第88話 ターミナル解放作戦②
「増援を寄越しましたか」
「ああ。時間稼ぎをして他の部隊から増援を貰う。最初からそのつもりだったのだろう」
「飛ぶ前でしたら簡単に撃ち落とせますが、一度飛ぶと我々では対応は難しいです。どうしますか?」
「既に小隊は建物内に突入した。今更引けないだろう……」
ここで引いてしまえば突入した小隊が孤立する。それはできない。
「作戦を早めよう。第3小隊をターミナル内に突入させろ。こちらが耐えている間に空港を落とす。そうすれば向こうも諦めるだろう」
「ですが、まだ第1格納庫は抑えていませんが」
「数はこちらの方が多いのだ。それで押していく。第4小隊も出させろ。待機している第1小隊と合流し、管制塔を落とす。激しく抵抗されるがやむを得ない。被害を最小限に抑えたかったが……」
少しずつ戦力を削っていけば降伏すると思い、敢えてゆっくり攻撃していたのだが、そうも言っていられなくなった。
戦闘機と交戦すれば、こちらの被害も大きくなる。
時間を掛けるのは得策では無い。
近くで大きな爆発音と振動が伝わってきた。
戦闘機が爆撃してきたのだ。
やはり対空ミサイルでも落とすのは難しく、こちらに被害が出始めた。
「状況を報告しろ」
通信連絡班の1人が報告にきた。
彼らは兵士から送られてくる情報を整理し俺に伝える。それ以外にもこちらの命令を伝えるのも彼らの仕事だ。
「はい。砲撃部隊は戦闘機と交戦中。対空戦車が3台破壊されました。その他にも負傷した兵士が多数、死者はいません。負傷者は後方に下がらせています」
「戦闘機の数は?」
「10機です」
「1小隊送ってきたか。だが、それだと少ないな。向こうに寝返ったのは3部隊と聞いている。それ以外にも協力している部隊もいるはずだ。どういうことだ?」
数が少ないのが気になる。
こちらと戦うには少ない気がするが……。
「戦闘機2機を撃破。戦闘機が下がります」
報告を聞いていたジェラート少尉が首を傾げた。
「あっさりと引きましたね。どういうことでしょうか?」
「俺にも分からない。何か作戦でもあるのか……」
ザイラ・バーツ大佐のことだ。
何か良からぬ事を考えているに違いない。
「8時の方向に、新たに戦闘機を確認。増援です」
直ぐに新たな報告が。
休む間も無く戦闘に追われた。
「こちらの消耗を狙っているのでしょうか?」
「その可能性はあるな」
人間なので休みは必要だ。だが、こうちょこちょこ攻められたら休む暇も無い。それに精神的に参ってしまう。
それを狙っているのであればこの作戦の意味も分かるが……だが、こちらは空港を奪おうとしているのだ。そんな悠長なことをやっていられないと思うが。
「わからない。何を企んでいるのだ……」
直ぐに別な報告が入ってきた。
「第1小隊と第4小隊が合流。管制塔に突入します」
更に別な報告も。
「第1格納庫を占拠しました。航宙部隊を数名、捕虜として捕らえています」
「捕虜は後続の小隊に連行させろ。第2小隊は引き続き第2格納庫の攻略を。シャトルを破壊されないように注意するよう伝えろ」
次々と無線で報告が上がってくる。
作戦は成功に思われたが……。
「管制塔1階フロア占拠しました。2階へ移動します」
「隊長! 戦闘機が方向を変えました。管制塔方面に向かっているそうです」
「方向を変えた? なぜこのタイミングで……まさか! 全部隊を撤退させろ直ぐにだ!」
俺の怒鳴り声にジェラート少尉が驚いていた。
「ど、どうしました、隊長?」
「やられた。最初から守るつもりは無かったのだ!」
指示が飛び交う中、戦闘機が管制塔を爆撃した。
最初から狙いは管制塔だった。
状況が不利になると知るや、空港を放棄したのだ。しかも使えないようにして。
最初からこれが奴の作戦だったのだ。
「格納庫に爆弾が命中。炎上しています!」
「ターミナルにも爆弾が命中。小隊に被害が出ています!」
報告が届く中、苦虫を噛み潰したような表情になった。
「ど、どういうことですか? まさか味方を攻撃したのですか?」
「そのまさかだ。味方を裏切るとは思わなかった。奴の冷酷さに気づけなかった俺のミスだ」
奴にとって味方など関係ないのだ。
星系軍を裏切っているのだから、今更何とも思わないのだろう。
「これで空港は使えません。恐らくシャトルも駄目でしょう」
「……」
黒い煙が立ち登る空港を見て怒りが湧いてくる。
約束をして守れなかったこともあるが、自分の不甲斐なさに。
力で押すので無く、もっと違うやり方があったのではないか?
