第59話 帝国軍との戦闘①
宇宙に上がって6日目。
途中で7回ほどワープアウトし、無事に星系外まで辿り着いた。
ここから先は帝国軍の管轄となり、許可がない船は入れない宙域になっている。
「レーダーに反応は?」
「今のところは無いわ」
「やはり追いかけて来ないか……」
あれから順調で問題も無くここまで来たのだが、それが返って不気味で、気が休まらない日々が続いていた。
だが、上手く行けば今日で終わる。帝国軍の宙域に入れば追いかけてくることは不可能だ。帝国軍の管轄で発砲などできないのだから。
帝国軍の管轄宙域に入ると、直ぐにレーダーに反応があった。
「前方に艦影あり。帝国軍ね。こちらに接近してきたわ。でも、数が多いわね。どういうことかしら?」
メインモニターで艦影を確認したが、かなりの数の艦が確認できた。
「戦艦3、巡洋艦7、駆逐艦が12、普通では無いわね……」
戦艦1隻にこの数は尋常ではない。
何が起こっているのだ?
「通信が入ってきたわ。どうする?」
「受けよう」
通信回線をオンにすると、メインモニターにはグレーの軍服を着た若い士官が映し出され、表情はキリッとしており、こちらを鋭い視線で観察していた。
『こちら帝国軍第11方面第8遊撃部隊所属、戦艦テリューシュ。所属不明艦。今すぐ武装を解除し、速やかに投降せよ。もし、不審な行動を取れば直ちに撃沈する』
いきなりの宣戦布告で全員がどういうことか分からず混乱していた。
「こちら戦艦ウリウス。私は代表のグランバー。こちらに戦闘の意思はない。司令官と話がしたい。繋ぎを頼む」
『それはできない』
「どういうことだ?」
『貴艦にはスパイの容疑が掛かっている。速やかに投降し、こちらの指示に従え』
スパイだと、どういうことだ?
そんなことはしていないが……まさか!
一旦通信を切ると、厳しい表情を浮かべたロズルトが話しかけてきた。
「やられたな。多分、星系軍が連絡したのだろう。我々の事をスパイと偽って」
帝国軍は許可なくして星系内の内政に干渉することはできない。
だからクーデターが起きようが何だろうが、帝国府からの指示がなければ介入することができないなのだ。
ただ例外があって、自国に不利益が生じる場合、今回のように敵国が絡む場合には、防衛という形で介入できる。
だから我々を捕まえることが可能になるのだ。これが星系内のいざこざなら介入はしなかっただろうが。
「どうする? 投降するか?」
「投降してどうなる? 我々が本当の事を話しても向こうは信じると思うか?」
「それは……難しいな。星系軍がなんて言っているかによるが、スパイ容疑なら身の潔白を証明すればなんとか。だが、その証明方法が思い浮かばない。俺たちはレジスタンスだから、どこまで信用してくれるか」
レジスタンスとはいえ俺たちはただの一市民。信用も信頼も無いのだ。
そんな一市民が身の潔白を訴え出ても聞く耳持たないだろう。それに向こうは仮にも貴族になるのだから、当然、向こうの方が信頼される。俺たちが嘘を言っていると思われるだけだ。
身の潔白は難しいと思った。
「取りあえず説明だけでもしてみるか?」
「そうだな、話だけしてみるか……」
再び、通信回線を繋げた。
「我々は第2惑星から来たレジスタンスだ。スパイではない。逆に代官のブラトジール男爵を告発しに来た。司令官と面談がしたい」
『それはできない。貴艦がスパイであり敵国の可能性がある以上、そのような場所に司令官を連れてくることはできない』
「それならモニター越しでも構わない。司令官と会談を」
『駄目だ。許可はできない。貴艦の要求は全て却下するよう指示を受けている。要求を聞くことはできない』
こちらがいくら要求しても会談は叶わなかった。
「それでは亜空間ハイウェーを使用できないだろうか? 我々は代官の悪政に苦しんでいる。それをベルカジーニ伯爵に報告したい。亜空間ハイウェーの使用許可を」
『亜空間ハイウェーの使用は帝国府より許可を貰った船だけが使用できる。貴艦は許可を得ていないので使用はできない。それに、我々はハイウェーを守る義務がある。敵国の可能性がある貴艦に使わせる事はできない』
「我々は敵国ではない。この国の者だ。第2惑星で調べて貰えば分かるはずだ」
『では、貴艦のその船は何だ? そんな船、本国に登録されていないがどこで手に入れた?』
「これは第2惑星で開発された物で……」
そうか。
内緒で作っていたのだ。星系軍に登録されているわけがない。
だからか所属不明艦と呼んでいたのか。
逆にこの艦を強奪したことが裏目に出たか。
「この艦はブラトジール男爵が開発した物だ。我々をそれを奪っただけだ」
『ブラトジール男爵が作った物だと? 嘘を言うな。男爵がこのような物を作るわけが無い』
領主の許可無く艦を作ることはできない。
これは帝国法で定められており、それを破れば反逆罪で処罰される。
男爵がそんな危険なことするわけがない、ということだ。
やはり我々の言うことは信用して貰えなかった。
「ワープだけで行こう。時間が掛かるが仕方が無い」
無理だと悟ったロズルトが、やれやれ、という感じで言う。これには他のクルーも賛成のようで、逃げる準備を始めた。
「グランバー、帝国軍に動きが。この艦を囲むように展開を始めたわ」
俺たちが逃げることを察したのだろう。
逃がさないように囲むつもりのようだ。
「帝国軍に聞く。もし、投降した場合、艦の乗員はどうなる?」
「おいおい、まさか投降するのか?」
ロズルトが心配そうな顔で聞いてくるが、そのつもりは無い。
話を聞いてみただけだ。
『投降した場合はある部門に身を預け、聞き取り調査の結果、判断することになるだろう。なお戦艦はしかる調査ののちに解体することになる』
「な、何じゃと! 古代船を解体するとは、何て罰当たりな連中だ。やつらにこの艦は渡せん。戦うぞ!」
博士が向こうの言葉に切れた。
これは不味いな。
聞こえてなければ良いが。
「博士、落ち着いてくれ。それとローズ、シールドの準備は?」
「終わっている。いつでも展開可能だ」
せめてもの救いはジェネレーターが安定していることだ。
これで不安定だったら終わりだった。
「ある部門ってあれか?」
ロズルトが小声で聞いてきた。
「ああ。特別聴取部門のことだ」
「おい、あそこは不味いぞ。捕虜を人として扱っていない何でもありの部門だ。俺たちが、うん、と言うまで拷問されるぞ」
特別聴取部門とは、捕虜などから事情聴取することを専門にしている特殊な機関のことで、質問に答えるまで拷問を続け、非人道的なこともゆるされる超危険な部門でもあるのだ。
最悪は頭に変な機械を取り付け、記憶を読み取ることまでしているとか。
一度その部門のお世話になったら、五体満足で帰ってくることはないと言われている。
「逃げるぞ。シールドを展開。エネルギーは全てシールドに回せ。決して発砲するな。国賊として撃沈されるぞ」
シールドが艦を覆う。
それに合わせて帝国軍も戦闘態勢に入った。
「第1戦闘配置だ」
艦を反転させ、この宙域から逃げる。
そうすれば向こうは追ってこないはずだ。星系内に戻れば管轄外になるはずだから。
ご覧いただきありがとうございます。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。ついでに評価もしてくれると嬉しいです。




