淡々MEN
「コーヒーって苦いのに、みんな朝から飲むよな」
「苦いから目が覚めるんだろ」
「でも、砂糖とミルク入れたら結局甘いじゃん」
「それは……妥協だ」
「妥協かよ。人生もそうだな」
「急に哲学かよ」
二人はテーブルの上に並んだカップを見つめる。
「ブラック派の人って、なんであんなに頑ななんだろ」
「好みだろ」
「いや、苦味を尊ぶ意味ってあるのか?」
「知らん。ただ苦いのを飲みたいんだろ」
「でも、ミルク入れるのに砂糖入れない人はなんなの?」
「知らんて」
微かに笑いながら、二人はカップを口に運ぶ。味を確かめるというより、習慣として。
「苦っ。でも、どっちが正しいかわからんな」
「まあ、どっちでもいいんじゃね?」
「まあ、正義か悪、って話でもないしな」
「それはそうだ」
「……俺、砂糖入れよ」
「俺も」