表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
”運命の神”は、俺の敵。  作者: 青山 文
第二章 わたしはこれから生きていきます
39/124

39.【修行編】続けたかった……

いつも誤字報告ありがとうございます。助かってます。

2024.12.05 設定ノート見て慌てて修正。回復術士見習いはマルセルとスサンナです。




 「そうです。我が流派の運足(あしはこび)の特徴は、”跳ねている様で、必ずどちらかの足は地に着いている”。両足とも地から離れていては、不意の行動に支障が出る。かと云って両足共地に()()()()着いていては、咄嗟に動くことはできない。どの様な事態にあっても、己が身体を支配するは己。戦場(いくさば)において、決して他人に間合いを、呼吸を支配されてはなりませぬ。その為には、こちらが常に動くことで、場を完全に己が支配下に治めねばなりませぬっ!」



 キングこと(ワン) 泰雄(タイシオン)の教え方は理詰めの様で、限り無く徹底した根性論だった。



 その癖、言ってること自体はある意味正しいんだから、マジで余計にムカつくっていう。



 キングの流派だけの話なのかも知れないが、どうやら二刀流というものは一見攻撃的な様でいて、かなり防御面に意識を割いている代物らしい。


 足捌き(キングの流派では”運足”と呼ぶが)ひとつ取っても、基本的に攻めを重視する様な()()()()な動きがほぼ無い。あくまでも、相手の動きに常に対応するための受け身的な動きが多い印象がある。


 ”後の先”というのかな? 徹底的にそれを狙ってる感じ。


 間合いをはぐらかしながら相手の隙を突き、無ければ相手の盲点を探りそこから隙を作る……そのための基本動作が、この運足に集約されているみたいだ。



 「……やはり。やはりっ! <継承者(サクセサー)>殿の持つ”正中線”は、まるで世界に根を張る雄々しき柱、”世界樹”の様ですなっ! 我が流派の”理想”を絵に描いた様な動きですぞっ!!」



 【姿勢制御(ギフト)】のチートによる恩恵か、俺の”重心”はどんな動きをしても決してブレることがない。逆に今この【ギフト】の効果をカット(OFFに)したら、確実にグダグダになるのは目に見えている訳だが。



 ちなみに”世界樹”というモノは、()()()()()()()()()()()。未だ天動説が当たり前に信じられている世界のため、



 『じゃあ、天井(そら)を支えてるのは何だよ?』



 ……って、そんなツッコミに対する説明の根拠とされる()()()()()らしいよ?


 てか、普通に考えればそんなデッカい樹がもしこの世にあったら、世界のどこからでも見えるだろって話。



 でもまぁ、森の人(エルフ)がいるのに、ファンタジー世界ではワンセット扱いの世界樹が世に存在しないのは、ある意味片手落ちだよなって……


 そんな風に思ったら、<創世神(全能神)(ジェネア=ハールド)>は怒るかな? まぁ、こいつは別側面(アナザー)の<運命の神(あのバカ)>としか面識無いし、多少不敬でも良いかナーって。



 てか、環境的な部分で考えると、万有引力の発見! とか、アメリカ大陸発見!! みたいなことを、今なら”俺”もやろうと思えばできちゃうのか。


 【浄化(ギフト)】があるから、長時間フロに入れねぇ問題も”俺”には全然関係無いし、水やら食糧やらの不安も【アイテムボックス(ギフト)】でバッチリ解決できちゃう。


 ……なんだ、やっぱり”俺”ってハイパー過ぎるチート野郎じゃん。何で()()で何度も犬死にしてんだよってくらいに。


 まぁ、逆を言えばそんな”一家に一台”レベルで便利過ぎる人間(カモ)を放っておく様なお偉方は、何処にもいないって話にもなっちゃう訳で。


 ”ヴィクトーリア”を知られたら、まずお貴族さまor教会に拉致られるのはほぼ確定事項だろう。王族に直接拾われればワンチャン……くらいだろうか? いや。それも無いな。


 これは、そんな()()()()()に備えるための”修行”だと考えねばなるまい。



 ……身体は未だキングのシゴキに対応しているってのに、その癖頭は完全に他事(あさって)を。



 なんか、最近同時に色々なことができちゃう気がするんだよね……


 【音楽の才能(ギフト)】のお陰でドラム(そんなのこの世界にゃ無いけど)はメタルのプロレベルでイケるし、今ならこの状態のままどんな【呪歌】だって平然と詠唱できそうなくらいに。上手くやりくりすれば同時に”俺魔術”もできちゃうかも知れない。いや、それこそ巨魔猪(ギガン・ボア)の骸の制御を、【音の精霊】たちの補助無しでも今ならもしかしたらできちゃうかも。


 ハズレギフト【多重思考マルチプル・シンキング】は今封印されているハズだから、それが発動している訳ではないはずだが?


