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第84話 その後の3人


モニターの女性士官の映像は消え、今は宙域マップが表示されている。

艦長室に残った3人は冷めたお茶を飲みながら今後の対応について話し合っていた。


「はあ、まさか古代船にAIがあるとは思いもしなかったわ」


エミリーは疲れた表情でソファーの肘掛けにもたれかかっていた。

その隣でロズルトは楽しそうにしてお茶を啜っている。

対照的な2人にグランバーは苦笑を浮かべていた。


「何をやっていたか分かったが、さて、どうするか……」


グランバーも考えあぐねていた。

このことをクルーに話した方が良いか黙っていたほうが良いのか、どちらもメリットがありデメリットもある。

彼のスパイ容疑は晴れるが、その代わり、彼の身を守らなければならない。この艦に指示を出せるのは彼だけだ。何かあったときは困ることになる。

直ぐに代わりの艦長が指名できればよいが、この船のAIが自己判断で選んでいるとなると難しい。それに誰を選ぶか分からないし選ばない可能性もある。

はっきり言って謎が多いので、あのAIのことは信用できない。


「しかし自律型AIか。やっかいだな。どうする? 博士と相談して船から切り離すか。自由にさせておくと何をするかわからないぞ」


自律型AIは何かと問題を起こして人に迷惑を掛ける。

ロズルトが懸念するのも頷ける。


「ロズルトの言うことも分かるが、AIを切り離してあの性能を出せるか? 無理なら付けておくほかない。取りあえずはこの作戦が終わるまでは」


外せるのであれば俺も外したい。

AIに任せるというのは何かと不安が付き纏う。特に暴走して勝手に戦闘でも始められたら溜まったものではない。

人が管理できない物は使うべきでは無いと俺は思っている。


「確かに前の戦闘では助かったが、でもなあ……」


ロズルトが渋るのはやはりAIが起こした問題が大きいからだ。

かれらは保身の為なら戦闘も辞さない。


遙か昔に起きた人間とアンドロイドの戦争。

アンドロイドをロボットのように扱う人間に対して宣戦布告をしたのだ。

それからは地獄のような戦闘が繰り広げられたと聞いている。

人間と違い疲れを知らないアンドロイドは昼夜かまわず戦闘を仕掛け、AIで動く物は全てクラッキングされ配下にされたという。そして電子戦を仕掛けられ、ネットワークは壊滅、通信もできなくなった。

何世代も前の古い兵器で対応しないといけなくなり、手こずったという話しだ。

最後はアンドロイド側と協定を結び、今の形に落ち着いたが、それを破るとどうなるか。

だから自律型AIのアンドロイドは扱いが難しく、使う人が少ない

この船も自律型AIが使われているとなると簡単にはいかないが、だが、人権が与えられているのは人型のみなので破壊しても問題はない。


「彼が乗っている間は大丈夫だろう。問題は艦を下りたときだ。どこまで我々の指示に従ってくれるか。やはり何もしないとなるとAIは外さないといけないだろう」

「そうなるとジェネレーターの出力が上がらず使い物にならない。それを考えると彼にはレジスタンスに入って貰うのが一番だが……」


俺は頷いた。


「彼からしてみれば不本意ではあるが、それは仕方がない。前任者が死なない限り変更できないのであれば、諦めて貰うしかあるまい」


レジスタンスに入る気は無いと言っていたが、これはもう個人の問題ではない。入って貰うしか無いのだ。もし、それでも断るとなると面倒なことになる。我々の手には負えなくなるだろう。


