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【2章完結】お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ
2章

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エピローグ おかえり

 シグラズル領、その公爵家の別邸に着いた途端、ヴィクトルは気を失った。


 エインがヴィクトルを、ローグルが娘を、それぞれ抱えた。


 騒ぎを聞きつけたハール・シグラズル前公爵は、状況を察すると使用人に指示を出す。

 その見た目は若く青い髪を持ち、ローグルとは、まるで兄弟のようだった。


 シャツの袖ををまくり、孫娘をローグルから奪い取ると、優しい眼差しでハールは声をかけた。


「おかえり」


 そして、視線は彼女の状態観察に固定したまま、ローグルを見ずに発する。


「……ローグル卿、貴殿は何かと多忙だろう?

 こちらは任せて、王都へ帰るといい」


「……」


「貴殿に割く時間はないのだよ。

 こちらはエイン君が居れば、十分事足りる。用があれば呼ぶ……それとも、二度と会わせないようにも出来るが?」


 ローグルへと冷ややかな目を向けて、ハールはそう言うと、邸の中へと入っていく。


「わー、聞く耳なし……怖い。

 あ、僕こっちで再就職しときますね。ご心配なく。じゃ!」


 ヴィクトルを担ぎなおし、エインも屋敷へと入っていった。


 一人残されたローグルは、しばらく邸を見つめた。


 ーー強き力は、弱きものにとって時として毒だ、か。


 かつて、そういったのは父になったばかりのハール・シグラズル。

 やっと一仕事片付け、娘と向き合える。そう考えていた。

 愛しい娘を想う、上位種としてではなく、今はただ一人のーー。


『理なんか捨てろ』


 かつて背を任せた相棒の言葉が、その胸に刺さる。

 静かに目を閉じて、転移魔法で消える。


「どうか、選択する猶予だけは、あの子に……」


 その切実な声は、暁の空に溶けていった。

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