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第57話 ザイラ・バーツ大佐の作戦①


書類整理が終わり、一息吐く。

最近は市民からの苦情が多くて頭を悩ませている。

その殆どが傭兵絡みだ。

マナーが悪くて飲食店でよく騒動を起こす。それ以外にも市民への暴行や恐喝、窃盗など、やっていることはそこらにいるチンピラと同じだ。とっととこの星系から追い出したいが、代官が集めた傭兵なので俺に権限は無い。

いくら増援が呼べないとはいえ傭兵を雇うなど。中には礼儀正しい傭兵もいるが、そんなのは一握り、1割にも満たない。



廊下が騒がしくなった。

何かと思い、ドアを見ていると突然、多くの兵士が銃を構えて入ってきた。

その人数は7人ほど。

服装は星系軍の物だが、俺の陸上部隊の兵士ではない。彼らの襟章には宇宙部隊を示す青色の背景で階級が描かれているからだ。

それを見て俺は誰の部隊か察した。まさか強硬手段に出るとは。


「何事だ。ここがクリフト・ベルマンの部屋と知っての愚行か?」

「もちろん知っているさ。クリフト大尉」


銃を構えている兵士を掻き分けて、銀髪で背が高い偉丈夫が入ってきた。

彼はザイラ・バーツ大佐。駐留しているこの第2惑星のトップで現指揮官でもあった。


「やはりおたくの部隊か。どういうことだ、ザイラ・バーツ大佐殿」

「それは大尉が一番知っているのではないかね」


ニヤニヤしながら言うあたり、何か情報を掴んでいるようだ。


「何のことか分からないが」

「とぼけなくて良い。先日、おたくの部下が私の所から重要なデータを盗んだ。それを返して貰いたい」


そう言って、データをコピーしている仲間の姿が映った写真を投げて寄越した。

バレていたようだ。


「知らないな。何のことだ?」

「写真に映っているのは君の部下だろ? 君の部屋に入って行くところを確認した。隠しても無駄だぞ」


そこまでバレていたのか。

これでは隠すことはできない。


「断る」

「ならば仕方が無い。反逆罪として拘束するだけだ」

「反逆罪だと。反逆しているのはどっちだ?」


大佐は笑みを浮かべて答えなかった。


「お前と事務次官が虚偽の報告をしているのを知っている。そしてドラギニス公国と繋がっていることも」


こっちは既に証拠を掴んでいる。

言い逃れはできない。


「……だからどうした?」

「何?」

「知っていたとしてお前に何ができる? 今更騒いでも何もできはしないのさ。それにこれはブラトジール男爵殿も認めている。いや、男爵殿が主導していると言った方が良いか。この話を最初に持ってきたのは男爵だからな」

「どうして男爵が?」

「さあ? 詳しい事は俺も知らない。ただ、報酬はかなり良かったよ。軍人で一生働くよりも、それ以上の報酬も地位も俺に約束してくれた。これで断る方が馬鹿だろ?」

「地位?」

「そうさ。今建造している戦艦が完成すれば、それを手土産にドラギニス公国に行くことになる。そして俺も晴れて貴族の仲間入りとなるのさ」


俺たちを売って叙爵が約束されている、そういうことか。


「そう上手くいくのか?」

「ふん。もうじきドラギニス公国の艦隊がこの星系に来る。そうなればこの星系はドラギニス公国の物になる。そして最後は星系外に駐留している帝国軍を追い払い、亜空間ハイウェーを手に入れるのだ。この星系はドラギニス公国の軍事拠点になる」


ドラギニス公国の艦隊が来る?

帝国軍の目を盗んでここまで来るということか。


「フフフ。信じられない、という顔しておる。だが、なんの為に通信を遮断してきたと思う。領主殿に知られること恐れていたわけでは無い。星系外に設置されている監視衛星の通信を使えなくする為だ」


監視衛星とは、敵が接近したときに知らせるために帝国軍が設置した物で、敵艦を探知すると直ぐにワープで飛んで来るのだ。


「監視衛星の回線は全て通常の超高速光衛星回線で行われている。それを亜空間通信衛星で受信し、帝国軍に送信しているのだ。もし亜空間通信設備が使えなくなった場合はどうなるか」

「通信が帝国軍に送られなくなる」

「そうだ。だから堂々と入ってこれるのだ」

「それはあり得ない。帝国軍も馬鹿では無い。通信ができなければそれなりの対応を取るはずだ。その付近に艦を派遣し、巡回させるとか」


帝国軍には亜空間通信が使用できないことは伝えてあるはず。

だから艦を派遣し、巡回を強化していると聞いている。

簡単に潜り込めるとは思えない。


「それは艦隊に余裕がある時だけだろ」

「?」

「どこかと戦闘になれば、その余裕は無くなるはず。巡回もできなくなる、ということだ」

「……まさか!」

「そうだ。そのまさかだ。君たちは丁度戦艦を盗んでくれた。しかもその戦艦で星系外にいる帝国軍と接触するそうだな?」

「どうしてそのことを?」

「君たちにも居るように我々にも間諜がいるのだ。革命軍の中にね」

「……」

「この作戦を聞いたとき、直ぐにピンと来た。戦艦を使って何かするつもりだと。今、我々がやられて困るのは領主に今の状況を知られることだ。だから戦艦でそのことを伝えに行くつもりなのだろ? それならこちらもそれを利用させて貰う。戦艦を盗んだことが徒となるようにな」


ニヤニヤしながら勝ち誇ったように言う姿は見ていて腹が立つ。

だが、ここで怒ったところで奴が喜ぶだけだ。

今はグッと堪えた。


「君たちが盗んだ戦艦が帝国軍と接触すればどうなる? 正規軍の物ではないのだから必ず戦闘になるだろう。そして逃げれば追いかけて行く。艦隊を引き連れて。そうなれば巡回も疎かになる。そこまで手が回らないからな」


艦が盗まれ、帝国軍と接触するまで読んでいたということか。

そして揉めているうちにドラギニス軍を招き入れると。

全て大佐の作戦だったと。

俺は信じられないという顔で、大佐の顔を見つめていた。



ご覧いただきありがとうございます。

書くのが遅くて申し訳ございません。

気長に付き合って下さると嬉しいです。ついでに評価もしてくれると嬉しいです。

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