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第49話 星系軍②


部屋で書類に目を通していると、若い青年が1人、すうと入ってきた。

ノックもせず、気がつけば最初から居たような感じでこちらを見ている。まるで幽霊のように、存在を感じられないほど気配を消していた。


「……来たか」


驚きもせず、普通に会話する。

これが2人の日常だった。


「報告します。革命軍の次の作戦は、この惑星を出て領都に向かう、との事のようです」

「予定通りか……」


そのための戦艦強奪だ。当然といえば当然だな。


「向こうもやるようだな」

「はい。まさかここまで上手くやるとは思いませんでしたよ」

「何を言っている。そのために情報を渡し、当日人払いをしたのだ。上手くいかなくてどうする。こちらも手を貸しているのだから」


戦艦強奪の情報は前もって知っていた。そういう情報を貰っていたからだ。

だからこちらも手を貸したのだ。

こんなくだらない戦争を早く終わらせるために。


「で、代官は何か言ってなかったか?」

「はい。聞いた話によると、たいそう憤慨したそうで、グラスを士官に投げられたと聞きました。運良く当たらなかったそうですが、その後は我々を疑って、わざと逃がしたのでは無いかと言わたそうです」

「フッ、我々を疑ったか。あながち間違ってはいないが。だが、上手く逃げたのは革命軍の実力だ。こちらはそこまで手を貸していない」


我々も戦艦の性能は知っていた。だから反撃し撃退したと聞いた時は自分の耳を疑ったぐらいだ。

それ程の性能は無かったはずだからだ。


「大丈夫ですか、戦艦を渡しても?」

「大丈夫だ。ウリウスで攻めない、という条件で手を貸したのだ。こちらに牙を剥くことはしないはずだ」


ウリウスを渡してこちらが壊滅しては元も子もないからな。それだけは約束させた。


「彼らが約束を守ると?」

「問題ない。保険は掛けてある」


向こうの情報も貰っている。約束を破ればどうなるか、それぐらい分かるはずだ。だから心配する必要はないだろう。


「それよりも例の調査はどうなった?」

「例の彼ですか? 調べましたがちょっと分からない事が多くて判断に困っているところです」


我々の包囲網から二度も逃げた男。一度目はショッピングモールから。二度目は革命軍に邪魔されたが、結果は逃げたことに変わりは無い。

そしてそいつだが、どうやってあの包囲網か逃げたのか。それに兵士との戦闘に使ったあの兵器は何なのか。それを調べさせていたのだが、あまり有力な情報は入ってこなかった。


「言って見ろ」

「はい。何でもそいつは元勇者らしく……」

「ん? 元勇者?」

「はい。元勇者らしく魔法で倒したと」

「……」


俺は自分の耳を疑った。

魔法で倒したなど、漫画ではあるまいし。


「冗談を言っているのか?」

「そうですよね。自分も話を聞いた時は自分の耳を疑いました。でも本当のことのようですよ」


魔法?

この世に魔法があるのか?

すると、ショッピングモールから逃げたのも魔法を使ったからか?

……わからない。

なるほど、こんな話を聞かされれば部下も混乱するはずだ。

報告するにもできないだろう。


「それ以外のことは?」

「名前が分かりました。シューイチというそうです」

「シューイチ? 何者だそいつは。この辺りでは聞かない名前だな」

「私も調べましたが、どこの出身かは分かりませんでした。だから密航者では無いかと」

「密航者か……この惑星の人間ではないということか」


船の管理も万全ではない。

荷物に紛れて乗り込むような奴はいるし偽名を使って乗っている奴もいる。

密航者を防ぐ方法は無い。


「全惑星の名簿にそれらしき名前はあったか?」

「それが、今は亜空間通信が使えないのでそこまでは」


そういえば亜空間通信は使えなかったな。だが、それは全部嘘で実際は使えるはずだが、上の連中が使えないようにしている。

まったく困ったものだ。

いつまでもそんな嘘が通用すると思っているのだから。


「まぁ、良い。急いで調べる事でも無いだろう。それよりも奴らの不正の証拠は手に入ったか?」

「はい。彼らの情報端末機からデータをコピーしました。後はそれをどうやって届けるかですが」

「それはこちらでやる。お前はそのデータを私に預ければいい」

「分かりました。これがそのデータカートリッジになります」


鉛筆サイズの小さな棒を渡した。

それに不正のデータが全て入っている。


「これを公表するだけでは駄目ですか?」

「俺が公表しても、ねつ造した物として逆に訴えられるだけだ。向こうの方が階級は上なのだからな。それにまだ奴を信頼している部下もいる。そう簡単にはいかないだろう」

「そうですか? 隊長も負けていないですよね。部下という点では。隊長を信頼してる部下も多いと聞きますが」

「そういうのは俺には分からん。ただ、そんなことをして同じ軍の仲間と争っても何一つ良いことはない。無駄な血を流すだけだ。それだけは避けたい」


クーデターなどしても喜ぶのはドラギニス公国だけだ。それに俺は指導者になるつもりはない。そのような器でもないしな。だから穏便に済むのであればそれに越したことはない。仲間の兵士が死ぬ姿は見たくないのでな。


「ふむ、確かに受け取った。これでお前も少しは休めるだろ?」

「何を言っているのですか、隊長は。これで自分の仕事が終わるわけないですよ。他にまだまだ仕事は残っているのですから」


そういえば他にも指示を出した記憶がある。

まだ休めないということか。


「それは悪いことをしたな」

「まぁ、仕事ですから」


男はそう言って苦笑いを浮かべると部屋を出て行った。

休む暇もないらしい。

まぁ、そういうふうにしたのは俺だが。


「……今の話は聞いたな」

「はい。聞きました」

「では、これを頼む」


背後から現れた男にデータカートリッジを渡した。


「間に合うように届けるのだぞ」


男は頷くと出ていた。


「上手くいってくれると良いが……」


席を立つと窓から外を見つめた。

今日も快晴で雲一つ無い青い空が続いている。

だが、それと裏腹に隊長の表情は曇っていた。

これから始まる作戦を知っているだけに気分は憂鬱だった。



ご覧いただきありがとうございます。

ストックが無くなりそうなので、1日1アップにしたいと思います。

書くのが遅くて申し訳ございません。

気長に付き合って下さると嬉しいです。

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