第67話 接近
「どうした?」
当番のダミアンから連絡があり、寝ていたところを起こされた。
時計を見るとあれから6時間が経っている。
報告書を作成してから寝たので、睡眠時間は3時間ほどだ。
疲れは完全に抜けていないが、クルーも同じなので文句は言えなかった。
「レーダーに反応が。帝国軍の艦隊かと」
「わかった。直ぐに行く」
着替えるとブリッジに向かった。
ブリッジに着くとダミアンがレーダーを見ていた。
博士はというと、モニターに向かってブツブツ何か言っている。あれから寝ていないのだろう。目の下には大きなクマができていた。
「帝国軍です。戦艦2、巡洋艦3、その他7といったところですか。こちらを探しているようです」
やはり追い付いてきたか。
だが、もう少し早いかと思ったが以外と遅かった。
何かあったのか?
いや、今はそんなこと考えている場合では無い。対策を考えないと。
「帝国軍との距離は?」
「およそ12万メートルといったところです。正確な距離は小惑星が邪魔でわからないです」
レーダーを見ると一直線に向かっては来ていないので、まだこちらには気が付いていない様子。
さて、どうするか……。
「博士。ジェネレーターは動きそうか?」
「……わからん。起動してみないことには。だが、起動するとこちらの位置がバレるぞ。それでも良ければ起動させるが」
ジェネレーターを起動させれば赤外線センサーに反応してしまう。
今は迂闊に起動しない方が良いということだ。
俺が悩んでいると、次々とクルーが集まってきた。
全員を召集したようだ。
「帝国軍だって?」
エミリーがTシャツに白のジーンズと、ラフな恰好で入ってきた。急いでいたようで着替えないで来たらしい。
「そうだ」
「どうするの?」
「今考えているところだ」
艦の位置がバレた時点で戦闘だ。
だが、ジェネレーターが動かないことには逃げることも戦うこともできない。
どうするか……。
「このままここに隠れていて見つかる可能性は?」
「全ての出力をカットして艦内を消灯すればデブリと思うかもしれんのう。小惑星の影に入っている間は見つからんと思うぞ」
小惑星帯は何百万という小惑星が集まって帯状に伸びている。
これを調べるとなると、かなりの時間と労力が必要となる。
1部隊だけで探すなど無理な話なのだ。
「よし。全てのエネルギーをカット。艦内の照明を落とせ。それと各クルーにはその場で待機を。いそげ」
「サブジェネレーターも落とすの?」
「全てだ。俺が指示を出すまでは電源を入れるな」
「でも、生命維持装置や重力制御装置も止まるわよ。艦内がパニックになるわ」
「構わない。全てを落とせ。生命維持装置が止まっても直ぐに死ぬような事はない」
艦内の酸素なら止まっても1時間はもつはずだ。問題は重力制御装置のほうだ。
無重力になるので、周りにある物が全て浮いてしまう。そして復帰した時が大変になる。全て散らばるからだ。
危険な弾薬類などは固定されているがそれ以外の物は散乱するだろう。後のことを考えるとやりたくはない手段だ。
「レーダーも止まるけど?」
「わかっている。帝国軍の移動速度からこの宙域を抜ける所要時間はどれぐらいだ?」
「そうね……約1時間だわ。でも止まらずに移動したらの話よ。途中で止まったら分からないわよ」
探索するのに艦を分散する可能性がある。
その時に旗艦はその場で留まることが多いので、そうなるとサブを止めているこちらが不利になる。
向こうには時間制限は無いがこちらには時間制限がある。ジェネレーターを起動しなければ生命維持装置が使えず窒息死してしまう。
それを懸念した。
「わかった。では、酸素がもつギリギリの時間まで待機し、向こうが通り過ぎるのを待つ。それまで大きな音は出さないように」
指示を出してからは対応は早かった。
照明が消え空調も止まった。そして、次第に体が宙に浮いた。
「椅子に座りベルトを締めろ。危険だぞ」
全員が手すりや椅子に捕まっている。
ブリッジ内は真っ暗になり、一部のコンソールだけが赤く点滅していた。
「この状態で1時間か。しんどいな……」
ロズルトが宙に浮きながらぼやく。
「わしは少し寝るかのう」
そんな中、博士がのんきな事を言い出した。
そういえば博士は寝ずに作業していた。
今は何もやることが無いそうなので、少し休むようだ。
「博士、部屋で寝て下さいよ」
目を閉じて宙に浮き出したので、エミリーが注意した。
「どこで寝ても同じじゃ。それに部屋に戻る時間が勿体ない。ジェネレーターを起動するときは起こしてくれ」
このままここで眠るようだ。
エミリーは困った顔をしている。
結局は部屋に戻っても浮いているのでベッドで寝ることはできない。
それならどこで寝ても同じということらしい。
「さて、今のうちにやれることはやろう。何かできることは無いか?」
「この暗さでは無理ね、身動きも取れないわ。下手に動くと怪我をするだけよ。ジッとしている方が賢明だと思うけどね」
全てが止まっているので、できることがあるかと思ったが以外と何もできなかった。
整備でもと思ったが、こう暗くては何もできない。
逆に危ないからと注意された。
「グランバーも少しは休みなさい。そんなに寝ていないのでしょ?」
「いや、それでも3時ほど寝た。それだけ寝れれば十分だ」
若いときは軍で夜警もしていたし、このぐらいは何ともない。
逆にこの状況で休めるほど、神経は太くない。
「それでは我々も待機だ。手が空いている者は窓から監視をしてくれ。帝国軍が来れば光りが見えるだろう」
今は小惑星の影に隠れているので目視で確認することはできないが、接近してくれば光りが見えるはずだ。だが、光りが見えたときはかなり接近しているときだ。
こちらが見つかっている可能性が高い。
「光りが見えても騒がないようにな。その時は報告を」
ブリッジから外を見るが小惑星の影の中なので光りが見えない。見えるのはゴツゴツした岩肌と、宙に彷徨っている小岩石の塊だけだ。
この小惑星帯には有益な鉱物資源が見つかっておらず、殆どが岩石で占められているため資源採掘船などが来ることは無い。
そういう意味では誰もいない宙域と言えた。
「このまま見逃してくれれば良いが……」
何も映らないメインモニターを見つめながら、時間が過ぎるのを待っていた。
ご覧いただきありがとうございます。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。ついでに評価もしてくれると嬉しいです。




