第51話 星系軍との戦闘①
「高度1万メートルを越えたぞ」
計器を見ていたローズが振り返り報告する。
俺は頷くと次の指示を出した。
「シールドを全展開。大気圏離脱モードに入る」
大気との摩擦に耐えるためシールドで艦全体を覆う。それに合わせてシールドが少しずつ赤くなっていった。
「グランバー、レーダーに反応よ。戦艦1、巡洋艦2、駆逐艦4」
メインモニターに切り替えレーダーを見る。そこには赤く表示された点が7つ。前を塞ぐように点滅していた。
「気付かれたか。シールドの出力を上げろ。こちらも大気圏を出し次第攻撃に移る。それまでは耐えろ。主砲、エネルギーチャージ開始。第1戦闘配置」
まさか見つかると。
作戦は失敗したようだ。
「フッ、奴らに期待した俺が馬鹿だったか……」
周りに聞こえないよう独り言のように呟いた。
「射程に入ったわ。撃ってくるわよ」
エミリーが言うと同時にレーザーが飛んできた。だが、距離があるせいか、全弾逸れていった。
「全て外れたわ。……第2波くるわよ」
今度は外れずに何発か当たった。
シールドが白く光る。
「シールドに命中。エネルギー減衰率、8パーセント」
ローズが慌てず冷静に報告する。さすが戦闘艦経験者。
以外とブリッジ内は落ち着いていた。
「テストの時と違うな。どうなっている博士?」
「それが全然出力が上がらんのじゃ。こんなはずは無いのじゃが……」
博士は先程から何かやっているみたいだが出力は上がってこない。
セキュリティーが突破できないとか?
だが、報告ではかなりの出力を出したと聞いている。
どういうことだ?
こういう時に古代船の不便さを感じる。
言うこと聞かないのだから。
「博士、マニュアル操作に切り替えも駄目か?」
「制御用AIボックスを完全に切り離すのか? 分からんがお勧めはできん。今までのデータでは全てAI経由でやっておるからの。出力が上がるとは思えん」
「ふむ……大気圏離脱までの所要時間は?」
「約3分だ」
操縦士のダミアンが答える。
「約3分か……それまでもつか、ローズ」
「分からないな。攻撃が当たらなければ何とか」
ローズの話だと距離が縮まるごとに威力が上がる。なのでどのぐらいもつかは不明だと言う。ただ、攻撃の命中率から計算すると、ギリギリで危ないと。
こうなれば防御に徹するしか他に手段が無かった。
「主砲のエネルギーをシールドに回せ。それで耐える」
これで沈むことは無くなったがこちらから攻撃はできないので、星系軍を振り払うことはできなくなった。
ずっと後を付けられるということだ。
しばらくは鬼ごっこが続くというわけだ。
無事に大気圏を抜けたが星系軍がぴったりと付いてくる。
このままでは増援が来てこちらが不利になる。だが、反転して迎え撃つなどエネルギーに余裕が無い。
「主砲にエネルギーを回せそうか?」
「無理じゃ。シールドに回すのに手一杯じゃ」
ジェネレーターの出力が上がらないという。
このタイミングでトラブルか。
自分の運の悪さを呪った。
「ワープで振り切れそうか?」
「無理じゃな。こちらがワープを使えば向こうも当然ワープする。振り切れんよ」
それにワープに回すエネルギーも無いという。
残された道は戦うしか無いと言うことだ。
「ロズルト。AIに言ってもっとジェネレーターの出力を上げられないのか?」
「聞いてみるか? ……AI。出力を上げろ」
『かしkまりました』
女性士官のAIがモニターに映る。
だがそれだけで上がった気配は無かった。
「……やはり上がらないな。現状が最大ということか」
こちらで用意した制御用AIボックスでは、古代船は制御できないということか。
やはり原因を調べないことには始まらないか……。
「博士、何とかならないか?」
「無理じゃ。先程から船のセキュリティーにアクセスしているが拒否されている。どうにもならんと言う事じゃ」
八方塞がりか。
一か八かやるしかないか。
「AIの制御を切り離しマニュアル操作で動かす。博士」
「お勧めはできんがやるしかないようじゃな」
博士がモニターで操作を始める。
メインモニターに映っていた女性士官が消えた。
「切り離したぞ。今は全てマニュアルになっておる。AIのサポートは受けられんぞ」
「わかった。ローズ、シールドの管理を頼む。エミリーは通信とレーダーで星系軍の監視を。撃って来たら教えてくれ。他の者は今のままで頼む」
忙しくなるのはこの2人だ。全てAIでコントロールしていたのだから。
「博士。出力は?」
「やはり上がらん。むしろ下がっておる」
ジェネレーターの出力が20パーセントしか出ないという。
これでは前より低かった。
「やはりセキュリティーが邪魔をしておる。指示を受け付けんぞ」
「機関室に連絡を。マニュアルで出力を上げろと」
「了解」
こちらから操作できないのであれば、直接ジェネレーターの出力を上げる。
そのために人を乗せているのだから。
「グランバー。向こうで直接操作しているけど出力が上がらないそうよ。いくら操作しても変わらないって」
普通の戦艦ならこれで出力が上がるはずだがこれでも駄目だった。
どうなっているのかさっぱり分からなかった。
「どうして上がらないのだ?」
「古代船のジェネレーターは、そもそも手動に対応しておらん。外から動かそうとしても動かんのじゃ。だから制御用AIボックスや制御用モジュールを付けておるのじゃ。手動で動けば苦労せんわい」
博士が横でそんなことを言う。
そういうことは最初に言って貰いたい。
全て無駄になるのでな。
「だが、マニュアルにすれば出力は上がるという話では?」
「そんなことは言っておらん。起動はすると言っておるだけじゃ。スイッチを入れれば起動はするが、そこから先はセキュリティーが突破できているかによる。ある程度、突破しておれば、そこまでの出力は出せる。そういうことじゃ」
これではニュアル操作に切り替えた意味が無い。
更に悪くなっているのだから。
「元に戻そう。前の方がまだ増しだ」
結局は無駄に終わったがマニュアル操作で一度船を動かしたのはよい経験になった。
経験が無いクルーにはこういうことは必要である。
と、今はそう思うことにした。
無駄な作業というのは精神的に堪えるのでね。
後は元に戻し、覚悟を決めるしか無かった。
ご覧いただきありがとうございます。
ストックが無くなりそうなので、1日1アップにしたいと思います。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。




