表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様、私に拾わせていただけませんか  作者: 松平 ちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/45

24話 薬物調査

ギルド長から手渡された資料を、ヴィクトルはパラパラとめくる。

国境沿い近隣の村や町の情報が書いてあった。


騒ぎを起こして捕まえた者。

行方不明者。

救護者として運ばれたもの。

死者。

それぞれの数字が、村や町ごとに2ヶ月分。よく集めたなと関心さえする量だ。


「……コラ、髪の毛ちゃんと拭け。副ギルド長直々の資料の原本だぞ、濡れるだろうが」


「……っ」


ギルド長が乱暴にヴィクトルの髪を拭く。

あらかた拭いて満足したのか、そのままソファに腰かけた。


ぼさぼさになった髪を軽く、前が見やすいように整えて、ヴィクトルはギルド長に訊ねる。


「これは?」


「ここ最近、特に国境沿いに多いんだよ。……んで、調査することになった。最初は依頼を出して、冒険者を使ったんだが行方不明者が出てな。で、副ギルド長が出向いた。ほらアイツ、ずっと居なかったろ?今も現地だ」


アイツとは、副ギルド長のことだろう。

そう言えば見かけないなと、言われて気づいた。


「最近の調査で、ノルド王国側も関与してるのが確定してなー。別に、お前らは疑ってねぇ。むしろ、ほんとは巻き込みたくなかったってのが本音だな」


長くなるから座れと促され、ヴィクトルもソファに座る。


「が、今日のアレだろ?どういうこった?」


「知らない。こっちが聞きたい」


「んじゃ、言い方を変えるわ。嬢ちゃんも薬物を摂取した可能性がある。心当たりは?」


「無いに決まってるだろ!」


カッとなり立ち上がってヴィクトルが言えば、ギルド長は静かに座れと促した。


ティールの食事は、ヴィクトル自身が用意している。薬物なんて、そんなものを口にするはずがない。


「ここに来る前の話だ。夜会に茶会、お前がいない間になら、ありえるだろ。かなり"残る"らしいぞ。今判明してる分だけでも酒に、菓子に盛られてる」


言われて思い当たった事が一つ。

魔力暴走を起こしたきっかけだ。彼女は何て言っていた?


「シャンパン。……シャンパンを少しと、言っていた。そのわりには合流した時に、匂いがキツイと思った」


「まぁ、異変にお前が気づいてないってことと嬢ちゃんの様子を見るに、慢性的にでも中毒を起こすほどでもなかったんだろ」


ヴィクトルは手で顔を覆い、項垂れた。

そのまま、とつとつと当時の話をギルド長にした。そう言えば詳細を誰かに話すのは、初めてだ。


おかしいとは思っていた。ティールは酒に強いはずなのに、と。

記憶が混濁していて、シャンパンではなく別の度数の高い酒と、間違えたんじゃないかと。


「……はぁ?オルドじゃ王宮までいってんのかよ。仕事しろよ。あの野郎」


ヴィクトルの話を最後まで聞き、だんだんと声が低くなっていくギルド長。

立ち上がると、棚からグラスとブランデーを取り出した。


「おい、ヴィクトル。氷出せ」


「はぁ?」


「良いから出せ!……あの野郎のことは毎度毎度、自然災害だと思ってたがっ!!」


勢いに負けてグラスに氷を出すと、グビグビとギルド長は飲み干し、勢いのままグラスをテーブルに置いた。かなり、思うところがあるらしい。


ーーそれ。銘柄的に度数かなり高い酒だろ。


ギルド長の突然の怒りに呆気に取られ、ヴィクトルは毒気を抜かれた気分になる。


ギルド長の中では、ローグル・ジグラズル公爵は自然災害らしい。そうか、自然災害。

圧倒的力と権力。何を考えてるか分からないあの冷徹な言動。なるほどと何処か納得してしまった。


「今回はマジで頭に来たぞっ!娘まで危険にさらして何やってんだ!それでも親かぁ!!!嫁が泣くとか思わないのか!!」


ギルド長の怒りの矛先は全て、ティールの父であり宰相のローグル公爵だった。

そこにヴィクトルを責める言葉は一切無い。


お前も飲め!と差し出されたグラス、受け取ろうと顔を上げれば、ギルド長はヴィクトルを見ていなかった。

水面に映る自分の顔は、今にも泣きそうだった。


「……度を越さなきゃ。今のところは大丈夫だ。話からすると、嬢ちゃんは初期の陶酔感辺りだろうよ」


ひとしきり叫んだ後、切り替えるように息を吐きギルド長は言った。だから、ティールは大丈夫だと。

ヴィクトルを、安心させるように。

その言葉に、静かに頷いた。


中度になると錯乱、薄弱、興奮、幻覚、幻聴等の精神異常、強い依存性も比例してみられるそうだ。

国境沿いの町や村で現在、中度中毒者の対応に手を焼いているらしい。


「重度は……、見ただろう。薬に対して異常に反応する中毒者だ。その後は……死に至る報告を受けてる。末期は今のとこ治療法がねぇ」


そして、薬物中毒と同時に行方不明者も増えてるとのことだ。


「お前に頼みたいのは、副ギルド長の補佐だ。被害は増える一方だからな。いつ村一つ消えてもおかしくねぇ。何とかしないとマズい」


副ギルド長は現在、町村への情報収集を終え、薬物の出所を探っているところだと言う。


そこへ加わり、まずは薬物の流通阻止、関係者の可能な限りの捕縛が依頼内容だと告げられた。


「……頼んだぞ」


ギルド長の視線に、ヴィクトルはまっすぐ返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