第40話 ブランニュー博士の調査
「どうです、ブランニュー博士。原因はわかりましたか?」
「調べておるが原因は分からんのう。突然、ジェネレーターの出力が上がったのじゃろ? 普通に考えてそれはありえんのじゃが……」
白衣を着た老人が首を捻っていた。
ブランニュー博士は古代船研究者の第一人者として有名で、いくつもの古代船を調査し、改造してきた人物である。
歳は70を越えているが、まだまだ元気で、こうして得た知識で戦艦などの改造も手がけていた。
「データを見ると確かに出力が上がっておる。しかも今まで以上の出力が。一時的に制御ができたということか。分からんのう……」
出力を上げるにはリミッターを解除しなければならない。しかし、リミッターを解除するにはセキュリティーを突破し、尚且つ、制御用モジュールを付けなければならない。それで初めてコントロールできるようになる。
今回は、その制御用モジュールは付いていたが、リミッターは外れていない。それはデータを見れば一目瞭然で、出力が低かった。
なのになぜ突然出力が上がったのか?
私たちはその原因を調べていた。
「今はどうじゃ? オズエル」
「それが、一度ジェネレーターを落としたら起動しないのです。どういうことですかね、博士」
「わからん。原因があるとすれば制御システムに問題が発生したとか……まずはサーバールームにある制御用のAIボックスを調べ見るかのう。考えられるとしたら、あれしか考えられんからのう」
ブランニュー博士と私はサーバールームに戻り、壁の奥に取り付けてある制御用AIボックスを取り外し、中身を調べた。
「ふむ。これはドラギニス公国で使われているAIボックスじゃな。まさかこのような物を使うとは」
ドラギニス製のAIボックスは粗悪品が多く、直ぐに壊れるという。
それに不明な技術が多数用いられており、意味不明なプログラムも確認されている。
帝国では使用を禁止しているAIボックスだ。
「このボックスが原因では無いでしょうか?」
「確かにドラギニス製のAIボックスは謎が多いが、あそこまでの出力を出すことはできん。恐らく違うだろう。解析して見るまではわからんが……」
博士は、「こんな怪しい物は付けられない」と言い、AIボックスを外すことにした。
「ですが博士、AIは女性士官でしたよ。ドラギニス軍だったらそのようなものは使わないと思いますが」
「映像だけ差し替えたのじゃろう。この船の所有者の趣味に合わせてのう」
「趣味? ……ああ、そういうことですか」
ここの領主代行は金髪の女性好きだという噂だ。
だからそれように差し替えたと言うことか。
「しばらくはこの古代船の調査じゃな。それと新しいAIボックスを用意せんといかんのう」
「それは私にお任せ下さい。今以上の物を用意しますよ」
他の船から外したAIがあったはず。しかも最新の。
それを代わりに付けることにした。
「後は外装をどうするかじゃが……」
「外装などは、そのまま使えそうですが」
「星系軍の物をそのまま使うわけにはいかんじゃろ。せめて塗装をし直すとか、外装の一部を張り替えるとかしないと、後で色々と文句を言われ面倒になるのでのう」
見た目が一緒というのは何かと都合が悪いそうだ。一目で盗んだ物と分かってしまうし、批判が集中したさい、言い訳ができない。
だから、これはレジスタンスの物と分かるようにしなければならない。そういうのは士気に関わるので大事なんだそうだ。
「そういえばこの制御用モジュールだが、何かおかしくは無いかのう?」
AIボックスの近くにある制御用モジュールを見ながら、ブランニュー博士が首を傾げた。
私には普通に見えるがそうではないらしい。
「そうですか。普通の制御用モジュールに見えますが」
「ふむ……」
ブランニュー博士は制御用モジュールを外し、くまなく調べ始めた。そして持ってきたノートパソコンに繋ぐと難しい顔になった。
「やはりおかしい。中のプログラムが全て消えておる」
「え? それはあり得ないですよ。データを見る限りではきちんと動作していましたよ。ジェネレーターの出力も安定していたし」
制御用モジュールが無ければジェネレーターの出力調整ができない。それどころか、安定して出力することもできないのだ。
だから必ず付いている物で、動かない、などはあり得なかった。
「制御用モジュールが機能していなかったから、出力が上がったのかのう?」
「でも、突然ですよ、出力が上がったのは。最初から機能してなかったら最初から出力が上がってたはずです」
「ふむ……では、誰かが後で消したとか?」
「誰かとは誰ですか? あの場にいたのは我々だけですよ。消せるような人はいませんよ」
中のプログラムを消すには、それなりの専門知識が必要となる。素人ができるものではない。
「そうなるとわからんのう。他の場所も調べるか」
結局、制御用モジュールのプログラムが消えていた理由は分からず、私たちは、益々頭を悩ますのだった。
ご覧いただきありがとうございます。
ストックが無くなりそうなので、1日1アップにしたいと思います。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。




