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【1章完結】お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ
2章

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第21話 壊れる寸前

 船が離島に到着するのに、そう時間はかからなかった。


「ほら、着いたぞー」


 男の声かけに、子どもたちがわらわらと出てきて、島へと降りていく。


ーーあんなに乗っていたの?


 ティールが魚をあげた子どもたち以外にも、小さい子が数人いた。

 そして皆、一様に無表情で無言で島の奥へと歩いていく。異常な光景だった。


「……よっ、と」


 ティールは男の肩に、荷物のように担がれた。


ーー腕輪を外すなりしてくれたら、助かるのだけど。


 動けないので、されるがままだった。

 大人が二人余裕で通れるくらいの穴だろうか、その入り口から中へと入る。

 港で子どもたちに聞いた通り、中は洞窟になっているようだ。


ーーアジトと同じで、中は整備されてる。


 逃げ出す時に道が分からない、では困ると思いティールは頭の中で見たままを地図にする。


「腕輪の探知機能で、迎えが来るとか思うなよー。

ここは強力な探知系不可領域になってるからな」


 担がれたことで頭に血が上り、クラクラとし始めた頃、部屋とも呼べないような開けた場所に着く。

 そこで男はティールを下ろし、そう口にした。


ーーお父様なら、来そうだけど。


 あの日を思い出して、ティールはそう思う。

 地下ではないがここは洞窟、魔力を暴走させれば父が飛んできそうな気がした。


 もっとも、そんな情けないことはしたくない。

 あの日の答えを先延ばしにしてから、顔を合わせづらいのだ。


ーー暴発くらいなら、大丈夫かしら?


 ドカンと一発だけなら、良いのではないか、そんなことをティールは考える。


「まぁ犯罪者を迎えに来るなんて、ギルドには無理だけどな」


 ティールの腕を持ち上げ、男は手枷を嵌めた。もう片腕も嵌める。

 手を頭よりも高い位置で固定され、座った状態になる。

 見渡した範囲、他にも手枷の跡があり何人かを繋ぎ止めておく場所のようだ。


「ねぇ。それはもういい?」


「よくねぇよ。お前さっき、俺が声かけなかったら首絞めてたろ?」


 義妹が男の後ろから声をかけた。途中から後をついてきていたのだ。


「まぁ、私。お義姉様を殺すつもりなんてないわよ」


「姉かよ。は、似ねてぇ姉妹だな。それより子どもは?」


「ご褒美をあげて、いつものように寝ているわ」


「了解。俺は離れるけど……殺すなよ。使い道はいろいろあるんだ」


ーー使い道?


「いつものようにすれば良いのでしょ?」


 義妹はそういって小瓶を出した。赤黒い見た目からして一般的なポーションではない。


「ああ。そっちなら幾らでも壊していい」


 怪訝に思うティールを他所に、二人の会話が続いた。

 男は最後にそう言うと、洞窟の奥へと消えていった。


「聞きました?お義姉様。シャンパンはお強かったようですけど、これはどうかしら?」


 キュポッといい音がして小瓶の詮が開く。

 義妹はティールの口に当てると上を向かせ、強引に飲ませてきた。


 それはつい昨日飲んだラムと同じでーー。


「っげほ!ごほっ……」


「まぁ汚い。ちゃんと飲んでくださいな」


 飲んでたまるかと、ティールが吐き出せば、義妹は優しくそれを嗜めた。


 ティールは内に燻った熱を感じる。魔力がざわついていた。


 義妹は腰につけていたウエストポーチを外し、床に置いた。その中にはたくさんの小瓶。


「うーん。……そうね、我慢比べいたしましょうか、お義姉様?」


 そのうちの一つを開け、今度は義妹自ら自分の口に含むと、ティールに口移しで無理矢理流し込まれた。

 ビクリと身体が揺れ、ティールの喉が動く。


「…っ」


「……ふう。ちゃんと飲めまして?

もう、私もちょっと飲んでしまうのよ。早くお義姉様自身から飲んでくださいな」


 ティールは義妹を睨み返す、義妹はわざとらしく哀れむように小首を傾げてみせた。

 そういって次の小瓶を手に取った。


「シャンパンよりもキツイ、原液ですのよ?お味はいかが?」


ーーあの時の、シャンパンは貴女が……。


 ティールは義妹を睨みつけた。けれどもそれは、ただ義妹を悦ばせるだけだった。二本目が注がれる。


「……私、放逐されて拾って貰いましたの。

シャンパンで、縁があったので助かったワ。

貴族で裕福にとはいかないけれど、これはこれで愉しいのヨ」


 そう言って、空の瓶が転がっては別の小瓶とぶつかった。


「やはりお強いのね。普通は一本目で飲んだ人、半分は堕ちてしまうのヨ。さぁ、お義姉様」


ーー壊れてしまえ。


 身の内に巣くった熱が、得たいの知れない何かに覆い被され侵食していくのをティールは感じた。



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