第23話 異質な何か
「……丁重に……。彼女…貴重な……、継いで……」
「か……ました」
遠く、誰かの声が、聞こえる。
「即物的な物は好まな……、仕方、ありまーー貴女が、選んだので……」
さらりと頭を撫でる感触、続いて温かい何かが触れ、甘ったるい液体が、喉へと流し込まれた。
ティールが目を覚ますと、白い天井が見えた。目隠しは外れていた。
どのくらい寝ていたのか、分からない。
何をしていたのかも、分からない。
身体は、動かなかった。
身動ぎをすれば、何かで身体を拘束されていた。
右手がなぜか軽く感じたけれど、身体を起こすことが出来ず、視界に入らない。
《ーーろ》
「……?」
《受け入れろ》
何かの声が、頭に響く。
何を受け入れるのか、ティールには分からない。
ふわふわとした夢心地のような思考の中、考えた。
《受け入れろ》
ーーそれは、自分を取り囲む、これを?
目を閉じると、自分の中に巣くった、この異質な何かを感じる。自分の魔力とは別の何か。
そのティール側、男たちの会話が聞こえてきた。
そちらにティールが意識を向ければ、頭の中の声は聞こえなくなった。
「検体の移送手続きは……?」
「数日中には。港の方が騒がしく、冒険者ギルドが邪魔でして……」
「あぁ、副ギルド長か。アレはこちら側に染まらなかったな、面倒な」
唸る男の一人、書類を持った男がティールに気づいた。その声はやけに平淡だった。
「これ、まだ自我が残ってます。どうしますか?」
「この島の設備じゃ、これ以上は無理だ。
薬を飲ませて、丁重に運べと言うのが、上のお達しだ。何しろ貴重な二体目だからな」
ティールの近くに寄ってきた白衣を着た男が、そう冷たく笑みを浮かべてティールを見た。
「ほら、飲んで眠れ」
そして、甘ったるい液体が流し込まれた。
まとわりつくようなそれに被さって、頭の中で声が響いた。
《受け入れろ》




