第86話 クリフト・ベルマン大尉②
「やってはみるが、命令は上官であるザイラ・バーツ大佐の方が上だ。俺よりもあっちが優先されるだろう。こちらの指示に従うかは分からないぞ」
軍人である以上は上官の命令は絶対だ。奴がどこまで指示を出しているかによるが、俺を謀反人として通達していれば望みは薄いかもしれない。
「どのみち貴方たちが戦わなくてもドラギニス軍が攻めてくれば終わりでしょう。空港は真っ先に狙われますからね。彼らに残された道は我々と共に戦うしかないのです」
確かにミチェイエル殿の言うとおりだ。
ここで味方同士で争っても向こうが喜ぶだけだ。
何か手を考えた方が良いかも知れない。
「どれだけの猶予がある?」
「ドラギニス軍の現在地点は第3惑星の近くと聞いています。そんなに時間はないと思って下さい」
「第3惑星には常駐している部隊がいるはずだが」
「星系軍も今そこに集結しているそうです。ですが、戦力差があり過ぎて大した時間稼ぎにもならないでしょう。壊滅するのも時間の問題ではないでしょうか」
「この惑星には集結しないのだな?」
「本部と通信ができないので独自で動いているそうです。それにこちらに戻ってきても謀叛を起こした部隊が待ち構えています。戦闘は避けられません。どのみち彼らに逃げ道は無いのです」
冷たい言い方だが確かにその通りだな。
こちらから通信できればその事を伝え、無謀な戦闘は避けるようにと助言できるのだが、通信設備が抑えられている今、こちらからは何もできない。
指をくわえて黙って見ているしか無いのだ。
「やはり通信設備を何とかしなければ……」
「そうですね。できれば破壊されないように奪えれば良いのですが……。守っているのはザイラ・バーツ大佐の部隊ですからね。そう簡単にはいかないでしょう」
「俺の部隊を回そうか?」
「こちらは戦闘を避けられません。貴方は星系軍同士で戦うのは嫌なのでしょ? ならこちらは私たちに任せなさい。貴方は空港の方を抑えて。なるべくなら戦闘は避けるようにお願いしますね。そちらも使えなくなると市民が困りますから」
そう言われたら任せるしかない。
俺たちも仲間同士で戦うのは本意ではないのでな。
「市民にこの事は伝わっているのか?」
「情報統制がされていて何も伝わっていないわ。でも、一部の人は知っているわね。惑星内全域で通信ができないんですもの、不審に思う人はいるわ。それを誰が行っているかまでは知られていないようですけど」
「知らせた方が良いか? 逃げるにしても準備がいるだろ?」
「そうね、それが悩みどころなんですけど……知らせるとパニックになるわよね。空港に人が押し寄せるわ。それだと貴方たちも戦いづらいでしょ? しばらくは伏せておきましょう。それとこの事は内緒にしましょう。市民が騒ぎ出し、軍に詰め寄られても困るものね。貴方たちも動きが取れなくなるでしょ?」
軍が市民を裏切ったと知られたら騒動どころか暴動が起きる。
収拾がつかなくなり戦闘どころではなくなる。
それには了承した。
「市民に知らせるのは空港と通信施設を奪還してからにしましょう。それでは連絡要員を用意するわ。詳しい事はその方と話して決めて頂戴。貴方と分かるメモを持たせて行かせれば大丈夫でしょう。それと軍の無線は使用しないで下さい。こちらの動きが筒抜けになるので」
「盗聴されているということか?」
「司令部を抑えられているのです。無線は全て向こうにも届きます。ですので無線は全て駄目だと思って行動してください。それに私たちの関係を知られると貴方も困るでしょ? ですので連絡をするときは人を寄越して下さい。こちらも人を出しますので」
「確かにそうだな。了解した」
はっきり言えば、俺たちの行動は軍を裏切っているようなものだ。
レジスタンスと手を結んでいるのだから知られたら軍法会議は確実。一生監獄で過ごすことになる。それだけは遠慮したい。
「それなら先に司令部を叩くか?」
「司令部は例の戦艦に守らせているそうなので近づくことはできません。貴方たちの部隊だけでは無理でしょう。死にに行くようなものなのでお勧めはしません」
「あの戦艦が完成したのか?」
「ほぼ完成しているそうよ。だからこちらも戦艦を用意しないと勝てないでしょう」
「そうか……」
そうなると厄介だ。
地上部隊だけの力で何とかできるというレベルではない。
司令部を落とせば早いと思ったが、諦めるしか無いか。
「わかった。その作戦で行こうか。俺たちは空港を開放する。それで良いか?」
「我々は通信施設を奪う。終わったらまたここで会いましょう」
最後は握手をして別れた。
この後は連絡要員を紹介され、俺が書いた手紙を託した。
後は向こうから折り返し連絡が入るのを待つだけだ。
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