第61話 帝国軍との戦闘③
ブリッジは危険を知らせるアラートが鳴り響いている。
シールドの防御システムが限界に近かった。
「さすがにキツい。シールド損耗率90パーセント。レッドゾーンだ!」
「ワープに回しているエネルギーも使え」
「良いのか、それだと遠くまで飛べないぞ」
「構わない。この宙域から出ることが最優先だ」
ワープ装置のチャージ率は5パーセントも無い。
これではワープしても遠くまで飛べないが、この艦のジェネレーターなら飛びながらでもチャージできる。
それで凌ぐしかなかった。
「第2波、来るわよ!」
再び、大きく揺れる艦内。
クルーは生きた心地がしないだろう。だが、耐えるしかなかった。
「シールド損耗率96パーセント。これ以上の攻撃を受けたらシールドがダウンするぞ!」
ジェネレーターのエネルギーを全てシールドに回したが、それでも追い付かない状況が続いている。
帝国軍の攻撃を甘く見ていた。
「博士! もつのではなかったのか!」
「この数のミサイルは計算外じゃ!」
今更そんなことは言うな、と怒鳴りたい。
だが、そんなことを言っている余裕はない。
何か手を考えなければ。
「博士、ジェネレーターの出力を最大に。全てシールドに」
「既にやっておる。目一杯じゃ」
艦隊に近づくにつれ攻撃が激しくなる。
シールドが激しく点滅していて、限界が近いことを教えてくれていた。
「シールド損耗率100パーセント。ダウンするぞ!」
「こっちもじゃ! ジェネレーターの出力が100パー越えたぞ! 限界じゃ! 止まるぞ!」
ローズと博士が同時に叫ぶ。
クルー全員が祈るようにして目を閉じていた。
「くっ、打つ手無しか……」
絶望感がブリッジを支配する。
だが、覚悟を決めたがシールドは落ちなかった。
それどころか、シールドの損耗率が下がっていくのがモニターで確認できた。
「……どういうことだ?」
シールドの輝きが安定してきた。
「お、おかしい……」
「どうした博士」
「ジェネレーターの出力が上がり続けているのじゃ……」
急いで博士のモニターを見ると120パーセントを超えていた。
「どういうことだ、博士?」
「わ、わからん。ジェネレーターがこんな高出力を出すとは……まさか、暴走か?」
ジェネレーターが壊れる前に、時々、高出力を出すことがあると言う。
今はその状態では無いかと。
「こんな所でジェネレーターが壊れたら……」
想像したのか、エミリーの表情が真っ青になっていた。
「壊れるだけなら良いが爆発することもある。危険じゃ」
博士は今すぐ止めた方が良いと言うが、止めた時点でこの艦は蜂の巣だ。
助かる見込みはない。
「駄目だ。このまま行く」
「しかしじゃ……」
「どのみち止めたら沈むのだ。なら、このままで行く」
こうなったら一蓮托生だ。
この艦と共にするしかない。
「シールドは?」
「出力が上がったことで少しは余裕ができたが、ギリギリなのは変わりない」
やはり危険なのは変わりないか。
「もう少しで突破するわ!」
ミサイル攻撃で艦は揺れ続けているが、ここを突破すれば何とかなる。
突破までの時間がすごく長く感じた。
「……突破したわ。帝国軍が反転を開始。追いかけてくるわ」
くっ!
