第77話 エミリーの追及②
「はぁ、そもそも何でそんなこと調べているのだ? その映像が本物でも偽物でもどちらでも良いのではないのか? 調べたって何もでないぞ」
なぜ、急に調べ始めたのか気になった。
何もなければ映像など調べるはずがないのだから。
「博士がね、警備システムに侵入した形跡がある、と言いだしたの。それで調べていったらシューイチに辿り着いたというわけ」
「は?」
意味が分からない。
なので詳しく話を聞くと、戦闘終了後、警備システムに侵入した人物がいるらしく、それを調べていったらその時間部屋から出たのは俺だけだとわかった。
それで映像を調べたら怪しかったので、何かしているのではないかと疑われた。
ただ、何をしているのか分からなかったので、エミリーが聞きに来たそうだ。
てっきりコアに魔力を注いでいる姿まで映っているかと思ったが、そうでは無いらしい。
「それで偽の映像まで作って何をしていたの? それと、あの映像を作ったのは誰? シューイチに作れないぐらい分かっているからね」
証拠はあるのよ、みたいに言わないで欲しいね。
でも、一緒に居れば俺がパソコンを扱えなことぐらい知っている。
仲間がいると思われているのだ。
「別に悪いことをしていたわけではない。みんなのために働いていたんだけどね」
全てを話すと後々が面倒だし、だからといって何も話さないのも怪しまれる。
さて、どこまで話せば良いか悩むね。
「はあ、わかった。正直に話と、この船の艦長はロズルトではないんだよ。俺になっている。だからAIに命令を出しているところを見られたくなくてね。それで黙っていたんだよ」
話せるところは話して、ダンジョンコアについてはAIということにして秘匿することにした。
あれを見せるとまた面倒なことになるのは明白。
博士が分解とかしかねないのでね。
「……はあ、シューイチ。嘘をつくならもっとまともな嘘をつきなさい。そんな嘘、誰も信用しないわよ、そんなこと」
溜息をつかれ、やれやれ、という感じで呆れ返っている。
真面目に話しているのに冗談と思われてしまった。
冗談では無いんだけどねえ。
「いや、嘘では無いよ。本当のことを話しているんだが」
俺が真面目な顔で言うと「えっ?」と言ってキョトンとしている。
まぁ、誰でもそうなるよね。俺が艦長だなんて誰も思わないし、現に今はロズルトが指示を出している。普通では考えられないことだから。
艦長以外の命令を聞くときは、その権限を譲渡しなければならない。
それが決まりらしい。
ようは命令できるのは1人と言うことだ。でないと誰の命令にも従ってしまうので簡単に船が乗っ取られてしまう危険がある。俺たちが船を強奪したように。
そういうのがあって、俺が艦長という言葉は信用できなかったのだ。
「艦長はロズルトではなく、俺になっているということだ」
もう一度言い直すと、目をぱちくりして慌て始めた。
「ちょ、ちょっと待って。冗談では無いってことよね?」
「こんなこと冗談で言うわけないだろ」
「……」
俺を見てフリーズしている。
ちょっと刺激が強すぎたかな。でも、話せるとしたらこんなところしかない。
それ以上になると、コアの説明なしでは無理だから。
「……いつから艦長になっているの?」
「最初から。この船に乗ってからずっと艦長になっている」
正確にはダンジョンコアに魔力を与えてからだけど、そんなことは言えないので黙っていることにした。
「でも、それだとおかしいわ。AIボックスは新しいのに変えてあるのよ。その時に艦長の設定も消えているわ。シューイチが艦長なわけないでしょ」
艦長設定は制御AIボックスに書き込まれている。新しいAIボックスと交換すれば設定はなくなり艦長ではなくなる。そう言っているのだ。
「それはそちらで用意したAIボックスのことだろ。俺が言っているのは最初からある古代船のAIのことだ」
「えっ? ちょ、ちょっと待って! 古代船にAIがあるの!?」
「あれ、博士から聞いていないのか?」
「聞いていないわよ! そもそも古代船にAIが存在していたこと自体が聞いたことがないわ。そういった装置も見つかっていないし……」
ダンジョンコアがそのAIなんだが、あれをAIと思う人はいないだろう。
見た目は只の綺麗な石にしか見えないし、それに解体しても何も出ないはず。
前に破壊し時はただの石だったからね。
「まぁ、そういうことだから、俺が艦長になっているというわけだ」
「はぁ、頭が痛いわ。何て説明すればよいか……」
額に手を当て天を仰いでいた。
「この事を知っているのは?」
「ブリッジにいる全員よ。だから隠すことはできないわ」
エミリー1人なら何とかなるかと思ったが、そうもいかないみたいだ。
「ねえ、どうして艦長になっているの?」
「さあ、俺にも知らない。いつの間にか艦長になっていた、というだけだ」
「いつの間にかって、そんなことあるわけ無いでしょ。何かしたから艦長になったんでしょ?」
おっと鋭いな。
女の直感という奴か。
でもコアの事は話せないからとぼけるしかない。
「本当に知らないんだ。ただAIから突然マスターと呼ばれてね。それで困っていたんだよ。……本当だよ! 嘘じゃ無いよ!」
ジーと睨まれている。思わず目を逸らしてしまった。
ちょっと白々しかったかな。でも理由が作れないんだよね。下手なことを言って検証された時に誤魔化しが効かない。嘘だと直ぐにバレてしまうからね。
こう言うしかなかった。
「ブリッジに行ってみんなに説明してくれる? 私が言うよりも良いと思うんだけど。身の潔白になるし」
「遠慮したいんだけど……まぁ、無理だよね?」
「そうね。みんな知っていることだし、今言うのと後で言うのも同じだと思うの。それなら早い方が良いと思うわよ。みんな疑っているからね」
きちんとした説明が無いとスパイと思われるらしい。
不審な行動していれば、そう思われてもおかしくはないか。
「うーん、やはりみんなの前で話すのはやめるよ。話すのであれば、グランバーとロズルトだけにしておきたい。変に話して艦内が混乱しても困るし、しばらくの間は内緒にしておいた方が良いだろう」
俺が艦長だと言ってもどれだけの人が信用するか。
きっと混乱するだけだろう。
「そう言われるとそうね。取りあえずは2人に相談してからでも良いかな。内容が内容だし、信じて貰えるか不明だし。グランバーに判断して貰ってからでも遅くは無いかもしれないわね」
細かなことはその時に話すことにして、グランバーがいる艦長室へ向かうことになった。
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書くのが遅くて申し訳ございません。
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