第72話 疑惑②
クルーの表情を見ると、みんなが暗い顔をしていた。
ジェネレーターが動かなければどうなるか分かっているからだ。
「ああ、ちょっといいかな、気になることがあってな」
俺がどうするか迷っていると、ロズルトが声を掛けてきた。
奴にしては珍しく難しい表情を浮かべている。
「どうした、ロズルト?」
「さっきシューイチが来ただろ。それがちょっと気になってな」
「ん? どいうことだ?」
「来たのは良いが、艦が動かないことについて何も聞かれなかった。普通は、後どれぐらいで動きそうか、とか、ジェネレーターの状態はどうだ、とか、艦の心配をするものだが、そういった言葉が一つも無かった。それが気になってな」
「ふむ……」
サブジェネレーターが止まった理由を聞きに来たが、それ以外は聞かれていない。
彼は動かないことに対して心配ではないということか?
前々から彼の行動が気になっていたのだ
前回の戦闘時もブリッジに来ていたし、心配だというのは分かるが、それだけではない気がする。
だが、ブリッジに来て何かしているわけでも無い。状況を確認しているだけだ。
それが気になるといえばそうなのだが……。
「すまんがエミリー。前回調べた監視カメラの映像を見せてくれるか。もう少し調べたい」
「それは構わないけど……」
クルーが不思議そうな顔で俺を見てるが、説明の仕様が無い。
ただ感で、そう思っているだけだから。
「彼が来たのは戦闘中だったな」
その時のブリッジの様子を映像で確認する。
確かに彼は来ていたが、何もせず、ただ立ってメインモニターを見詰めている。一言も発していない。
そして戦闘が終わるとロズルトに近寄り話しかけていた。
「ずっと見ているだけか……」
艦が沈むか沈まないかの瀬戸際に、何も言わずに立っているだけというのは変な気がする。
少しは慌てたり、焦ったりする素振りがあっても良いものだが……。
彼は本当にここにいたのか?
そんな気さえしてきた。
「この映像を細かく分析できるか?」
「できるけど、どうして?」
「細工が無いか調べるだけだ」
「細工って……まさか例の整備システムのこと?」
話が分からない人の為に、誰かが警備システムに侵入したことを説明した。
「侵入して、今の映像に手を加えたということか?」
ロズルトは察しが良い。俺の言いたいことを全て理解した。
「その可能性はある」
「でも、何のためにだ?」
「何かをしているのを隠すためだ。そのために映像を加工し、居るように見せかけたのだろう」
だが、何をしているかは分からない。
他の映像を調べたが、彼が映っている映像はこれしか無かったのだ。
「でも、グランバー。それだとおかしいわ。だって戦闘終了直後に警備システムに入ったのでしょ? 彼にそんな時間は無いわ。だってブリッジに居てロズルトと話していたのだから」
侵入した時刻を確認すると、彼がブリッジを後にした直後になっている。
確かにこの短時間では彼には無理だ。
それに部屋へ真っ直ぐ戻っている。警備システムに侵入している時間は無い。
「彼ができなくても他の者がすれば良い」
共犯者がいれば済むこと。
そいつがすれば良いのだから。
「他の人って、彼に手を貸している人物がいるということ? シューイチにそんなことができる友人がいたかしら? そもそも仲が良い友人自体がいない気がするけど……」
指名手配されているので、殆ど家から出ない生活をしている。だから友人もいないという話だが、会わなくても連絡を取る方法はある。メールでも良いわけだから。
「結果が出たわよ。98パーセントで加工されていないわ。だから彼では無いわね」
この映像が加工されていない?
どうみてもおかしいとしか思えなかった。
「分析結果に間違いはないのか?」
「疑うの? でも艦のAIを使っているから間違いは無いわ。人がやるよりも正確のはずよ」
「ふむ……」
俺の考え過ぎか?
だが、加工されいないのであれば、彼はずっとブリッジにいたことになる。
怪しい所はないということだ。
「怪しいと思ったのだが……」
結果から見ればアリバイを証明したようなものだな。
彼は無関係だと。
「でも、おかしいな……」
俺が諦めかけていると、そう言ってロズルトが首を傾げる。
何か思い当たる節でもあるようだ。
「どうした?」
「あの時シューイチは俺に『戦闘は終わったのか?』と尋ねたぞ。ブリッジにずっと居ればそんなことは聞かないだろ?」
「!?」
なるほど、違和感の正体はこれか。
俺が彼に気が付いたときは戦闘が終わった後だった。そう、終わった後だったのだ。
それまではそこに居なかった。別の場所に居たのだ。
だから後から来て尋ねたのだ。「戦闘は終わったのか?」と。
「そういうことか……」
そうなると、AIの分析結果が嘘になる。細工がされているということだ。
しかし、どうしてAIが?
いや、AIを誤魔化せる程の技術があるということか……。
「ロズルトの聞き間違いじゃないの? もう歳だから」
「おいおい、俺を耳が遠い爺さんみたいに言うな。確かに言っていたぞ。戦闘は終わったのかと」
「……」
どういうことか分からず、みんなが困惑している。
戦闘を見ていなかった、ということは、彼はブリッジに居なかった、ということだ。
では、何をしていたのか?
それが重要になってくるが、監視カメラの映像には何も映っていなかった。
ということは、細工した仲間がいるということだ。しかもAIを誤魔化すほどの技術を持った仲間が。
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