第89話 選抜メンバー①
あれから帝国軍の艦隊は見かけず、順調に領都があるミグラクス星系の近くまで来ていた。
ジェネレーターの出力が安定しており、常に高出力を出せていたことで予定よりも3日も早く予定地点まで到着した。
とは言っても1ヶ月近くはかかっているけどね。
ここから先は帝国軍の警戒宙域になる。至る所に監視衛星が設置されているため、迂闊に入ると通報される。
そのため、その対応についてどうするかブリッジ内で議論していた。
そしてなぜか俺も呼ばれ、その話に加わる事になった。
「この先に帝国軍の艦隊が待ち構えていると思うが、どうするんだ? また逃げるのか?」
ロズルトが代表で話している。
他のクルーは代表に従うだけみたいで、これといった案はないようだ。誰も自分からは話そうとはしない。
「いや、今回は逃げない」
「帝国軍と戦うのか?」
「いや、戦わない」
「ん?」
「今回は小型戦闘艦を使う」
意味が分からずキョトンとしてる。
グランバーには何か策があるようで、迷いも無く答えている。
前もって考えていたようだ。
「戦艦はこの宙域で待機し、ここから先は小型戦闘艦を使って領都がある第1惑星まで行く。ローズ、頼めるか?」
「わかった。俺の船を出せば良いんだな」
ローズは元冒険者で未開拓宇宙地域で宝(資源)探しをしていた男だ。
そして俺に小型艦の操縦方法を教えてくれた師匠でもある。
「どういうことだ?」
「領都がある第1惑星は、戦艦の入港を許可していなかったはず。惑星に下りる場合は、衛星軌道上にある空港ステーションで小型戦闘艦か専用シャトルに乗り換えなければならない。そういう決まりがあるため、小型戦闘艦を積んでおいたのだ。それを使ってここから領都に行く。それなら捕まることはないだろう」
帝国軍は戦艦を探しているはず。
まさか小型戦闘艦に乗り換えて領都に入るとは思わないので裏を掻くことができる。
戦闘を避けるのであればナイスアイディアだ。
手配されている戦艦で行く必要は無い。
「すると俺たちはここでお留守番?」
「小型戦闘艦の定員は6人のはず。残りは戦艦で待機となる」
ブリッジ内がザワつきだした。作戦もさることながら誰が行くのかで揉めている。
みんなの表情を見ると戸惑いや困惑が多い。
どちらかと言うとなすり合っているのか?
耳を傾けると「俺は駄目だ」とか「お前行けよ」とか聞こえるが……。
「でも、行ける人は限られているよね。グランバーはこの艦の責任者だし、ロズルトは艦長でAIの指示を出さないといけないでしょ。博士はちょっと論外だし……」
エミリーが指を折りながら1人1人名前を上げていく。
それに対して素早く反応したのは博士だった。
「誰が論外じゃ! 小型戦闘艦ぐらい操縦できるわ!」
馬鹿にされて博士が怒った。
でも、操縦のことを言っているんじゃないと思うけどね。
領主と会ったとき話せるか、て事だと思うが、博士では話にならないだろう。それにその言葉使いと態度では相手を不快にさせる。
論外と言われても仕方がない。
「べ、別に博士を馬鹿にしたわけじゃないのよ。ほら、博士がいなくなったらこの船の整備ができなくなるでしょ。そうなると乗っているクルーが困るわけで……ね!」
一生懸命なだめているが、博士の機嫌は直らずムスッとしている。
引き攣っている笑顔で言われても直ぐに嘘とばれるだろう。
それに周りがクスクス笑っている。そんなんじゃ何を言っても駄目だと思うけどね。
「確かに行くメンバーがいないな。誰を行かせる?」
ロズルトも腕を組んで考えている。
これはとても重要な任務だ。
誰にでも任せられるような仕事ではない。
「難しいわね。領主様と話せる人などいないと思うわよ。私たちの殆どが下流市民だからね。礼儀作法など知らないわよ」
この世界は君主制である。
貴族が一番えらく、その次に上流、中流市民となって下流市民、そして貧民。貧民は税金を納められない人のことで、国の保障や行政サービスは一切受けられない。
そうなると貴族は雲の上の人となるわけで、お目に掛かることはそうそうない。みんなが行きたがらないのは、そういうのがあるからだ。
「対等に話せる人となると……」
グランバーが俺をチラッと見る。
おい、俺を呼んだのは最初から俺を行かせるつもりだったのか?
何か嫌な予感がしてきたぞ。
「船の所有者としてローズは確定だ。その他はエミリーも行ってくれ。最低限のマナーぐらい知っているだろ?」
「そ、それはまぁ、知っているけど……」
物凄く嫌な顔をしている。
貴族に会うのはみんな嫌なんだろうなぁ。
他の異世界でもそうだったが、不敬罪とかあって、失礼なことを言ったらその場で斬られる、ていうのもあったし、尻込みするのはしょうがない。俺も貴族と会うのは嫌だったからその気持ちは分かる。だから俺も遠慮したい。
「後は責任者が必要だが、ロズルト、頼む」
「えっ! 俺が!?」
めちゃくちゃ驚いている。
まさか自分が行くとは思っていなかったのだろう。かなり焦っていた。
「俺は帝国軍に顔が知られたからな。入管時に調べられると不味い。お前はあの時顔を見られていないだろ? だから頼む」
「うっ、うーん……」
あの時とは帝国軍と戦闘した時のことを言っているのだろう。
俺はあの時ブリッジに居なかったので知らないが、向こうの士官と会話したと聞いた。
その時の映像が残っていた指名手配されている可能性が高い。
人前に出るのは危険ということだ。
「でも、俺がいないと船が……」
「お前がいない間は近くの宙域に隠れているので大丈夫だ。それに、居ても居なくても同じだろ?」
「そ、それはそうなんだが……」
AIが船を制御してるのは知っている。なので、艦長でないロズルトがいなくても問題ないのだ。
「でも、俺は礼儀作法は知らないぞ」
「交渉に関してはエミリーに任せれば良い。お前は黙って付いていくだけで。それで何か聞かれたら余計なことは言わず、はい、いいえで答えておけ。簡単だろ?」
いや、簡単ではないだろ、と突っ込みそうになったが、俺のことではないので黙っていた。睨まれそうだしね。
この後も何だかんだ言われて渋々だが頷いていた。
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