第78話 ダンジョンコアとの会合①
艦長室はブリッジの近くにある。
てっきり艦長はロズルトだから、ロズルトが使っているかと思いきや彼は断ったらしい。自分は代理だからと。
というか、彼は広い部屋よりも狭い部屋の方が落ち着くらしく、それで遠慮したみたいだ。俺も広いと落ち着かないのでその気持ちはわかる。とはいえ、狭すぎるのも息が詰まる。
今の部屋は少々狭いので居心地が悪い。でも、あれが標準みたいなので文句は言えない。みんなあれで過ごしているのだから。
エミリーがドアをノックして返事があるとすぐに部屋へ入った。
艦長室は以外と質素で、必要最低限の物しか置いていなかった。
応接セットに仕事用のデスク、それとパソコンとモニター。他にミニキッチンやシャワー室にトイレがあるのは艦長特権か?
広さは俺の個室の4倍以上あり、他にもドアがあるのでそっちが寝室になっているのかもしれない。
「彼を連れて来たわよ」
「ご苦労。ソファーに座ってくれ」
仕事中だったのか、手元にある書類から視線を外さず答えた。
「その前に私はロズルトを呼んでくるわ。彼にも話した方がよいでしょ。重要な話しだから」
そう言ってすぐに部屋を出て行った。
残された俺はひとりでソファーに座り、全員が揃うまで待つことになった。
その間は無言で部屋の空気が重い。
仲が良いわけでも無いので話す話題も無い。こういう時にコミュ障は不便だ。
ただ、ゆっくりと考える時間はできたので、この後をどうするか熟考した。
話す内容は俺が艦長になていること、AIがあること、それだけだ。
ダンジョンコアについては秘匿する。
これは俺の身を守るのに必要なことで、古代船を起動できるのが俺だけだと知られたらやっかいだからだ。毎日勧誘が来るだろうし、下手すれば誘拐まであり得る。そういう状況だけは避けたい。
それに魔力で動くことも話せない。
それが知れ渡れば魔力を持っている人間が集められ、実験が行われるだろう。それだけなら良いが、魔力を持っている人間を無理矢理攫ってくる危険もある。
混乱を招く可能性が高い。
それに古代船の力は脅威だ。直ぐに戦争の道具に利用するに決まっている。
そういった事も避けたい。
彼らはそういう目的で船になったのではないのでね。
それから少ししてロズルトが入った来たが、ニヤニヤしながら入ってきたのである程度話しを聞いてきたようだ。
どこか面白がっている感じを受けるが、ロズルトはそういう奴なので不快になることはなかった。
エミリーは部屋に入るとそのままキッチンへ。
話しが長くなると思ってお茶でも用意するのだろう。気が利く女性は違うね。モテるわけだ。
そして全員にお茶が置かれると、ようやくグランバーが席を立ち俺の対面に腰を下ろした。
「さて、メンバーも集まったことだし、詳しく説明して貰おうか」
それだけ言って腕を組んで俺を見つめる。教師に説教されているみたいだ。
他の2人はどちらかというと興味津々というか、何か面白いことでも期待しているような目で俺を見ている。
普段から付き合いがあるかないかの差だろう。
グランバーが俺の事を警戒しているのは仕方がないことかも知れない。
「まずはそうだな、どこから話すか……この船にAIがあるのは知っているか?」
「AIってあれだろ、博士たちが付けている制御用AIボックス。そのことだろ?」
ロズルトが答えるがグランバーは黙って聞いている。聞くことに徹するようだ。
エミリーには話してあるので何のことかは分かっている。
だから質問はなかった。
「普通はそう思うが、そっちでは無い。古代船に付いている元のAIの方だ」
「ん?」
やはり知らないようで、首を小さく傾げた。
「この船には元々AIが付いていて、そのAIの艦長が俺になっている、ということだ。それであのブリッジの映像を加工したのはこの船のAIで、俺としてはできればその事は黙っておきたかったのであの映像を作って誤魔化した。指示を出している姿は見られたくはなかったのでね」
簡単ではあるが話すことは話した。というかこれ以上は話せない。
これで納得してくれたら楽だが、そうはいかないだろう。
グランバーの表情は険しいままだし、ロズルトは何度も首を傾げている。
それだけでは納得できないということだ。
「ちょっと待ってくれ。艦長は俺では無いのか?」
「違う。俺が艦長になっている。信じられないと思うが、俺の指示で無いと動かないはずだ。特にジェネレーター関係は」
「は? 頭が追い付かないのだが。それじゃ、今まで俺が指示を出していたあれは?」
「さあ?」
そう言って肩をすくめる。
実のところ、この船に取り付けられたAIなのか、ダンジョンコアが化けているAIのか、俺には分からない。
AIボックスのデータを使って俺に話しかけていたので容姿は2人とも同じ。
だから、どっちがどっちと聞かれても分かるはずがない。
そう答えるしか無かった。
「さあって、お前、ふざけているのか?」
ロズルトが呆れ返っている。
そうなるよね。俺もわからないのだから。
「どうもこの船のAIはあの女性士官のデータをコピーしたようで、その容姿を真似ている。だからどっちがどっちか俺も見分けが付かない。本人に確認しないと」
そう言って肩を竦めてみせると、みんなが黙ってしまった。
AIがそういう事をするとは思っていないからだ。
「では、その確認をしてくれるか」
おもむろにグランバーが口を開く。
俺もその方が早いが余計なことを言いそうでちょっと怖い。
できれば、コア自身の事は黙っていて欲しいがその願いが通じるだろうか。
できれば通じて欲しい。
ここに来る前に事前打ち合わせでもしておけば良かったが、1人ではなかったのでできなかった。
後は、どこまで機転を利かせてくれるか……。
机にあるモニターをこちらに向けて呼びかけてみた。
「おい、AI、聞こえるか?」
一瞬でモニターの電源が入り、女性士官が映った。
『……何でしょうか、マスター』
監視カメラがこの部屋にも付いていたから見ていると思っていたが、案の定か。
それにはさすがの全員が目を剥いて驚いていた。
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