やはり、逃がしてくれないか。
「座標入力は終わった。いつでも飛べるぞ!」
リュックが大声で叫ぶ。
よし、これで逃げられる。
「ワープだ!」
流れる景色。
帝国軍の艦が一瞬で小さくなった。
「……逃げ切れたのか」
ロースが疲れた表情で言うとシートの背もたれにもたれ掛かる。
逃げた喜びよりも、今は疲労感の方が強かった。
「間に合ったのか……」
全員がぐったりしている。疲労困憊だった。
だが、これで終わりではない。
帝国軍が追ってくるかも知れないのだ。
休んでいる暇はなかった。
*****
「かなりヤバいな」
気になって見に来たが、ブリッジはパニックに近い状態になっていた。
いつも冷静なグランバーまで、俺がブリッジに入ったのに気が付いていない。それだけ余裕がないということだ。
見ただけで状況は最悪だと察した。
メインモニターには帝国軍の艦隊が映っており、レーザー砲の光りが休むこと無く輝いている。
「ローズ、シールドの損耗率は?」
「72パーセントだ。残り3割を切ったぞ」
この状況で残り3割か。
かなり危険だな。
このまま突っ込むみたいだが、接近すればミサイルが飛んで来るはず。
シールドがもたない可能性が高い。
「帝国軍が左右に展開」
「突っ込んでくるのが分かっているから横から攻撃するのだろう。構わない。このまま突っ込め」
やはり突っ込むか。
無茶をするなあ。
でも、ここまで来たらそれしかないか。
何だか、見ていられなくなった。
「しょうがない。手を貸すか」
俺にできることは一つしか無な。
サーバールームへ向かった。
サーバールームに着くと、直ぐにダンジョンコアを呼び出した。
「艦がやばそうだ。何とかできるか?」
『現状を確認したところ無理です』
「おいおい、諦めが早いな。このままだとお前も沈むのだぞ」
『わかっています。ですので、魔力の補充をお願いします』
「魔力を補充すれば何とかなるのか?」
『ジェネレーターのリミッターを解除し、出力をもう一段上げます。それにはマスターの魔力が必要です』
必要というのであればあげるが、何か嫌な感じがするのだが。
「もう一段上げるとどうなる?」
『今より50パーセント。出力が上がります』
「それは凄いな……で、デメリットは?」
何も無ければ最初から出力を上げていただろう。
何かあるから俺の承認を求めたのだ。
『出力を上げた後は、24時間、ジェネレーターが停止します』
「……」
まじか。
止まった不味いだろう。止まっているときに攻撃されたら終わりじゃん。
でも、このままでも不味いし……。
むむ、これは困った。
グランバーに相談するか?
だが、俺がこんなことを言っても信じて貰えないだろう。
それに、それを説明するにはダンジョンコアの事も説明しないといけない。ダンジョンコアがそう言っていると。
「むむむ……」
頭を抱えてしまった。
「おっ?」
艦が大きく揺れた。
思わず倒れそうになったが、何とか踏み堪える。
帝国軍のミサイル攻撃でも始まったか。ここにいると状況が分からないのがもどかしい。
この部屋にもモニターを付けて貰いたいね。
「ゆっくり考えている時間はないか。仕方が無い。出力を上げろ。今を乗り切ることが先決だからな」
『わかりました。出力を上げます』
俺はコアの上に手を置くと魔力を注いだ。
「……どうだ?」
『出力を上げました。現在、120パーセントです』
出力が上がっている間は大丈夫だろう。問題はこの後だが……。
「ジェネレーターが止まっている間どこかに隠れるしかないか……。はぁ、グランバーと相談だな」
どう説明すれば良いのだ?
頭が痛くなってきた。
『ところでよろしいのですか?」
「何が?」
『こんな所に来られて。見つかると大変ではありませんか?』
あ、忘れていた。監視カメラ。
何とかしないと、と考えていてすっかり忘れていた。
でも、移動中は誰かに見られてはいないので大丈夫だと思う。
後は監視カメラだが。
「すまんが、また頼む。映像を差し替えていおいてくれ」
『もうよろしいのではありませんか、本当のことを話されても」
「いや、それは駄目だ。俺がこの船のマスターだなんて知られたら後がやっかいだ。できるだけ隠すように」
『……わかりました。マスターがそう言うのであれば指示に従います』
何でこんな苦労を、と思いながら状況の確認に、ブリッジへ戻ることにした。
ご覧いただきありがとうございます。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。ついでに評価もしてくれると嬉しいです。




