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お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ


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26.5話 幕間 ある女の叫び 義母視点

ーーなぜ、なぜ、なぜ!?

おかしい、おかしい。


 やっと目障りなあの子を、追い出せたと思ったのに、社交界では"水晶姫が領地で療養している"と噂が流れているではないか。


 お茶会の帰り、ガシャンと自室のテーブルにあった花瓶を払いのけた。苛立ちが収まらない。

 メイド達は悲鳴を上げて部屋を飛び出していった。


ーーだって、そんなはずはない、おかしいではないの!


 夜会の後、金で雇ったごろつきが、あの子を襲ったはずだ。馬車に乗ったのを確かに見届けた!


 獣だって目撃される森へ、女に飢えた男共と一緒に連れていかれたはずだ!

 それがなぜ領地に、なんて話になるの!?


 探りを入れようにも、後妻として入った私に対して、領地にいる前公爵は冷たく、使用人でさえ良い顔をしていない。


 侯爵夫人に無礼な!と思ったけれど、公爵たる夫はそれを言及しなかった。

 領地に行くことはないから別にいいかと、そのままにしていたけれど、こんなことになるなんて。


 領地に引きこもってくれていれば、と思うものの不安は消えない。


 なぜなら、第二王子の婚約者に可愛い娘を据えることに成功したが、その第二王子が心神喪失状態だと言うではないか。


 第二王子だけではなく、若年層があの夜会以降、心神喪失状態の者が相次ぎ療養しているらしい。


 若年層に流行る新たな病気ではないかと噂されている。


『水晶姫も、ご療養に入られたと伺いましたけれど、今はお加減も安定なさって?』


 夫人達から、そう話題を振られたのだ。


ーーどうして、思いどおりにならないの!


 社交界で水晶姫と呼ばれるあの子。あんな子にちやほやする貴族たちが、信じられない。


 不気味ではないか。

 笑わない、泣かない、怒らない、声をあげない。

 作り物のような表情を貼りつけて、いつもいつも冷えた目でこちらを見てくるのだ。


 後妻として、善き義母になろうとしたが、あの幼く不気味な子どもを前にすると、生理的に受け付けなかった。

 公爵すらも我が子に無関心だったため、無理に接する必要はないとさえ思った。


 娘と息子が産まれてからは、さらに顕著になった。

 気味が悪いとさえ思うほどに、あの子を邪険にするようになった。


 あの子さえ居なくなれば、公爵夫人としての地位、第二王子妃の母と言う立場になれる。

 貴族派の義父も喜び、王族派の公爵の地位が脅かせると思ったのに。


 散らばった花瓶の破片と花を忌々しげに見つめ、女は憎悪に満ちた顔をしていた。

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