第87話 ターミナル解放作戦①
地上部隊が一斉に反旗を翻したのはそれから5日後の事だった。
殆どの部隊が俺に賛同し、その指示に従ってくれた。
基地を占拠し、地上で待機していた航宙部隊を抑えた。
一部の基地では反抗にあい、戦闘を繰り広げたが、それも直ぐに増援を送ることで鎮圧した。
以外と戦闘が少なかったのは通信が遮断されていたことと、ザイラ・バーツ大佐の行動に不審を感じた部隊が多かったことだ。
通信は遮断していても噂は流れてくる。
航宙部隊の中でもドラギニス軍が攻めてきているという噂は流れており、それに対して何も対応しないザイラ・バーツ大佐に不信感を抱いていた。
それでも中にはザイラ・バーツ大佐の言葉を信じて疑わない部隊もいる。
そういう部隊は実力行使しかない。
今日はその部隊の1つで、そして約束していた空港を解放する日だった。
空港近くに陣をかまえ、全員が俺の指示を待っていた。
作戦は既に開始されており、各小隊が配置についている。
「クリフト隊長。突入部隊の準備が整いました」
報告に来たのは俺の副官、ジェラート少尉だ。
「ご苦労。やはり投降はしないか?」
「はい。こちらの呼びかけにも応答がありません。完全に立て籠もるようです」
「無血開城とはいかないか……」
俺たちが逆賊扱いされ、指示に従わないようにとザイラ・バーツ大佐から通達がだされた。
こちらも今の現状を説明し、ドラギニス軍が攻めてくると伝えたところ一蹴された。
通信が遮断され情報統制が取られている今、正確な情報が入らない。
だからこちらの話しは嘘だと思われ、上官であるザイラ・バーツ大佐の指示に従っている。
こうなっては戦闘は避けられない。
戦うしかなくなった。
「彼女との約束で戦闘はしないでと言われたが無理だったか……こちらの部隊はどうだ?」
「我々地上部隊は既にザイラ・バーツ大佐の事は疑っておりましたので、さほど混乱はないかと。ただ、航宙部隊は騙されているので、このまま戦うことに忌避感を持っている兵士が大勢います。戦いたくないというのが本音です」
「向こうに罪はないからな。だが、空港を開放しないことには市民を逃がすことはできない。もうじきドラギニス軍が攻めてくる。その前に1人でも多くの市民を逃がすのも我々の仕事だ」
「……はい」
返事に力がない。ジェラート少尉もそのうちの1人ということだ。
「みんなも思うところがあると思うが、これも市民のため。全責任は俺にある! お前達が気に病む必要は無い」
そうは言っても実際に戦う兵士は簡単に割り切ることはできない。
昨日まで同じ釜の飯を食べてた仲間を殺すのだから。
重い空気が漂うなか、俺は指示を出した。
「先ずは第1格納庫から抑えよう。第2小隊、突入開始」
指示を受け、突入部隊がフェンスを破り突入する。
格納庫付近には既に航宙部隊が待機しており、戦闘状態に入った。
「人数はこちらの方が有利だ。焦らず、向こうが消耗するのを待つがよい。無闇に突っ込む必要はない」
空港を守っているのは1部隊のみ。
それに比べ我々は4部隊ほど用意した。人数ではこっちが圧倒的有利だ。だが向こうは航宙部隊とあって戦闘機を持っている。それを出されるとどうなるか分からない。
そのために、先に格納庫を抑え使えないようにする。
「砲撃部隊は?」
「待機しています」
「戦闘機が出撃するようなら攻撃せよ。できれば滑走路は壊したくないのだが……」
この先、空港を開放しても滑走路が使えなければ意味がない。
被害は最小限に抑えるつもりだ。
「隊長、向こうが戦闘ロボットを出してきました」
戦闘ロボットとは武装した無人ロボットで、外観は戦車で砲塔の代わりに人型の上半身が付いている。両腕は連射式レーザー銃を装備し、背中にシールドバック装着、頭の部分はカメラとなっている。
艦内制圧用に作られたため、背丈は人の身長ほどしか無い。
「出してきたか。人数が少ないのだ、当然だな。ECMを展開」
「了解しました」
ECMとは妨害電波のことだ。
戦闘ロボットは遠隔操作で動かしているので妨害電波で信号が途絶えると機能を停止する。当然、そういった兵器があることは事前に知っていたので、こちらもそれなりの対策はしてあった。
しばらくして報告が次々と上がってくる。
特に大きな問題もなく作戦が進行している。
こちらの損害も少ないようだ。
「戦闘ロボットの無力化に成功しました。格納庫内に突入します」
部下が報告にきた。
簡易で作られた作戦室のモニターには兵士が格納庫に入っていく姿が映し出されていた。
この映像は兵士のヘルメットに付けられた小型カメラから送られてくるもので、状況が一目で分かるようになっている。
それ以外にも兵士の生死や健康状態なども送られてくるようになっていた。
「引き続き降伏勧告を続けろ。これ以上の抵抗は無意味だと」
「了解しました」
部下が伝令を持って走って行った。
航宙部隊と連絡を取っているのは交渉班だ。
別な場所で作業をしているので連絡は部下がすることになっている。
「航宙部隊では地上部隊の相手になりませんね」
俺の横で立ってミニターを見ていたジェラート少尉が、眉を顰めて話している。
モニターにはレーザー銃で撃たれている相手の兵士が映っていた。
シールドで直撃は避けているが、それも長く続かない感じで点滅を繰り返していた。
「それはそうだ。向こうは対宙戦が仕事だ。地上部隊と違って対人戦が仕事ではない。比べるまでもないだろ」
航宙部隊は戦闘機や戦闘艦を扱うのが専門だ。地上部隊と違い人を相手に戦うのとは違う。銃撃戦になった時に勝てないのは仕方が無いだろう。畑違いというやつだ。
結果は最初から見えていたので投降を呼びかけたのだが……。
「降伏しませんね。何か策があるのでしょうか?」
「事前調査で巡洋艦は停泊していなかった。対抗する手段はないはずだが……」
「隊長、報告があります!」
部下が走って入ってきた。
表情を見ると良くない報告なのはわかる。かなり焦っていた。
「設置したレーダーから戦闘機の反応が多数あり。こちらに向かっております」
「増援を寄越したか。しかし、この状況で戦闘機? この陣地を狙っているのか?」
降伏しないのはこれを待っていたのか。
「砲撃部隊を出させろ。対空ミサイルを装備、近づく前に撃ち落とせ」
一筋縄ではいかないか。
戦闘機相手ではこちらの分が悪い。
撤退も視野に入れないといけなくなった。
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