

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