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【2章完結】お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ
2章

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第24話 銀の煌めき

《受け入れろ》


 沈む意識の中で、声がする。


《受け入れろ》


 自分の身体に、まとわりつくような異質な何か。


《受け入れろ》


ーー受け入れるだけで、いいのなら。


《受け入れろ》


 そうして、暗い方へと意識を傾けた。


 一人ぼっちでいいと思った。だって酷いことをしたから。

 けれど、他人から向けられる温度は熱く。

 言葉もなく向けられる視線は眩しい。


《受け入れろ》


 一人で過ごした時間は、何かがこぼれ、虚しさがただ降り積もった。

 食事は煩わしく、睡眠は苦痛だった。


《受け入れろ》


ーー選ぶわけではないのなら。


《受け入れろ》


 暗いそこへと、ティールはそっと手を伸ばした。


「ーー行くな!」


 けれど、その手を掴んだのは銀の煌めき。


「行くなっ!」


 力強い声と、冷たくも温かいその煌めきが、闇からティールを守るように優しく包む。


「聞くな!行くな!そこにいろ!」


《受け入れろ》


ーーなに?


 眩しくて、痛くて、涙が出る。

 これはなんだろう。

 無意識の戸惑いと混乱に、ティールはその煌めきを拒むように、そっと押した。


ーーだって、暗い方が心地いい。


「渡さない。離さない。行かせない」


 声はそれを、激しく拒絶した。


《受け入れろ》


 ざわりと、煌めきが震えた。

 ひときわ大きく輝いたそれは、一人の男の姿になる。


「彼女は俺の番だ。誰にも、侵すことは許さない」


 銀のさらりと流れた髪、三角の耳が二つひょこんと立っている。

 ティールを見つめる瞳は、右に金、左にアメジストの輝きを宿していた。

 身にまとう色は、所々紫で装飾が施された、夜を思わせるような濃紺の上下。

 そこから覗くシャツの薄桃色。襟と袖に金と水色の刺繍が施されていた。


 吹き荒れる雪が瞬く間に、闇を白く埋め尽くす。何かの声は、白に掻き消された。


「守る。側にいる……もう、傷つくな、壊れるな」


 ぎゅうと抱き締めたその腕は、ティールが逃げることを許さない。


「愛してるんだ、ティール」


 切なさを、熱を、はらんだ声がティールに降り注ぐ。

 けれどそれは、ティールには眩しくて、痛いもの。


「壊れていい、それでも俺は、ティールを選ぶ。どうしようもなく、愛してる!」


 自分に都合の良い、夢だろうか……?

 それとも狂ってしまった自分の妄想か。


「ヴィク、トル……」


 抱き返すことは怖くて、出来ない。

 代わりに、声に出して名前を呼んだ。


 ずっと呼びたかった、その名前をーー。

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