第71話 疑惑①
レーダーが帝国軍を捕らえてから1時間が経過した。
艦内の気温が徐々に下がり息が白くなっている。
何人かは体を小さくさせて震えていた。
「酸素濃度は?」
「かなり低くなってきたわ。それよりも艦内の気温が不味いわ。もう0度になるわよ」
空調が止まり、温風が出なくなったからだ。
凍死するほどの気温ではないが、待機しているクルーにはキツいかも知れない。
サブジェネレーターを起動させる必要が出てきた。
「帝国軍はもう行ったと思うか?」
白い息を吐きながら、近くで平気な顔しているロズルトに尋ねた。
彼は寒さに強いのか服装も普段と変わらなかった。
他のクルーは何枚も重ね着しているのに。
俺もジャンパーを羽織っているが、それでもこの寒さは辛かった。
「1時間経っても外の景色は変化はない。艦の光りも確認できなかったし、こっちの方に来なかったかもしれいないな。もう大丈夫だと思うが」
「ふむ……」
レーダーが使えれば早いが、そうなるとジェネレーターを起動させる必要があった。レーダーはエネルギーを喰う。バッテリーだけで賄える量では無い。
「博士。サブジェネレーターを起動しよう。そこからレーダーだけでも使えるようにしてくれ」
「もう良いのか? 近くに帝国軍が居るかもしれんぞ」
「あれから時間も経っているし大丈夫だろう。よれよりもこれ以上寒くなるとクルーの体調に影響する。風邪を引く前に空調を入れよう」
「了解じゃ」
寒くなって寝れなくなったのか、いつの間にか博士は起きており既に席に座り待機していた。
そしてサブジェネレーターを起動させると、モニターが明るくなり、レーダーだけを起動させた。
「エミリー、艦影はあるか?」
「レーダーに反応なし。帝国軍はいないわね」
「通り過ぎたか。艦内のシステムを全て起動。引き続きレーダーから目を離さないように。博士、メインジェネレーターは起動するか?」
「ちょっと待っておれ。確認する」
サブだけのエネルギーだけでは移動できない。
メインを稼働させないことには。
「艦内放送を頼む。重力制御装置が起動すると物が落ちてくる。怪我をしないように注意喚起を」
「了解」
艦内の照明が点灯し、宙に浮いていたクルーが少しずつ下に降りてくる。
急に重力を掛けると危ないので、少しづつ重力を掛けていった。
「……やはり駄目じゃな。起動せん」
キーを叩きながら博士が報告してきた。
「マニュアル操作に切り替えて起動してみよう。エミリー、機関室に連絡を。ジェネレーターの電源を手動で入れてくれと」
「わかったわ」
連絡を取っている間に全ての計器をチェックする。
空調も稼働しブリッジの室温も上がってきた。酸素も濃度も正常値まで下がっている。
どこにも異常は無く、ジェネレーターを除く全てのシステムが正常に稼働した。
「博士。AIが足を引っ張っている可能性は無いのか?」
「ん、どういうことじゃ?」
「こちらの指示は全てAIを通している。だからAIが何かしているのではと疑っているのだ」
「AIがこちらの指示を勝手に変えることは無い。AIは指示されたことだけをやる。そういう風にプログラムされておるからのう。自分の判断で止めるなどありえんわい」
AIに自己判断能力は無いと言うが、どうもそれだけは無い気がする。
古代船というのもあるが、やはり普通の戦艦には思えないのだ。
何というか生きているような……。
こんなことを誰かに話したら頭がおかしいと思われるかもしれないが、今までの出来事を考えるとそう思えてくる。
危なくなるとジェネレーターの出力が勝手に上がるのも、艦が必要だからと判断しているからでは無いかと。
「……やばいな、疲れているのか」
艦が生きているなど、殆ど妄想の域に近い。この任務が終わったら、しばらくは休んだ方が良いかもしれない。
「グランバー。機関室からだけど電源が入らないそうよ」
「やはりか……博士、故障の可能性は?」
「無い、とは言い切れんのう。古代船のジェネレーターは謎に満ちておる。整備できない所も多いのじゃ。そこが壊れるとお手上げじゃ。我々の手では直せんよ」
ジェネレーターの中身はブラックボックスになってり、持っている部材で修理はできないらしい。
壊れたら終わりと言うことだ。
「お手上げか……」
「ジェネレーターが動かないことにはどうしようも無いわね……救助を呼ぶ? それぐらいしかできないけどね」
冗談半分でエミリーが言うが、それだと帝国軍に捕まるということだ。スパイ容疑が掛かっているこの状態で捕まった何をされるか。
激しい拷問が待っているだろう。
だが、このままここにいても動かないのであれば、後は死ぬのを待つのみ。
生きるためには止むを得ないかもしれない。
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