第98話 入管ステーション②
「ドック内は何も無いんだな」
壁から通路が伸びてきた。それがハッチに接続されると、それを使い外へ出た。
ドック内には何もない。出迎える人もいなかった。
「重力フリーエリアだから物は置いておけない。散乱してしまうからね」
一緒に出てきたローズが説明してくれる。
重力フリーエリアは重力発生装置を自由にオン・オフできるエリアのことで、荷を下ろすときはオンにし、出航するときはオフにする。
そういうエリアは物を置くことを禁止されており、散乱することを防止している。
「どこでコントロールしているのだ? 誰もいないけど……」
「港湾入国管理局の連中がカメラで見て制御している。俺たちが何かすることはない」
壁にカメラがいくつも付いている。
監視されているみたいで気分が良くないが、いや、監視しているのか?
そういう役目もあるのかもしれない。
この後は検査員が来るまで待機となる。
船内を調べ規制品を積んでないか確認する。それで合格すれば晴れて星系に入ることが許される。
だか、全員が残っている必要がないので、俺とエミリーと諜報部の2人は船を下りることにした。
初めてのステーションなので、ローズが気を利かせてくれたのだ。
ドックから専用通路を歩き、警備員が待機している手荷物検査場を通る。そこで荷物検査をし、問題なければ商業エリアに入ることが許される。ちょっと面倒臭いがこれも規制品を持ち込ませないための処置なのでしかたがない。郷に入っては郷に従えというし、素直に従った。
ただ、銃器類の携帯は許された。とは言ってもレーザー銃を携帯してるのはエミリーだけで、俺たちは持っていない。
許される、ということは治安が良くないからだろう。自分で自衛しろと言っているような物だな。
「広いな……」
検査場を抜けると、街が広がっていた。上を見上げると宇宙が見える。所々ガラス張りになっており外が見えるようになっていた。
「中は明るいんだな」
「この時間はお昼過ぎだから照明がついているのよ。夜になると全て落とすわ。生活リズムを狂わせないためにね。一年中明るいと昼と夜がわからなくなるでしょ。だから」
確かにそれはあるな。
夜の時間なのに明るいと寝るにも苦労する。それにメンテナンスしたりするのに止める必要もある。
こういうのがないと、タイミング的に難しいというのもあるのかもしれない。
ステーションやコロニーの面白いところは、形によって天井の位置が変わり見える風景も変わってくるということだ。球型は上を見ると宇宙が見えるし、ドーナッツ型は横を見ると反対側の街が見える。
こういう楽しみ方もあるんだと教えて貰った。
「地下もあるんだけど時間がないからね。今度来た時でも見て歩くといいわ。だけど、治安は下に降りるほど悪くなるので気を付けないと危ないわよ。できれば私みたいに銃の携帯をお勧めするわ。持っているだけでも変なのが近寄って来ないからね」
そう言って銃をポンポンと叩く。
確かにこれだけ広いと警備の目が届かないだろう。
自衛ができないと1人で歩くのは危険かもしれない。
ステーション内をぶらぶらと見て歩く。
至って普通。小さな街をギュッと詰めた感じだ。
ただ地面は土では無くゴムみたいなちょっと弾力がある材質を使っていた。それと車は走っていない。あれは反重力装置を使っているので何か問題があるのかもしれない。反発しあうとか。
ステーション内では使えないのかもしれない。
「景色には驚いたが中は以外と普通だな。住んでいる人も普通だし、建物も普通。ただ巨大な支柱があるだけで何も面白い物は無いな」
巨大な支柱とは外壁を支える柱のことで、それが均等に並んでいる。
「それはそうよ。ここに遊びに来ているわけではないのだから面白い物があるわけがないでしょ。ただ、天候が変わらないだけで後は普通の街と同じ。生活も変わらないわね」
こうやって見ても普通に商店が並んでいる。
宇宙ステーションだから期待していたのだけど、何も無いことにガッカリしていた。
「せっかく来たから何か買っていく? 変わった物が売られているかも知れないわよ」
落ち込んでいる俺を見てエミリーが気を利かせ提案してくれた。
「そうだな……でも、今買うと荷物になるだろ? 宇宙船は俺のじゃ無いし、邪魔になると思うんだよね。今度来たときにしようか」
自分の船ではないので荷物になるようなものを積むと、船を下りるとき大変になる。
なので荷物を増やさないほうが良いだろう。移動が面倒だし、それに部屋が狭いので置いておく場所もない。
こういうのは自分の船を手に入れてから考えよう。今はまだ早い。
「それじゃ、食べものでも買っていけば? みんなで食べれば邪魔になることもないし、それにあの自動調理器、実を言うと苦手なんだよね。口に合わないというか何というか……。だから、美味しい物を買っていけば喜ばれると思うんだよね……」
みんなで、とか言っているが実は自分が食べたいだけなのでは?
俺たちには我慢できないほどの不味さではないし。
まぁ、あの自動調理器、美味しくないのは確かなんだよね。
みんなも言っているし、それに領都がある惑星まではまだ時間がかかる。その間の食料として買っていくのは悪くはないかもしれない。諜報部の2人も横で頷いているし。
エミリーの案に賛成し、みんなで食料品店を見て回ることにした。
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