表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
”運命の神”は、俺の敵。  作者: 青山 文
第二章 わたしはこれから生きていきます
7/124

7.いまのわたし、こどもだから。

すみません。今回短いです。




 「ヴィーいーちゃん。あーそーぼー」


 「はーあーい」


 中の人の精神年齢がもう、えっと……指折り数え……てゆか、両手両足が何本あっても全然足りないくらいにイってるのだけれど、今のわたしは数え5つの幼女な訳で。


 そうなれば、開拓村での”社交”なんてものは、必然的にガキ同士の”ご近所付き合い”って奴になる訳で。


 (しかし、いくら繰り返しても全然慣れないね。精神が肉体に引っ張られていくこの感覚だけは──)


 冷静になってツッコミを入れたくなる感情が底面にあるのも自覚しているのに、子供(ガキ)どもからのお遊びの誘いに嬉しくもワクワクしているのだから。


 でもまぁ、だけれど。


 結局今のわたしは、やっぱり見た目通りの”ガキんちょ”な訳で。


 だったら、もう楽しんだモン勝ちだよね。


 ……何に対して”勝って”いるのかは、全然知らんけど。



 ロッティことシャルロッテちゃん(5)とは、ほぼ毎日遊んでいたりする。


 周りのガキんちょどもは、揃いも揃ってほぼ頭の悪い乱暴なクソ野郎(サル)ばかりだから、どうしても女の子同士で固まってしまうのは、これはもう仕方の無い話。


 まぁ、そんな事情を除いても、どうやらわたしとロッティは相性が良い様で。


 ただ二人、手を繋いで村のデコボコ道をなんとなく歩いているだけで楽しかったり。


 「ばぁば、ちょっと()()()いってくるネー?」


 「はい、はい。お昼までには一旦帰ってきなさいな」


 元々物の無い片田舎のガキなんて、お外の遊びに持って行ける様なオモチャなぞ最初から所持している訳も無し。


 当然、手ぶら。


 準備なんてのは、寝癖でぴょこんと跳ねた髪をチョイと手で撫で付ける程度しかやることも無し。


 「あーい☆ いこっ」


 「うんっ」


 幼女同士仲良く手を繋ぎ、傍目からはいつ崩れてもおかしくない粗末な荒ら家から勢い良く飛び出す。


 たったこれだけのことなのに、お腹のそこからどうしよもなく笑いが込み上げてくるくらい、すごく楽しい。



 ────ああ。こういう時間がずっと続けば良いのにな。


 

 今までの”不幸体験”のせいで、ずっと妙な感傷が付いて回る。


 素直に”今”を楽しめないのって、本当に損だよな。



 『正直、こんな”くだらないこと”をしている暇があるのなら、少しでも自分を鍛えていかなきゃいけないはず、だろ? 死にたくないのならば』



 なんて。


 心の奥底で常に”わたし”の行動を皮肉る”俺”がいるのを自覚していたり。


 確かにそうだ。その通りだよ。


 俺の【呪歌】は、強化能力もそんじょそこいらの強化付与術(バフ)なんかよりも割合が遙かに高い”技術”だ。


 さらに【呪歌】の重ねれば重ねただけ効果が倍々へと膨れあがるエグい特性があるため、少しでも自身の身体を鍛えておかねば術の効果に肉体が耐えきれず、本来の意味で自滅してしまうだろう。


 それに……


 魔力の成長なんかは、鍛錬を開始する年齢が早ければ早いほど伸びやすいとも聞くし。


 そう考えると、確かにガキんちょ同士で遊んでいる場合ではないのだろう。


 実際、”(ヨハネス)”の時なんかは、ミーナ(ヴィルヘルミナ)達の誘いを度々無視して、よく一人で鍛錬に明け暮れていたっけ。



 ……そりゃあ、最期は裏切られる訳……だよ、な。



 てゆか、そんな状況なのになんで”俺”は「冒険者になろうぜ!」なんて、あいつらの誘いにだけは乗ってしまったのだろう?


 ……それが、今でも分からない。


 ただ……


 あの時のアッセルの言葉に、なぜだか妙に胸が熱くなってしまった。それだけは今でも覚えている。


 ……だから、なのかなぁ?


 あれだけ口を酸っぱくして色々と忠告をし続けて、その度に、あいつらのやる気の無い態度に酷く落胆させられたってのに、何故だか最後まで見捨てることができなかった。

 裏切られたのだと知る、その時まで。


 

 まぁ、その結果が”わたし”なのだから、何をやっても成る様にしかならないんだ。って、今更ながらに悟っちゃったんだよね。



 ”この先”に備えていくのは当然。でも、”今”を楽しむのが第一優先。


 今世の、”わたし”ことヴィクトーリアの”基本方針”は、これに大決定、です!



 「……ヴィーちゃん、どったの?」


 気が付けば、お友達の顔が目の前に。


 わたしよりほんの少しだけ視線の高いロッティの鳶色の瞳が、つい今まで呆っとしていた間抜けなわたしの顔を写しだす。


 今自分が頭の中に思い描いていたことを正直に話すなんて、どれだけ”仲の良いお友達”であっても、当然、出来るが訳が無い。


 良くて頭の心配。

 悪けりゃ悪魔憑き扱いだ。


 まだロッティ自身は”おこちゃま”。そんな発想自体出てこないだろう。


 けれど大人は違うし、いくら言い含め口止めしたところで、”鉄より固い意思”であっても、所詮はガキんちょ。熱くなったら簡単に曲がっちゃう。


 ならば、誤魔化すしかあるまいて。



 「う、うん。大丈夫、大丈夫。なんでもないよ。ロッティって可愛いナーって。そんだけ」



 ──食らえ。


 部屋でこっそり無意味に何度も練習した、自慢の秘奥義”天使の様な小悪魔の笑顔”光線だっ!


 世のロリコンどもめ。コレを前にして最後まで理性が保てるかどうか勝負だっ!!


 ……ごめんなさい。攫わ(拉致ら)れたくありませんので、どうかご容赦願います、お願いしますっ。



 「えぇっ? …………えへっ♡」



 ……おっしゃ、撃沈。


 我ながら女泣かせの罪深きおんなだぜ、わたし。伊達にあの世(天界)は見てないぜっ!


 ……てか、訳がわかりません。



 「ほら、ロッティ。今日はあっちでお花摘みしよっ?」


 「……うん♡」



 ……何かイケナイ扉を、ほんのちょっとだけ開いてしまった気がしなくもないけれど。


 まぁ、良いかぁ……



誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