「入らないと危険なのかしら?」

「俺たちは大丈夫だが他の連中が何て言うか。それによっては殺される危険もある」


殺したところで、あのAIが我々の指示に従うとは思えないが。


「そこまでしてこの戦艦が欲しいのかしらね?」

「戦闘データを見れば欲しがるだろう。特にこのジェネレーターの数値は異常だしな。この先、星系軍と戦うのであれば手放せないだろう」


普通のジェネレーターの倍以上の出力をだしている。

これを見れば手放すという選択肢はない。


「これが普通の戦艦なら問題なかったのになあ」

「そうだな。それならAIボックスを換えるだけで終わっている。ここまで難しくなることは無かったはずだ」

「でも、古代船だから私たちは助かったのよ。普通の船ならあの戦闘で沈んでいたわ」


それも確かに一理ある。

普通の戦艦ならあの攻撃に耐えられない。そういった意味では古代船で良かったとも言える。


「困ったものだ。面倒事が増えた感じだな。こんなのであれば知らなかった方が良かったよ」

「そう言うな、ロズルト。艦の責任者として彼が何をやっているか突き止める必要があった。だから調べたのだ。結果こうなったが、彼が乗船している間はこの艦は大丈夫だ。それだけでも安心できるだろ?」

「それでジェネレーター問題が解決してくれるのであればそうだが、しかし、あのAIがある限り安心はできないな。何をしでかすかわからないし」

「そこは彼にコントロールして貰うしかない。彼から指示を出させれば余計なことはしないだろう。それに今まで我々の行動に否を唱えてきたことはない。基本はこちらの行動に関して不干渉のようだし、今まで通りでやっていくしかない。まぁ、色々と言いたいこともあるだろうが、今は我慢してくれ。この作戦が終わったら考えるとしよう」


エミリーは頷いたが、ロズルトは渋々といった感じで頷いた。

古代船にAIがあったことに驚いたが、それでも俺たちのやることは変わらない。

後は無事に領都に着くだけだ。


「ところでこの事をクルーに知らせるのか?」


俺たちが彼を疑っていたことはブリッジにいた連中は知っている。

だから説明はしないといけないだろうが、全て話す必要は無いだろう。

余計な仕事が増えるだけだ。


「話さないわけにはいかないが、AIのことは内緒にしたいな」

「それは難しいな。AIのことを省けば殆ど話せることは無いぞ」


確かにそうなんだが……。


「ねえ、こういうのはどう? 彼は私たちも知らない極秘任務を与えられていた。だから内緒に行動していた。こんなのは?」

「スパイムービーの見過ぎだ」


苦笑しながらロズルトが突っ込むが、一考する余地はあるかと思った。


「だが、極秘任務とは何だ? 変なことは言えんぞ」

「極秘は極秘よ。誰にも教えられないわ。だからそれで誤魔化すのよ。だから我々も知らないことにしないといけないわね」


楽しそうに話しているが悪くはない案だ。


「リーダーからということにするのか?」

「それが一番文句がこないだろう」

「では、博士はどうするのだ? 博士にも内緒にしておくのか?」

「博士か……」


教えても良いが黙っていることはできないだろう。

やらかすに決まっている。

そう考えると話さない方が賢明か。


「博士には申し訳ないが黙っていよう。俺たちが黙っていれば彼は安全だし、対策も立てなくて済む。作戦が終わるまではこのままで。彼について聞かれたら、ミチェイエルから極秘に頼まれた任務で、影で我々をサポートしていたと答えておいてくれ。詳しい事は話せないと。以上だ。他に何かあるか?」

「そうねえ……ねえ、このことはミチェイエル様も知っていたのかしら? だから彼に船に乗るように要請したのかしら?」

「そういえば彼が必要だと言ってな。もしかしたらわかっていたのかもしれないな。彼が居ないと動かないことが」


あの人は昔から勘が鋭い人だ。何かあると思って乗せたのだろう。

そういうことは一言言って貰いたいものだ。


話しはこれで終わり、2人は自室へ戻った。

俺はこのことを報告書に書かなければならない。

どこまで書けば良いか悩むが、この事はミチェイエルに任せて全てを書くことにした。

この文書をどう扱うかは彼女に任せよう。

握りつぶしか公表するかはミチェイエル次第だ。



ご覧いただきありがとうございます。


……ストックが無くなりました。

毎日アップできるように頑張っていますが、追い付かない現状です。

更新頻度は下がると思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

ついでに評価もしてくれると嬉しいです。

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