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【2章完結】お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ
2章

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第29話 信じて祈れ

「分かってるかい?命を粗末にーー」


「もう何度も聞いた!」


 離島の上空、夜空に溶け込み落下する二つの影。


 エインが言葉を言い終わらぬうちに、ヴィクトルは気持ちを急かし遮った。


ーーダメだ!ティール!


 地面の裂け目、ティールが開けた穴に向かって、ヴィクトルは迷わず落ちる。その銀髪は月明かりを受け、さながら流れ星のよう。


 ヴィクトルの目、ティールと同じアメジストの左目が煌めき発光する。

 深く結ばれた繋がりから、ティールの思考がヴィクトルには読めた。


ーー聞くな!行くな!そこにいろ!


 もう誰にも渡さない。その手を離さない。一人で行かせない。

 俺が行くまで、そこにいろ。手の届かないところへ独りで行くな。


ーー俺が守る。ずっと側にいる……もう、傷つくな、壊れるな!


 ティールの中に何かいる。

 本能とは別ーー彼女を内から壊そうとしている異質な何か。


 ふざけるな。彼女は俺の番だ。

 誰だろうと、侵すことは、穢すことは、許さない。


 番でも眷属でも俺はどうなっても……壊れていい。

 君が救ってくれた命だ。君に捧げよう。

 それでも俺は、何度でもティールを選ぶ。

 君が必要としてくれるなら。何度でも。

 どうしようもなく、愛してる!


 大切なのは君だけだ。

 たとえ君でも、君を傷つけることは許さない。


 やっと逢えたんだ。繋がったんだ。

 話したいことが、伝えたいことがたくさんあるんだ!


ーーだから、逝くな!


 ティールの中にいる異質な何かが、強制的に命を消費して、魔力暴走を引き起こそうとしている。

 普通に助けては、おそらく間に合わない。


 そして彼女自身も、分かった上で生きることを選ぶのを辞めた。

 彼女の虚ろな目に、自分は映らない。

 血に汚れ、片腕を失い、纏う衣服はボロボロになっている。


 ヴィクトルは落下しながら、手にした長剣の切っ先を、視界に捉えたティールに向ける。


 番を救え、守れと眷属としての本能が叫んでいる。


ーー躊躇うな。迷うな。創造しろ。信じて祈れ。


 魔法はイメージがすべてだ。


 自分が間違えば、彼女を救えない。

 ティールを助けるのは、他でもない彼女の番である、俺でありたい。


 ティールが自分の左胸に手を置いた。


ーー逝くな。ティール!




「《リーサル》」


 ティールの滅びの詠唱と、ほぼ同時。

 ヴィクトルはティールの左胸を長剣で貫いた。

 皮膚を裂き、肉を断ち、骨を砕く感触が、両の手に伝わる。


 ティールは虚ろな目で笑っていた。あの日の自分のように。

 柄を握る手に、力を込めた。

 ギリッと歯噛みして、祈りに似た叫びで、ヴィクトルは詠唱する。


ーー彼女の心を、救え。


「《レザレクション》!!」

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