第54話 星系軍との戦闘②
星系軍との距離が近づいている。
ジェネレーターの出力が落ち、速度が上がらないからだ。
星系軍との距離は8万を切った。
追いつかれるのは時間の問題だった。
「反転して迎え撃つ」
俺の言葉を聞いたダミアンが真っ先に反対した。
「無理だ。エネルギーが無いので主砲は撃てないぞ」
主砲のエネルギーは全てシールドの展開に回している。
今は主砲に回す余裕はない。
「かまわない。ミサイルで対抗する」
何も戦艦の武装はレーザー砲だけではない。
普通にミサイルはあるし機関砲だって備えている。
ただ、ミサイルだと撃墜されやすいという欠点があるので接近戦以外は使わない。
それを今回は使用する。
それしか活路は開けないからだ。
「そんなの無茶よ。この距離で発射すれば全て撃墜されるわ。それどころか先にこちらがやられるわよ。シールドへ回せるエネルギーは残り少ないのよ」
青い顔でエミリーが話す。
そんな事は当然分かっている。だが、それしか手がないのだ。
時間が経てば経つほどこちらが不利になるのは目に見えているからだ。
「博士。ジェネレーターの出力を上がることはできるか? 今すぐに」
「無理じゃな。短時間で出力を上げることはできない。それどころか、今後も上げられない可能性すらある。今の状況では無理だのう」
何度も上げようとしているが上がらないという。
命令を受け付けず、マニュアルでも上げることはできないと。
お手上げの状態だと言った。
「ジェネレーターの出力が上がらない以上は待っていても仕方が無い。それどころか増援が来ればもっと不利になる。やるなら今しか無いのだ。数が少ないうちに」
ブリッジ内が静寂に包まれた。
誰もが無謀と分かっているが、それでも反対ができないからだ。
「俺はグランバーの判断に賛成するよ」
視線がロズルトに集中する。
今まで黙っていたロズルトが口を開いたからだ。
「だって他に手段がないのだろ? だから反対はしないさ。それにお前と同じ立場なら俺も同じ事をする。だから何があっても責めはしないさ」
微笑みながら安心させるかのように全員に向けて話す。
さすがロズルトだ。俺にそういう芸当はできない。
「……わかったわ。グランバーの指示に従うわ」
エミリーが頷くと、それに釣られるように全員が頷いた。
半ば、特攻という感じになってきたな。
だが、やるしかないのだ。
それしか道が残っていないのだから。
「ウリウス反転。迎え撃つ!」
星系軍もこちらの動きに気づき、主砲の準備がされている。
シールドも展開したようだ。
「距離6万。射程まで2分よ」
エミリーの報告で、みんなに緊張が走る。
メインモニターにはこちらに向けられている主砲がハッキリと映し出されていた。
「向こうが攻撃してきても構うな。接近し、シーカーミサイルを撃ち込む。シーカーミサイル発射準備!」
「了解した」
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!」
博士が大声で呼び止めた。
「なんだ、博士。今は博士と話している時間は無いぞ」
「そうじゃない。ジェネレーターの出力が上がっておるのじゃ」
「何だと!」
俺も慌ててモニターを見る。
今まで20パーセントも出ていなかった出力が、今ではどんどん上がって行き40パーセントを超えた。考えられないことが起こったのだ。
「どういうことだ、博士」
「わからん。突然上がり出したのじゃ」
博士がモニターを見ながら混乱していた。
誰も予想していない事が起きたのだ。
「シールドのエネルギーも上がっていく……」
ローズも驚いた表情でモニターを見つめていた。
何が起きたか分からないが、運は我に味方したようだ。
「よし、これならやれるぞ。主砲にエネルギーチャージ!」
「わかった!」
「星系軍が射程内に入ったら攻撃する。目標は中央にいる戦艦!」
ブリッジ内が慌ただしくなる。まさか奇跡が起こるとは。
だが、まだ油断はできない。
勝つまでは何が起こるか分からないのだから。
「射程に入ったわ!」
俺は頷くと指示を出す。
「全主砲発射!」
前部にある主砲6門が光り輝く。
それと同時に、敵戦艦が白く輝いた。
「命中! シールドの減衰を確認!」
監視をしていた仲間の1人が報告した。
「チャージ完了しだい次弾発射!」
星系軍も反撃してきたが、シールドが全てを弾いていた。
普通なら7隻からの攻撃を受ければ直ぐにシールドはダウンする。それが余裕で保っているとは。
これが古代船の力ということか。
「戦艦のシールドダウン確認。命中します」
レーザー砲が当たり、戦艦の右舷に大きな穴が開いた。
「ミサイルが来ます」
「対空砲火。撃ち落とせ!」
右舷に設置している小型レーザー砲が一斉に撃ちだされる。
次々と落とされるミサイル。
シールドに当たる前に全て撃ち落とされた。
「戦艦が後退するわ。巡洋艦2隻が前に」
「右側の巡洋艦に集中攻撃だ」
こうなれば一方的だった。
巡洋艦1隻が大破。
戦艦は走行不能になり、宙域を彷徨っている。
もう1隻の巡洋艦は駆逐艦と一緒に逃げていった。
大勝利だ。
古代船の力をまざまざと見せつけられた。この技術が自由に使えるようになれば1個部隊など相手にならない。博士が躍起になって調査するのも頷ける。
「……何とかなったな」
ブリッジ内が歓喜で溢れている中、ロズルトが疲れた表情で話しかけてきた。
「ああ、何とかな。毎回、こんなのだと心臓が持たんよ」
俺も肩をすくめ半笑いで答える。
「そうだな。でも、初陣としては上出来じゃ無いか?」
「フッ、結果から見ればな」
*****
戦闘が終了し、今はワープの準備に入っている。
エネルギーが溜まれば、ワープで星系外に向かう予定だ。
「偶然だと思うか?」
近くで暇そうにしているロズルトに話しかけた。
彼の仕事はAIに指示を出すこと。それ以外ない。
「何が?」
「ジェネレーターの出力が上がったことさ」
「ああ、あれか。前回も突然出力が上がり俺たちは助かった。偶然にしては出来過ぎていると思うな」
「お前もそう思うか」
何もしていないのに突然出力が上がるなど考えられない。
誰かが何かをしたのだ。
そうとしか思えなかった。
「博士、ジェネレーターの方はどうだ?」
「安定しているぞ」
「原因は分かったのか?」
「さっぱりわからん。なぜ上がったのか、ログにも残っておらん」
博士も原因を調べているがわからずにいた。
博士が調べて分からないのであれば誰にも分からないだろう。
「困ったものだな」
苦笑しながらロズルトが言う。
「お前、笑い事では無いぞ。毎回、こんな事じゃ身が持たんよ」
「しょうがない。お前がこの艦の責任者だ。俺は飾りだからね」
「嫌みか」
「ハハハ、冗談だよ。だが、困った事があれば相談しろよ。お前1人で抱え込むことは無いんだからな」
それだけ言うとブリッジを出ていた。
戦闘配置を解除させ、今はAIによる自動航行中だ。
待機しているのはローズだけになっていた。その他は休憩中になっている。
「ふん、人ごとだと思って……」
それでもそう言って貰えてありたがった。
友人という間柄ではないが、それでも話が分かる仲間が近くに居るだけで心強かった。
「俺も少し休むか……」
まだ出航したばかりだが、何とかやれる気がしてきた。
ご覧いただきありがとうございます。
ストックが無くなりそうなので、1日1アップにしたいと思います。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。




