表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1章完結】お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/78

50話 犬なんか

リークリ登場回、心理操作重めなので作品はR15にさせていただきました。

「さ、水晶姫。……こちらへ。階段をおりると闇闘技場の入り口です」


 リークリに案内されて、手を差し出せば指を絡めて握られる。

 伝わる熱の多さに、ティールはドキドキしながら下った階段の先。


 そこは広い空間になっていた。

 魔道具の照明器具をはじめ、床や壁も補強が施されていて、とても地下には見えない。


「王都の近くに、こんなところがあったなんて」


 明るい屋内は昼のような明るさである。

 すれ違う人たちも身なりがしっかりしていた。


「色々な偶然が重なったものです。

とはいえ規模が規模なので、あの時のように手紙一つでは終わらせることが出来ず、すみません」 


「……あ、謝らないでくださいませ」


 私が、無理を言ったのだから。


 リークリは、私の願いを聞くためにここの封鎖を決めたの。


ーー大切なお仕事だったのに。


「……?」


 何か違和感を感じた気がしたけれど。それが何かティールには分からなかった。


「水晶姫。もう少し行ったところに、私の仕事部屋があります。

隣の寝室にふかふかのベッドもあるので、ゆっくり休めますよ」


「……!」


「ずっと粗雑な環境での生活を強いてしまって、すみません。

ここは温かい布団と食事でゆっくり過ごせますから、安心してくださいね」


 リークリの笑顔を見ていると、ティールは安心する。


『ーーティー様……』


 誰かの笑顔がふと思考をかすめたが、違和感はすぐに別の不安に塗りつぶされる。


ーーふかふかのベッド。


「……リークリ様。

部屋でもその……一緒に、寝てくれますか?」


 立ち止まってしまった足、ティールが恐る恐るお願いをしてみると。


「はい。水晶姫がお望みでしたら。

いつものように貴女が起きるまで、そばにいますよ」


 当然と言うように、迷いなくいうリークリに、ティールの不安すっと消え、胸が満たされる。


 馬車の道中、リークリがずっとティールを膝に乗せて抱きしめてくれた。

 そしたら、とてもよく眠れたのだ。


「ありがとうございます」


ーー暗くて寂しいのは、嫌だ。


 花がほころぶように笑うティールの額、リークリは、そっとキスをして歩き出す。


「貴女が可愛くて困ります。

……早く閉鎖して、ニ人で別の国に一緒に行きましょう」


ーーニ人で。


 そのときティールの視界に、一瞬黒がよぎる。


『ーー行かないで』


「っ!?」


 耳元で悲痛な声がした気がして、ティールが驚いて見れば、黒いシルクハットの通行人が向こうの方へと歩いていったーー知らない人だ。


 そもそもティールに知り合いなど、リークリ以外にいるわけがなかった。


ーー黒。くろ、クロ……なんだっけ?


 大切なことを忘れているのだろうか?

 そう考えてみたけど、ティールは分からない。


「リークリ様っ!?」


 リークリは軽く笑みを浮かべると突然、ティールを軽々と抱き上げて歩き出す。


「案内は、また明日も出来ます。今日は移動もあったので、先ずは休んでください。

……落とすといけないので、しっかり掴まってくださいね」


 歩きながら、リークリがやや早口に話しかける。


「犬がお好きですか?……この件が片付いたら、飼っても良いのですが。

妬けますね。私は水晶姫がいてくれればそれで十分です。

でも、貴女は私だけを見てくれないのですね?」


 リークリの低く甘い声に寂しさが滲む、ティールは思わず息を詰め、慌てて否定する。


 黒い人に自分が気を取られてしまったせいで、リークリを悲しませてしまった……。

 胸の奥がざわつく。罪悪感と焦りがひどくティールの心を乱した。


「犬なんか好きじゃないわ。私もリークリ様だけがいてくれたら、十分でございます」


ーー恥ずかしい。


 自分の言葉に赤面して、リークリの胸に顔を埋めた。彼のジャスミンの花の香りが鼻をくすぐる。


ーーあれ……甘い、ラベンダーじゃなかったかしら?


 すごく身近に感じた香りだったはず。でも、匂いの違和感は分からない。

 耳に聞こえる規則的な彼の鼓動。抱かれている温かさが心地よくて、ティールは息を吐いて、ホッと安堵する。


 この腕が自分を振り払ったことはなく、求めれば返してくれる温度がとても安心感があったから。


「犬なんか、か」


「リークリ様?どうかしました?」


 ボソリと低く呟いたリークリに、ティールが気付いて訊ねた。


「いえ。水晶姫が私を選んでくださってとても嬉しいのです」


 そう言ってリークリは、ティールの額にキスをして再び歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