第4話 初めての戦闘①
30分ぐらい走ったか、飛行機の飛んでいる音や機銃音が聞こえてきた。そして爆発する音。どうやら戦闘しているようだ。
木に登り、戦闘音がしている方向を見ると、巨大な飛行機が飛んでおり、先程見た戦闘機がそれと戦闘を繰り広げていた。
「これはやばい奴だ」
今回は異世界の戦闘現場に召喚されたようだ。
俺の斜め上をいく出来事であっけにとられてしまった。何て所に召喚したんだ、く○神様。
頭が痛くなってきた。
でも、科学が進んでいる世界なら食事は美味しいかもしれない。飯の心配をしなくてよいのは僥倖かも知れない。
「しかし、何だあの飛行機は? いや飛行機とはいえないな。強大なタンカーが浮いているよ。飛行船? あれで飛べるものなのか?」
もう、漫画やアニメの世界だ。あらゆる法則を無視してやがる。翼が尾翼もない。どうやって動かしているのか謎だった。
「形勢は……飛空船のほうが有利のようだな。戦闘機の攻撃が当たっていない? バリアみたいのが張られているのか?」
機銃の弾が膜みたいので弾かれていた。
「これは一方的な展開になりそうだ」
飛空船に搭載されている砲塔で、戦闘機が次から次へと打ち落とされている。
勝負が付くのは時間の問題だった。
「あっ、また当たった」
目の前を飛んでいた戦闘機が被弾した。煙を吐きながら墜落していく。爆発せず地面に不時着したようだ。
俺は気になり、その戦闘機を見に行くことにした。というか、興味津々で気になって仕方がないのだ。戦闘機なんて身近で見れる物でないのだから興味が湧いても仕方がない。しかも男の子なら当然でしょう。
墜落現場にダッシュした。
*****
戦闘機は森から少し外れた空き地に墜落していた。
翼の当たりから煙が出ているが、爆発する気配はない。
自動消火システムでも積んでいるのか、煙も少しずつ収まってきた。
「操縦者は生きているのか?」
前方のコクピットに近寄ると、コクピットのガラスが粉々に砕けており、中の人がそれに突き刺さっていた。どうやら着陸した衝撃で破損し、それがそのまま刺さったみたいだ。
「魔法で治療を、というレベルでは無さそうだ」
中は血の海で既に事切れていた。いくら魔法でも死んだ者は生き返らせられない。神でもなければだ。
「運の悪い奴だ。生きていれば救えたのに」
俺は手を合わせて合掌した。
初めて会った異世界人が死体とは。幸先が良さそうだ。
「しかし、これは困ったな。せめて今の状況と街がどこにあるか、場所だけでも聞ければと思ったのだが……」
さすがに野宿は嫌なので街の方向だけでもと思ったが駄目だった。そうなる戦闘機が飛んできた方向に向かって歩くしかないが……。
「ん? 誰か来たようだ」
俺の探知魔法に無数の反応があった。
目の前に赤い点がいくつも現れ、その方向を示していた。
探知魔法とは、わかりやすく言えばレーダーみたいな物で生物などに反応する。
それ以外にも敵意などを調べるときにも役に立つ。好意的な奴は青く光るし、敵意がある奴は赤く光る。今は真っ赤っかだった。
「かなり多いな……20人ぐらいはいるか? こいつの仲間か?」
チラッと遺体を見て呟く。
ただ、20人という数は多すぎる。敵対している兵士の可能性もあるが、取りあえずは接触してみてからだ。相手の反応を見てから対応を決めよう。
場所を移動し、戦いやすいところを選ぶ。
戦闘になった場合、森が近いと使える魔法に制限が掛かる。火魔法は火災になるので使えないし、土魔法も木が邪魔して作り出せない。
そういうのがあって、森から距離を取った。
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