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第50話 出航式


戦艦ウリウスの前に大勢のクルーが集まっていた。

これから出航式が始まる。

壇上にはリーダーのミチェイエル女史が立ち、今までの経緯やこれからのこと、そして、この作戦の重要性を説明する。


「皆さんには、これから危険な任務が待っています。ですが、誰1人欠けずに帰ってくることを心から願っています」


そんな感じで挨拶が終わると乗艦となった。

俺は関係者ではないので並ばず、脇で聞いていた。


「こういうのはテレビで見たことがあったが、本当にやるんだな」


変なところに感心しながらも、俺も船に乗り込んだ。



艦内は出港準備で大混乱だ。

聞く話によると、殆どの者が乗船経験が無く、戦艦を動かせる者になると一握りの人しかいないという。


「大丈夫なんだろうか……」


物資を大量に抱えた乗員が廊下を走っていく。

他に何をやればいいか分からず、ウロウロしている者さえいた。

どうなっているの?


「早まったかな。生きて帰ってこれると良いが……」


一応、教育はしているようなのでそれを信じるしか無い。

と言うよりも、やるしか無いのだから。


「レジスタンスなんて、しょせんは素人の集まりだからな。乗船経験ある方が珍しいのかかもしれない」


基本はAIがやってくれるし、言われたことをやっていれば良いだけなので難しいことは無いという話だが、戦闘になったとき、冷静でいられるかが疑問だ。

慌てなければ良いが。



出航時刻になり、船が浮き上がっていく。

外では見送りの仲間やクルーの家族で溢れていた。

俺は景色が見える休憩室で、窓から外を眺めていた。

初めての宇宙、興奮しないわけがない。

地上が遠くになるにつれて気分が高揚する。

上を見上げると、宇宙が手に届く距離にある。

異世界に来てまさか宇宙に行けるなど想像もつかなかった。




「作戦の進捗状況は?」


グランバーがエミリーに尋ねた。

ブリッジにはこの2人の他、艦長のロズルトとブランニュー博士、操縦士のダミアンと航海士のリュック。その他、戦闘艦乗船経験者が数名集まっていた。その中には、シューイチにレクチャーしたローズの姿もあった。


「第18都市の基地から巡洋艦3隻が発進したわ。後は時間を合わせて宇宙に上がる予定よ」

「開始時間までは任せる。ジェネレーターの出力はどうだ?」

「安定しているようじゃ。問題ない」


ブランニュー博士が画面を見ながら答えていた。

今回、オズエルは乗船していない。

彼は船の実験の時に、既に自分は関係無いと分かっていたので辞退したのだ。彼に原因があれば実験時に起動したはず。そうならないのは関係無いということだからと。


「博士。なにも貴方が来る必要は無かったのでは?」

「何を言う。こんな素晴らしい研究対象を前に基地で寝ていられるか。わしは最後まで付いていくぞ!」


嬉々と話す姿を見ると何も言えなくなった。

ただ、古代船は謎が多いと聞く。そういう意味では、博士がいることは心強かった。


「異常は無いか?」


各オペレータから「異常無し」との返答があった。

ここまでは順調だ。


「俺、必要か?」


艦長席に座っているロズルトが苦笑している。

艦長はロズルトになるが、実際に指示を出すのは俺になっている。


「必要に決まっているだろ。お前がいないとAIが指示を受けない。とても重要だ」


ちなみに俺が指示を出したが受付けなかった。

やはり艦長権限を持っているのはロズルトということだ。


「結局はこのAIなんだな」

「これが一番相性が良かったと聞いているが」


メインモニターに女性士官が映っていた。

これは最初に付いていたAIボックスのAIで、これが一番良い結果を出したと聞いている。

今回それを取り付けたようだ。


「グランバー。巡洋艦が星系軍に見つかったわ。戦闘に入るそうよ」


連絡を受けたエミリーが報告した。


「わかった。向こうが戦闘状態に入ったら高度を上げ、宇宙にでる。上がる準備をしろ。隔壁閉鎖。ハッチをロックしろ。シールドチャージ開始」

「「了解!」」


やれやれ宇宙か。

まさか俺が宇宙に上がるとは思いもしなかった。



*****



「今回の作戦司令官はグランバーにやっても貰います」


会議でミチェイエルが俺を指名した。

一瞬、なぜ? と思ったが、横に座って苦笑しているロズルトを見て、何となく察した。

彼が推薦したのだろう。AIに指示を出せるのは彼だけと聞いていたからだ。


「ロズルトには艦長の経験は無いわ。だから貴方にお願いしたいの。元星系軍宇宙第1特別部隊隊長だった貴方に」


レジスタンスに入る前にはこの星系とは違う場所で軍に所属していたが、それをここで持ち出すのか。

全員の視線が突き刺さる。


「隊長だったけど乗っていたのは巡洋艦だ。戦艦を指揮したことはない」

「それでも艦長だったのでしょ? なら同じ事です。大きいか小さいかの違いだけで」


そう言って微笑む。

全然違うと言いたいが、言えるような雰囲気ではない。

彼女の笑顔がそうさせているのだ。


「ロズルトはグランバーの指示に従ってAIに指示を出して下さい」


ロズルトは小さく頷いた。


「それと彼も乗せます。何か困った事があれば彼を頼ればよいでしょう」

「それは必要なのですか?」

「とても。嫌がるようでしたら彼がだす条件を全て飲んでも良いわ。それで従わせて」

「俺としては信用できない人間を乗せたくはないのですが」

「わかっています。ですので貴方の判断に委ねます。彼をどう扱うかは」


別な世界から来たと聞いたが、とても信用できない。

戦艦を強奪するときは役に立ったがそれだけだ。

恐らくだが彼を使うことはない。部屋で大人しくさせておく。


「後はグランバーに任せます。この作戦を立案したのも貴方なのですから、私より詳しいでしょう。よろしくお願いしますね。それと2人のことも」


そこまで言われたら断る事はできない。

俺は頷くしかなかった。



ご覧いただきありがとうございます。

ストックが無くなりそうなので、1日1アップにしたいと思います。

書くのが遅くて申し訳ございません。

気長に付き合って下さると嬉しいです。

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