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”運命の神”は、俺の敵。  作者: 青山 文
第一章 俺は今までこうして生きてきた
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1.俺/わたしの備忘録。

リハビリも兼ねての新シリーズ雑文です。

どうぞよろしくお願いいたします。



 ここに記すのは、「俺/わたし」(面倒なので、以下一人称は全て「俺」で統一する)が、今まで長いこと歩んできた、本当に”つまらない”人生の備忘録だ。


 所謂、”異世界転生モノ”のテンプレの数々を綺麗に踏んでしまった俺。

 自称”運命の神様”とかいう、何処をどう見ても胡散臭ヤベー奴から【ギフト】を貰い、異世界転生をする……なんてことに。

 聞けばこの神様、人々の人生をただ傍目から眺めているだけで、


 『何故かどうしようもなく楽しい!』


 のだそうで。

 なんつーか、本当に悪趣味だよなぁ。としか……

 

 『ただね、それもちょっとだけ飽きてきちゃったのさ。そこで君に相談なんだけど、本来なら今まで生きてきた経験・記憶等、必ずリセットされちゃうそれらを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、人は最後どうなってしまうのか? って。それがずっと気になってしょうがなくって、一度検証してみたくなったのさ。悪いけど、協力してくれないかな?』


 ……などと、巫山戯た事を抜かしやがる。


 その見返りとして、新たな人生を歩む毎に何か一つ特別な【ギフト】を授けてくれるのだとか。ギフトとやらは、生まれる前にランダムで決めるらしい。

 そして記憶だけでなく、今まで得てきた経験と知識を余すこと無く次代へ持ち越せる様にしてくれるのだとも。

 まぁ、チートありの”強くてニューゲーム”がずっと続いていくのならまだ……ということで、俺は気軽に了承してみせたのさ。


 ……それが、永劫とも思える永きに渡って続いていく後悔の日々への誘いだったとも知らずに。



・転生一回目。


 ギフト【音楽の才能】を得て、異世界<リアース>へと転生する。

 この世界は、地球で言えばだいたい5~7世紀前後に相当する文明度といったところか……まぁ知らんけど。

 農村に生きる庶民にとって、日々の糧を得ていくのですら困難を極める過酷な世の中。

 いくら他人よりもほんのちょっとだけ綺麗な音色が出せた所で、それで腹が勝手に膨れる訳も無し。

 当然、そんな【ギフト(モン)】なんかに”使い道”ってーか、価値なんか、端っから有る訳も無し……

 仕方無しに”知識チート”を武器に、俺は生きていくことにした。

 その目論みは大当たりし、完成までに3年もの月日がかかりはしたが、苦労の甲斐あってか手こぎポンプは大評判。

 だが、その手柄と利益を村長とその息子に奪われた挙げ句、口止めついでに俺はそのまま殺された。



・転生二回目。


 ギフト【浄化】を得る。

 そも”衛生”等という概念なんぞ端っからあり得ないこの時代、この世界に置いて、このギフトはヤバいくらいに強力な”過ぎた”力だったと思う。

 身の回りの汚れやごみに、あらゆる汚物は勿論、細菌やウイルスに各種毒物……果ては呪詛やら瘴気などといった闇に属する糞ヤバいモノであっても、この【ギフト】は問答無用で効いたのだ。

 現代日本人の根底にある価値観、衛生観が未だ拭いきれない俺にとって、アレを”トイレ”などと呼ぶにはあまりにあまり過ぎた()()”汲み取り式ぼっとん”ですら、この能力の前にはただの”穴”と化してしまうのだから、そりゃあもう有頂天って奴だ。


 ……で。


 まぁ、簡単に言ってしまえば、俺はそこで盛大に『やらかした』。


 類い希なる強力な【ギフト】が、教会に巣くう強突く張りどもの眼にとまってしまったのだ。

 ”聖女”として力尽く(ていちょう)拉致さ(むかえら)れた俺は、粗末な食事と引き替えにそこで奴隷の如く働かされた……過労死するその時まで。



・転生三回目。


 ギフト【神の舌】を得る。

 

 ”知識チート”を用いて生きる。

 

