第6話 街へ
戦闘機まで戻ると、コクピットから遺体を下ろした。
顔を見るとまだ若い。10代後半の青年といった感じだ。
こんな人が兵士だなんて、かなり危険な世界なのかもしれない。
しかし、他の異世界も似たようなものだったと思いだした。10代前半の子供と言ってもいいような若者が魔物と戦っていた。そして命を落としていた。
どの世界も過酷なのは違いない。
日本みたいな平和な世界は希なのかも知れない。
「ジョニー・ラングス?」
この青年の名前だ。
服を漁ると身分証明書が出てきた。それと財布とカードの束が。
クレジットカードなのか何のカードは不明だが、名前が彫られていた。
「文字が読めるな……」
これも定番の異世界言語のスキルのおかげだろう。会話もできていたし、生活する分には困ることは無さそうだ。
「後は、この世界の常識を身につけないと怪しまれるだろう。お金の価値ぐらいは知らないとな」
そう思い財布の中身を確認すると、硬貨と紙幣が何枚あった。
硬貨は金貨が1枚、銀貨が5枚、銅貨が8枚。どれもどこかの建物が彫られているが、さっぱりわからない。古代遺跡だろうか? 年季が入っていて傷だらけだった。
紙幣は1000と刻印されているのが4枚、5000が1枚、10000が5枚と結構な枚数があった。日本円にすれば59000円ということか。こちらは誰かの顔が描かれている。この国の国王か、もしくは偉人とか。
物価が分からないので何とも言えないが、当座の資金は大丈夫そうだ。直ぐに職を探さずにすむだろう。とはいえ、ゆっくりしている余裕はなさそうだが。
何だか追い剥ぎをしているみたいで気が引けるが、残して置いても放置か、誰かに盗まれるだけ。遺体だってどうなるか分からない。それなら俺が貰っても同じこと。カードも使い道があるかもしれないのでゲットしておく。ただし、使うと危ないかもしれないので、そこら辺は慎重に判断しないといけない。パスワードが必要な場合もあるし、指紋認証とかあったら一発で盗んだ物とバレてしまう。
犯罪者で捕まる訳にはいかないからね。
「さて、地図らしきものはなしか。せめてこの戦闘機が動けば歩かなくて済みそうだが……」
戦闘機を尻目に「はぁ……」溜息をついた。でも、操縦できないので無理か。
「こうなったら街まで歩いて行くしか無いか」
遺体を土魔法で作った穴に埋め、近くの石を積み上げて簡易的なお墓を作った。野ざらしはちょっと気が引けたのでね。それにお金も頂いた?ので、埋葬の作業費ということで許して欲しい。
手を合わせて拝むと、戦闘機が飛んできた方向に向かって歩いて行った。
*****
1時間ほど歩くと白い壁が見えてきた。
それが左右にずっと伸びている。
「そういえばここは軍事施設だっけ。壁に沿って歩けば出られるか?」
飛び越えてもよいのだが、監視カメラが付いているみたいなので止めることにした。
警報が鳴って追いかけられるのも嫌なのでね。
距離を取り、見つからないように移動した。
フェンスに沿って歩いていると、小さな建物が見えてきた。そして警備兵の姿も。
検問所か、もしくはゲートか。
探知魔法を使うと、外に2人、建物の中に4人いることがわかった。
見つからずに外へ出るのは無理そうだ。
だが、俺には魔法という便利なものがある。精神魔法のスリープを唱えた。
外の2人が崩れ落ちるの確認してから建物に近寄った。
中の人たちは……爆睡中。後で怒られないと良いが。
「攻撃するだけが魔法じゃないさ」
スヤスヤと眠っている兵士の横を通り過ぎ、外へ出ることができた。ただ、ここにも監視カメラが付いていたので後でバレるだろう。さすがに機械まで眠らせることはできない。
追いかけてくる前にどこかの街に逃げ込むことにした。
*****
ゲートを抜けると舗装された道が真っ直ぐ伸びていた。
街はというと……まったく見えない。
まぁ、軍事基地の近くに街を作るわけが無いか。標的にされやすいし機密もあるからね。
そうなると、歩いて行くしかないが、文明が進んだ世界なら車の1つや2つ存在するはずだ。もしかするとそれ以上の乗り物が存在しているかも知れない。
だが、この辺りにそのような物はない。もしかしたら検問所の近く乗り物があったかも知れないが、探知魔法では生物の存在しか分からないからね。急いで出てきたことをちょっと後悔した。
「はあ、歩くか。ヒッチハイクでもできれば良いのだが……」
もしかしたら途中で誰かと会うかも知れないが、今は接触しない方が良いだろう。
不可抗力とはいえ兵士を大量虐殺しているのだから指名手配されている可能性が高い。
それに、こんな所を通る人は軍の関係者しかいないだろう。来る途中で見掛けた、なんて言われたら、すぐに追っ手が来るはずだ。人は避けて、見つからないように移動しないと。
「まずは街に行って情報収集が先だな。それからどうするか考えるか」
何も知らないのだから計画の立てようが無い。全ては情報を集めてからだ。