第62話 小惑星帯へ
ブリッジに入るとグランバーが難しい表情を浮かべ悩んでいた。
他のクルーもぐったりとした表情で、目の前のモニターを見つめている。
先程の戦闘が堪えたのか、誰ひとり、話しているクルーはいなかった。
その中で暇そうにしている奴を見つけた。
俺はゆっくりと近づいた。
「ロズルト。戦闘は終わったのか?」
「ん? シューイチか。取りあえずは、という所だな」
そう言って肩を竦めてみせる。
ロズルトだけが元気のようだ。
「取りあえずとは?」
「帝国軍が追って来るかもしれない。今はその警戒をしているところだ」
「ふーん」
「で、お前は何しに?」
「俺か? 俺は……」
さすがに、もう少ししたらジェネレーターが止まるとは言えない。
何か良い言い方がないか考えた。
「戦闘でどこかやられたかと思って。ほら、結構揺れただろ。だから心配になってな」
ちょっと苦しいか。
でも、それしか思い浮かばなかった。
「今のところどこかやられたという報告は無いな。計器類も正常だし怪我人も出ていない。無事に逃げられたよ。奇跡的にな」
「奇跡的にか……」
何とか誤魔化せたかな。
でも、状況を聞く限りかなり危険だったようだ。
特にジェネレーターがかなりヤバかったらしく、150パー出たとか。それが無かったら沈んでいたかもしれないと。
間に合って良かったよ、本当に。
「それじゃ、ジェネレーターにかなりの負荷が掛かったのでは無いか? 休めなくて大丈夫か?」
「どうだろうな、俺はそういうのは専門外だから」
そう言ってチラッと博士を見ている。
博士が何も言わないから大丈夫だと思っているようだ。
「一度休んで点検した方がいい。壊れてからでは遅いんだからな」
博士に聞こえるように大きな声で言う。
これで伝わってくれれば良いが……。
「まぁ、そうかも知れないが、今は帝国軍から逃げているから止めるのは無理だな……」
「おい、グランバー! ジェネレーターの出力が落ちてきているぞ!」
話している途中で博士が異変に気が付いた。
やはりジェネレーターの出力が落ちたようで、少し慌てていた。
「どういうことだ、博士」
「わからないが出力が落ちておる。100パー切ったぞ。このまま行くとどこまで落ちるか分からん。どこかで止めて、一度、点検しないといかんじゃろ」
「このまま維持することはできないのか?」
「無理じゃ。何が原因がわからん。それにかなり無理をさせておる。少し休ませんといかんじゃろ」
うんうん、博士、良いこと言った。
無茶ばかりする人と思っていたが、以外と常識があり、驚いた。
「博士、今ジェネレーターの出力が落ちたらワープはどうなる?」
「チャージができていればその分は飛べるが、緊急だったのでチャージができとらん。だから途中でワープアウトするぞ」
あー、チャージ無しで飛んだのか。
まぁ、あの状況なら仕方がないか。かなり切羽詰まっていたから全部シールドに回したんだろう。
そうしなければ沈んでいたのかも知れない。
「その前に止めた方が安全じゃ。変なところで止まられても困るじゃろ?」
「それはそうだが、しかし、止めると帝国軍に追いつかれる。できればもう少し先まで行きたいのだが」
「無理じゃな。この落ち具合だとそう長くもたんじゃろ」
メインモニターで現在位置を確認すると予定の2割も飛んでいない。
この距離だといつ追い付かれてもおかしくない。
先に進みたい気持ちも分からないでもないが、ジェネレーターが止まることは確定しているので無茶は止めて貰いたい。
どこか安全なところで止めて欲しいね。
「わかった。リュック、近くの宙域に隠れられるような場所はないか?」
「調べます……あります。小惑星帯がかなりの範囲で確認できました」
「よし、そこへ一旦隠れよう。進路をそちらへ。博士、それまでもつか?」
「大丈夫じゃ。だか、今度はいつ動くか分からんぞ。かなり無理をさせたようだし、整備は必要じゃ。2.3日は見た方が良いぞ」
「2.3日か……」
グランバーが眉間に皺を寄せて溜息を吐いている。
一刻も早くこの宙域から出たいみたいだが、ジェネレーターに無理をさせて故障しても困るので博士の指示に従うようだ。
「ワープアウト。小惑星帯に向かえ」
「了解」
ジェネレーターが止まる前に何とかなりそうでホッとした。
本当の事が言えないのは辛いが、なんとか領都に着くまで頑張って欲しい。
俺にできることは魔力を注ぐことと、応援するぐらいだからね。
*****
「逃げた方向はわかったか?」
「はい。所属不明艦は領都に向かったようです」
通信では領都に行きたいと言っていたが、本当に領都に向かうとは。
嘘だと思っていたが。
「フフフ」
「どうしましたか、艦長?」
突然笑ったことで、部下が心配そうに声を掛けてきた。
「何でも無い。しかしあの戦艦は何なんだ? あれだけの攻撃を受けてもシールドが落ちないと」
「ドラギニス公国が開発した新しいシールドジェネレーターでしょうか?」
シールドジェネレーターとは、普通のジェネレーターとは別にシールド専用に取り付けたジェネレーターである。
「どうだかな。シールド専用に付ければ確かに出力は出せるが、それでもあれだけ砲撃を受けて落ちないのは異常だ。何か他に要因があると思うが……」
腕を組み思案するが何も思いつかなかった。
こんな事、長い艦長生活で初めての経験だった。
「艦長。敵艦の行方ですが見失いました」
「ん? ワープで逃げたのではないのか?」
「ワープですが、途中でコースを変更し、予定と違うところでアウトした様子です」
「どこだ?」
「小惑星帯です」
「どうしてそんなところに?」
全員が首を傾げるだけで明確な答えを言う者はいなかった。
「トラブルでもあったのでしょうか?」
「その可能性はあるな。あれだけの戦闘をしたのだ。何も無い方がおかしい。当艦もその宙域へ。近くにいる部隊にも探索に加わるように通信を」
逃がすわけにはいかない。あれだけコケにされてはな。
ご覧いただきありがとうございます。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。ついでに評価もしてくれると嬉しいです。