 この方針自体は、恐らく間違いではない筈だ。

 前回の人生では、自重の一切をしなかったせいで……そして前々回の人生では、単純に立ち回りが不味かっただけで。


 この世界の調理法はあまりに未熟で、煮る、焼く、蒸す……その程度しか存在しない。

 後は精々、燻製……に近いものが、最近になって出て来てはいるみたいだけれど。

 そして、この国周辺の文化では旨味は勿論、出汁の概念すらも怪しいレベル。だったらとギフトと知識を活かし、料理界に革命を起こしてやろうと早速実行に移すことに。

 廃棄されるだけの野菜屑やら鶏ガラ、豚骨を用いて旨味たっぷりのスープを作り、後は精々燃料に使われる程度の認識しか無い動物性油脂から脂を取り出し、炒め物、揚げ物を出す料理店を開いた。

 そしてこっそり【浄化】も使い、転生モノのテンプレとも言うべき”マヨネーズで無双”も、しっかりとやってやった。

 今まで何処にも無かった味と数々のレシピに、物珍しさもあってか瞬く間に店は繁盛し、街どころか領内でもかなりの評判に。

 だが、ちょっとした行き違いで「このワシにゴミを喰わせる気か?!」などと評判を聞きつけてやってきた貴族様を怒らせてしまい、あれよあれよと俺は瞬く間に魔女へと仕立て上げられ、挙げ句そのまま火あぶりの刑に。


 来世になって知った話だが、その時に残されたレシピやら調理法やらの数々は後の世で再評価され、俺の処刑を命じた貴族様の野郎は「ワシが育てた」と、ちゃっかり人の功績に乗っかっていやがったという……



・転生四回目。


 ギフト【鑑定】を得る。

 四回目にして漸く有名チートスキル キタ━━━(゜∀゜)━━━!!

 ……と、一通り喜んではみたが、今までが”出る杭は打たれる”という、当たり前過ぎる格言が骨身に染みただけのお辛い人生だったので、今後は更に自重していく方針に。

 精々、自給の採取程度に留めていようかな。と思っていたのだが、そもそもの生まれが余りに貧しい寒村であったがために、それだけでも充分に周りから浮いて目立ってしまう。

 仕方無しに、知識チートとチートスキルを使い、周囲の生活向上の手助けをする羽目に。

 その甲斐あってか、村の生産性も上がり多少苦しいながらも何とか皆が喰っていける環境になって、俺は知らぬ間に幼馴染みでもあった村長の息子(外堀をしっかりと埋められての半ば強制的に、ではあるのだけれど)と結婚。

 だが、(周囲との相対的な話でしかないが)富める村となったが為に、とある山賊共に目を付けられ村は滅亡寸前に。

 夫に裏切られ、人身御供ですとばかりに差し出されてしまった俺は、その後山賊共に死ぬまで犯され続けた。



・転生五回目。


 ギフト【アイテムボックス】を得る。

 またまた有名チートスキル キタ━━━(゜∀゜)━━━!!

 ……と、一瞬喜んではみたが、この世界には<次元倉庫(ストレージ)>という魔法が存在するために、珍しいは確かに珍しい【ギフト】だが、そこまで貴重なものでもないのだと知りがっかり。

 ともかく、今までの生で学んだのは……


 「自衛の手段は必要。超必要」


 ……という、至極当たり前の、そんな単純な話だった。

 だから、【鑑定】と【アイテムボックス】という2大有名チートスキルの両方を得た俺が、此処に来て漸く異世界転生モノのテンプレ通り冒険者の道を選択するのは、まぁ当然の帰結だったのだとも言えようか。