 でも、ひょっとしたらそれに近い<技能(スキル)>が、”俺”の裏で動いているのかも知れない。それくらい頭が冴えている万能感が、今は何故かあるのだ……深く考え出すとなんか怖いから、自分に【鑑定】できないんだけどさ。


 つい先日、食い意地に全力割り振り過ぎたせいで、監視の眼に気付くのが遅れたのはまぁ……腹ぺこ欠食児童にゃ、食らうことが一番の正義(ジャスティス)だからしゃーないってことでひとつ。



 あ。もう監視の眼に関しては、完全に放っておくことにしました。



 だって、今更焦って考えてもハゲるだけの様な気もするし。事態が動いてからでも良いかなって。


 隠しておかなきゃなんない色々なこと、すでに()()()にバレちゃってる訳だし。逆にそいつに全部さらけ出しちゃえば、報告する奴の頭の具合こそが疑われるかも知れない────って、そんな希望的観測のもと、開き直ってやることにしたのだ。



 ただ、誰の指示でやってるのか……そこだけはちゃんと把握しとくのが大前提なのだけど、ね?





 ◇◆◇





 ”ヴィクトーリア”を監視していたのは、<回復術士(ヒーラー)>見習いのマルセルでした。



 うへぇ、やっべ。



 ……ってことは、裏にいるのは確実に”マーマ(ヴィルヘルミナ)”だってことだ。


 この世界で唯一、ヴィルヘルミナだけが【ギフト】を含め”俺”(ヨハネス)の持つ能力の大半を知っている。


 それは、今まで取ってきた



 『報告してきた話の内容全部聞いたけどさ、夢でも見てたのかい? てか、お前さん頭の具合、ホント大丈夫?』



 作戦が、ここに来て()()()()()()()()()()()()()




 『()()()()、私の娘なんかじゃないっ! あんな()()()()。私とハンスの子で、絶対にあるものかっ!!』



 ”わたし”が精神の奥底へと引き篭もった原因の、アイツの言葉が脳内において、まるで歌謡のいちフレーズを謳うかの様に何度も何度もリフレインされる。


 それだけ、()()が”わたし”にとって衝撃的な言葉になったのは間違い無いだろう。



 ────不味いな。これじゃさらに”マーマ(ヴィルヘルミナ)”は”ヴィクトーリア(むすめ)”を避けちまう。



 マルセルの監視が、【音の精霊】たちと井戸を掘った時からずっと続いていたのだと仮定したら、かなり不味い。


 【音の精霊】たちの姿は、この世界にはそれこそ概念から何一つ存在しない訳だから、その容姿の詳細な説明はこの世界の住人には確かに不可能だろう。辛うじて認識できるとしたら、エレキギターの姿をしたドレミとベースの姿をしたファくらいか? それでも、俺お手製ギターの存在を知ってる()()()でなきゃあり得ない話なんだが。


 とはいえ、【音の精霊】たちを魔道具か何かの類いくらいには認識するだろう。あのカスペル卿(バカ野郎)みたいに。そうなれば、ヴィルヘルミナなら確実に分かる。


 この世界の弦楽器って、原始的な竪琴と、胡弓に近いモノや、あとは馬頭琴くらいしか存在しないっぽいし。トコトン音楽を愛する者には不遇過ぎる世界だよ、全く。


 ああ、そうだ。今度三味線を再現してみるのも悪くないかも? あの音聞いてると、なんか妙に癖になるんだよね……こどもの頃、材料に猫の皮を使ってたんだと聞いてドン引きしたけど……てゆか、別に皮は他の動物で代用しても良いわけだし、何なら猫系魔獣で……



 いかん。現実逃避はやめよう。



 そろそろ、”ヴィルヘルミナ(マーマ)”と対峙せにゃならん時が来たってこと、なのかなぁ……?




 はぁ、憂鬱だ。




誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