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”運命の神”は、俺の敵。  作者: 青山 文
第二章 わたしはこれから生きていきます
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69.捕虜の扱い、皆さんどうしてます?




 「なんとか終わったみたいだね」


 「はっ! デカい口叩きやがった割にゃ、結局は数頼りの雑魚だったねぇ」


 襲撃者達は、上はB級上位の剣士を筆頭に、下はF級(見習い)のぺーぺーまで……数を数えるのも嫌になるほどの人数だ。


 その上、


 「まさか、互助会(ギルド)職員までいるとかさぁ」


 「むしろ今回の一件を主導した疑いすらも、ございましょうな」


 襲撃者の中には、明らかに武装の一切をしていない者が複数人混じっていたのだけれど。

 まぁ、つまりはそういうこと、なのかな?


 「卑しき亜人どもを率い、更には貴族名鑑に記載の無い”準男爵”を名乗る見るからに怪しい奴を断罪する。これはこの国に住まう民として当然の、正義の行いですっ! 我々は断じて悪くはありませんわ!!」


 「……んだってさ。みんな、どうしようか?」


 まぁ、確かに”リート準男爵家”という木っ端貴族が成立したのは、ほんの数週間前のお話。

 レーンクヴィスト辺境伯家の独断によるこの沙汰は、確かに王国中どころか、領都ルーヌの中ですら、これを知る者は極一部を除き、ほぼいないだろう。

 恐らくは、近く王家から男爵への陞爵の下知と共に発表されて漸く「へぇ……」なんて云われる類いの、


 『知る者ぞ知る』


 その程度のお話。



 だから、まぁ。


 「”リート準男爵家”を知らなかった。そのことに関しては、許してあげても良いけれど……」


 「全く良くありませんっ。これは、我がレーンクヴィスト辺境伯家への明らかな敵対行為にございますっ!」


 なんて。

 護衛の騎士のひとりが怒りを滲ませながら、声を大にして叫ぶ。


 うん。

 フィリップ卿のご意向もあるだろうし、騎士さまならそういう反応になるよね。


 ……というか、互助会職員の言い分が()()()()()()()()。と云うならば。


 「騎士様の胸に掲げられた紋章を見た上で、そこに気付かない……ま、いくら何でもそれじゃあ片手落ちだねぇ」


 アーダの言う通りだ。

 彼女は言い訳に、この国の貴族名鑑を持ち出してきたのだ。

 レーンクヴィスト辺境伯家の、”二対の剣を携えた大白鳥”の家紋に気付かなかった……なんて、当然そんなのは許される訳がない。


 「……貴様らの真の目的を吐け」


 クリスことクリスティン=リーの持つ大剣に、魔力の炎が大きく揺らめく。

 神話級上位のあの”魔剣”の炎は、所持者の意思によって、いくらでも熱く、大きくなる。


 そんな危険極まりない殺意の炎が、今互助会職員の目の前で揺れているのだ。

 彼女の恐怖心は、如何程になろうか?

 ”俺”なら速攻で涙を流しながら土下座でも何でもするけれど。


 すでにその炎の色は、クリスの怒りによって黄色……白色の段階近くにまで高まっているほどだ。

 ”大地の人(ドワーフ)”が鍛えた鋼ですら、あの大剣の前には、今やバターと何ら変わらないだろう。


 「クリス」


 熱いから、それやめてあげて。


 「……は。申し訳ありません」


 もうちょっとでその職員さん、剣の発する熱で失明しちゃっててもおかしくなかったから。

 そうなったら、さすがに<女神の祈り>を使ったとしても治療できないからさ。



 「ひとつ、よろしいかしら?」


 「……なによ。薄気味悪いガキね」


 ”俺”は無言で互助会職員の横っ面を力一杯に叩いた。


 「貴女が置かれている状況、少しは弁えなさい。わたしに訊かれたことにだけ、正直に答えていればよろしいの……これ以上、痛い思いをしたくなければ」



 ◇◆◇



 そもそも、”冒険者互助会”なる組織とは、流民による流民のための相互互助を目的とした集団から端を発している。

 当然、関係各者は、基本的に流民たちによって構成されているのが常だ。

 そこで働く職員の口から、


 『この国に住まう民として……』


 なんて。


 そんなご大層な言葉が、出て来て良い訳がない。


 で、考えるならば。


 「貴女、互助会長(ギルドマスター)の関係者、よね?」


 娘なのか、はたまた愛人なのか。

 そんなプライベートの話なんか、正直どうでも良いけれど。


 こんな人数を指折り数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどの”冒険者”どもの大集団。

 いくらB級上位の者が先頭に立って音頭を取ったとて、普通に考えてそもそもあり得ないのだ。


 何故なら、どれほど壮大な正義を唱えてみても、この行為自体は”犯罪”でしかない訳で。

 実際に音頭を取った者が、どれほど異常なカリスマ性を示してみせたとて、まともな人間が賛同するとでも云うの?


 なんて。

 つまりは、そういうお話。


 「…………」


 黙秘、か。


 「黙っていても、何の救いにもならなくてよ? 少なくとも、今の貴女には」


 あ。

 なんか今の”俺”ってば、絶妙に悪役令嬢っぽい言い方だったな。


 なんて。

 ちょっとだけ悦に……いかん、いかん。


 そんな奇妙な快感を、一瞬だけ覚えてしまった気もするけれど、これは今すぐ忘れよう。

 ”娘”の教育に悪いからね、絶対に。



 その言葉に対する彼女からの返答は、盛大な唾でした。



 勿論華麗に避けてやったよ?

 だれがこんなばっちぃの食らうかよって。



 ……あっそう。

 なら、こちらにも考えがあるけれど?


 「キング、クリス。<死神達の葬送曲>に続く禁断の【呪歌】。知りたくなぁい?」


 「「はっ。是非にもっ!」」


 本音を言えば、使いたくなかったんだけどね。


 この【呪歌】は、一度聴けば良くてトラウマ。

 悪けりゃ廃人一直線の、本当に危ない奴だからさ。


 このまま問答無用で襲撃者全員を犯罪奴隷として突き出してやっても良いけれど。

 ”根本原因”を放置してては、きっと寝覚めが悪いことこの上なしって奴なんだ。


 だから、ね?

 ちょっとだけ、()()()()()()()()()()

 貴女には、そんな目に遭って貰うとしようかな……



誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
 をっワクテカしてきたぞw  思考能力停止している人‥‥‥人?たちには「わからせ」てあげないとね?  なんかほんと世も末‥‥‥はっ!これぞ世紀末覇者!?  緩いアニメ調デザインのイメージが劇画調に!
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