後悔しても遅いが、これは俺の作戦ミスだ。
もっとザイラ・バーツ大佐のことを頭に入れるべきだった。
「被害の状況は?」
「第1小隊、第4小隊、連絡がつかず。第2小隊、12名が死亡。負傷者多数。第3小隊、8名死亡。6名が瓦礫に埋もれ生死不明。応答がありません」
「後方待機の小隊も救助に行かせろ。1人でも多くを助けろ」
報告を聞いて自分の無能さを痛感した。
こちらの戦闘機での被害はそれ程でも無いが、突入部隊の方が被害甚大だった。
「突入してのタイミングで爆撃ですからね。殆どの兵が管制塔内にいたと思います。かなりの人数が巻き込まれたと」
兵士には自身を守るためにシールドバックを装着させているが、瓦礫に埋もれては意味がない。重量物までは防ぎきれないはずだ。
「第5.第6小隊を集め、空港内に航宙部隊が残っていないか探索させろ。発見してもこちらから攻撃するな。投降を呼びかけろ。これ以上の被害は出したくない」
「部下に伝えます」
「戦闘機は?」
「確認取れません。引き上げたもようです」
「残っている小隊は消防隊と共に消火に当たれ。他の者はその場で待機を」
ザイラ・バーツ大佐にとって空港が壊滅しても関係ないのだ。
自分達が使うことはないし、それにドラギニス軍が攻めてくれば空港は破壊される。
ドラギニス軍に使わせるわけにはいかないのだから、最後は自分達の手で破壊するだろう。
そう考えると、空港は最初から破壊される運命だったのかもしれない。
ただ、破壊される前に1人でも多くの市民を逃がしたかったがそれができなかった。もっと早く奴の作戦に気が付けばあるいは……。
いや、気が付いたところで地上部隊だけであの攻撃を防ぐことはできない。こちらも戦闘機を用意しなければ対抗できないだろう。
そう考えると、この作戦は最初から失敗することが決まっていたのだ。向こうが投降しない限りは。
「戦闘はさけるように……か」
ミチェイエルの言葉を思いだした。
ひょっとしたらこうなることが最初から分かっていて、戦闘を避けるように言っていたのかもしれない。
だから俺を空港に行かせたのだろう。同じ仲間として、説得させるために。
救助に当たった小隊から報告が上がってきた。
管制塔に突入した小隊は、8名の生存を確認し他は戦死した。航宙部隊の兵士も2名だけ残して壊滅。格納庫で捕虜となった数名が生き残ったかたちとなった。
多くの犠牲者を出し作戦は失敗した。
この報告を聞いたミチェイエルは、眉を顰めたが何も言わなかった。
こうなることは予想していたのかも知れない。
この戦闘を切っ掛けに、地上部隊と航宙部隊の紛争が勃発。
ザイラ・バーツ大佐が声明を出し、地上部隊が空港を破壊。多くの仲間を殺したと発表した。あの攻撃も地上部隊がしたことにされ、逆賊の烙印を押された。
それを信じた市民が星系軍に詰め寄り惑星内は混乱、ドラギニス軍との戦争どころではなくなった。
結果、ドラギニス軍の進軍を許すかたちとなった。
気づけば、全て筋書き通りということだった。
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