 ……まぁ、地球で生きていた頃は、剣道(三段)と柔道(二段)をやっていたから、元々多少なりとも動けはしたのだけれど。

 でも、正直言って今まで大して役にも立たんかったなぁ、武道の段(コレ)ってば。

 冒険者登録をして直ぐ荷物持ち(ポーター)として、とある冒険者徒党(パーティ)に入れて貰える事ができたので、これから金と経験を貯めつつ地道に強くなっていこう……

 そう思っていたのだが、魔物熱狂(スタンピード)への対処の強制依頼に駆り出され、俺はそこであっさりと命を落とした。



・転生六回目。


 どうやら俺は、前世の死ぬ間際に【呪歌】という新たな技術を開発してしまっていた……らしい。

 転生四回目の生の折りに、畑仕事で皆が何気無く歌っていただけの伝統……といえば伝統なんだろう、そんなつまらない民謡の一つだ。

 確かに当時、歌っている間は、なんかあまり疲れを感じないな……と、不思議に思ってはいたのだが。

 何故あんな激しい戦いの最中に、俺はあの歌を口ずさんでいたのか……今となってはもう思い出せもしないが。


 だが、それをことのほか喜んだのは、雅楽を司るという、今はもう名を失い”世界”からも完全に忘れ去られようとしていたとある女神様。


 祝福の加護と共に、俺に4体の【音の精霊】をくださった。

 そのせいか今回のギフトはお預け……まぁ、毎度ギフトを貰っても、それをまともに活かす前に逝くから、正直そんなのもうどうでも良いのだが……

 対象が、耳に入った音に対し、快、不快を判断できる最低限度の知能さえ備わっていれば、その効果は必中。さらに同じ曲を重ねれば重ねただけ効果が倍々へ……と膨れあがるあまりにエグい特性を持つ【呪歌】という特殊技能は、確かに冒険者として生きていくには極めて有用だった。

 雅楽の女神様に請われたのもあって、俺は数々の【呪歌】を新たに創り出しては、それらを無償で世に広めていった。


 だが、晩年【歌手(シンガー)】としての知識と地位の独占を目論む徒党の面子(パーティメンバー)でもあり、弟子でもあった5人の仲間達の裏切りによって俺は殺された。



・転生七回目。


 あ゛?


 【ギフト】の中身なんぞ、そんなのどうでも良いだろ?

 てーかさ、もういい加減、このクソッタレな世界で生きていくのがほとほと嫌になってきた。

 俺は何度も生まれ変わっては、その都度新しい人生を歩んできたのだが……この世界で未だ一回も、天寿を全うしてはいないのだから。


 『死ぬにしても、俺は畳の上で死にたいんだ』


 とかさ、そんな訳の分からん我が儘なんぞ言うつもりも無ぇよ?

 だから。

 せめて一度くらいは子か孫を抱いてから、気分良く逝かせてくれよ、って話さ。

 ……前世(六回目)では、途中までわりと良い線行ってたと思うんだけれどなぁ……

 忙しさにかまけて恋人すら作る心の余裕をこれっぽっちも持てなかったのには、今更考えてみてもすごく勿体無かったのかも知れないけれど。


 ……で。


 今正に毎度おなじみ”ゲームオーバーの瞬間”が近付いてきていた様で。

 俺の手にした椀の中には【鑑定】を使わなくてもすぐそれだと解る毒入りのスープに、全然隠しきれていない徒党面子達の殺気。

 ……幼馴染み、恋人や仲間だと心から思っていた筈の奴ら(幼馴染みで恋人、幼馴染みで仲間……と重複してるから今回更に質が悪ぃな)に裏切られるのは、これで三回目かぁ……丁度半分の確率とか、どれだけ人望やら人を見る目やらが無ぇんだよ俺……だなんて、思わず天を仰ぎたくなってくる。

 原因は、本当に分かりやすい。


 また貴族様のせいだ。


 貴族様が俺の徒党に臨時面子で入り込んできたのだが、”竜殺し”の称号の独占と、俺に憑いている9体(何故か気が付いたら倍以上に増えていた)の【音の精霊】達が欲しいのだろう。

 どうやらこの貴族様は、スピーカーやら電子楽器やらに翼の生えた様な、およそ”生物”などという概念の範疇からも思いっきり外れた見た目をしている【音の精霊】達を、何かの魔導具の一種だと勘違いしている臭い。


 殺してでも奪い取る。

 な、なにをするきさまらー!


 ……ってか?

 俺の魂に直接紐付けされているこれら【音の精霊】達は、俺を殺したところで一緒に天へ還るだけなのに。

 そんな事を、命乞いついでにバカ正直に説明してみたところで、きっと信じては貰えないんだろうなぁ……


 ……まぁもうホント、どうでもイイや。


 幼馴染みの恋人も、とっくにその貴族様に寝取られていた……ってのも、すでに知っていたりね。秘密にしているつもりなのだろうが、全然バレバレですよ?

 それこそチョイと死ぬ気になって頑張れば、恐らくは切り抜けられない事も無い……その程度の場面(モン)でしかないのかも知れないが、後々の事を考えると正直面倒臭いし、何より今回の人生にはもう疲れた。

 嫌がらせも兼ねて、ちょっとだけ無駄な抵抗を重ねて死んでやるとしようか……



・転生八回目。


 →次ここ。


誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします。

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