第22話 朦朧とする意識
ーー今、なんぼん、め……?
地面に転がる小瓶を、ティールはぼんやりと眺めた。
シャンパンやラムを飲んだ時に感じた、身の内が暴れるような感覚。
立て続けに飲まされた小瓶に喰われてしまったように、今はスッと冷え込んでいた。
それでも、ティールは意識を保っていた。
「オネーサマ。とっても強情ネ」
ティールの顎を掴み、小瓶を口に当て飲ませる義妹は、呂律が回っていなかった。
ティール自身も、拒むという力が残っていなかった。
流れ落ちるそれを、ただ受け入れる。
口から滴るのは、涎か小瓶の中身か。
ティールにはもう、分からなかった。
カツン、と。
小瓶がぶつかる音が、ただ静かに洞窟内に響き渡った。
「おー。すげー使ったな」
コツコツと洞窟内に音が響き、小瓶が蹴られ地面を転がっていく。
男はティールの顎を掴んで、その目を覗いた。
「これだけ飲んで、まだ壊れてないのか。もう一本いっとけ」
男は転がったポーチから小瓶を取り出すと、ティールに飲ませた。
「こっちはもうダメかもな。まぁ製造作業なら、まだ使えるか」
ティールの隣、目を虚ろに倒れた義妹はピクリとも動かない。
ーー製、造?
「……マジでタフだな。こりゃもう堕とすより、別の使い道のが良さそうだ」
揺れたティールの瞳、その反応を見逃さず男は言った。
「本国に寄越すならーーその腕輪、不要だな」
ーーくに?
そろそろと揺れる視界、けれどティールは目の前の男の姿を捉えることが出来ない。
男は腰の仕込みナイフを取り出すと、躊躇いなく振り落とした。
ティールはなにも感じることなく、プツリと意識が途切れた。
ピチョン、ピチョン。
雫が、規則的に落ちる音が響いていた。
辺りは真っ暗で何も見えないーー否、目隠しをされている。
身動ぎをすれば、何かで固定されているらしく、ギシッと嫌な音がした。
左手の感覚はあるのに、右ーー腕輪のあった方だけが、ない。
「……」
ーーここ、は。
ぼおっとする頭で考える。けれどよく分からない。
はくっと動かした口は、カラカラに渇いていて音を紡がなかった。
「もう目覚めたのか」
男の声がする。これは、誰だ。
「まだ寝ていろ」
口に流し込まれた液体に、喉が鳴った。
雫の音だけを残して、ティールの意識は沈んだ。




