第39話 報告
「見えてきたわ。あれが港の入口よ」
エミリーがメインモニターに指を指す。そこには森を切り開いてできた基地があり、船が停泊できる港ができていた。
「あそこに入れば、もう、安心だわ。私たちの仕事は終わりよ。後は技術者に任せるだけだわ」
何でもこの船を改造し、あの新造戦艦に勝てるようにするとか。
俺から言わせて貰えればその必要は無いと思う。
ダンジョンコアが目覚めたのであれば、今までとは違うはず。かなり戦闘力が上がっているはずだ。
だが、その事は言えず黙っていた。
まぁ、後は勝手にダンジョンコアが何とかするだろう。しばらくの間は。
俺はこの古代船のマスターになる気はない。
というか、なれないだろう。こんなの個人で持つような物でない。整備や補給を考えると無理という物だ。
だから、どうすれば良いか考えている。
このまま放置でも良いが、それだと魔力を補充できる人がいないので、魔力が切れればまた眠りに付く。果たして今の状況を考えると、それは得策では無い気がする。
それに任務が終われば、俺はここを離れないといけない。
どうしたものか……。
そんな事を考えていると、いつの間にか基地に到着し、ドックに入っていた。
そして着陸すると、大きな歓声が上がった。
レジスタンスの暇な連中が見に来ていたのだ。
「人気者になったな」
俺はニヤニヤしながらロズルトに言う。その当の本人は眉間に皺を寄せて、困っている表情をしていた。
「そんな者になるつもりは無い。できればそっとして置いて欲しい物だが……」
目立つのは嫌いらしい。
だが、これだけの事をしたのだ。それは無理というものだ。
彼らに手を振りタラップから出るレジスタンスメンバー。そこにはグランバーが待っており、笑顔でロズルト達を迎えていた。
俺は関係者では無いので彼らから少し距離を取り、関わらないことにした。何だか面倒臭そうだから。
俺たちは報告を兼ねて司令室に通された。そこにはリーダーのミチェイエル・ボルトン女史が待っていた。
「みなさん、お疲れ様でした」
そう言ってニコッと微笑む。
やはりというか、ミチェイエル女史が関わってたか。まあ、これだけの作戦になれば知らない方が不自然か。
進められるままに椅子に腰を下ろすと直ぐにお茶が出された。
「よく戦艦ウリウスを奪取して頂きました。これで我々の作戦も次の段階に進むことができます。重ね重ねありがとう」
そう言って頭を下げる。リーダーが簡単に頭を下げるなど、と思っていたが、これがこの人の人心掌握術なんだろう、全員が嬉しそうな顔をしていた。
これに釣られてレジスタンスに入る奴がいるのかも知れない。
「ロズルトには無茶なことをお願いして申し訳ないわね」
「まぁ、仕事ですから」
ちょっと照れているロズルト。
中年のおっさんが照れている姿は見られた物ではないな。
「エミリーも大変だったわね。私としてはあなたを預かる身として行かせたくは無かったのですが、戦艦に乗船したことがあるオペレーターがあなたしかいなかったから」
「わ、私は別に何とも思っていませんから。それに危険とは思っていなかったので……」
そう言って俺の方をチラッと見る。
まぁ、俺の仕事は護衛みたいなものだからね。
生きて連れ帰ってくれと言われた以上は約束は守るよ。
「オズエルも危険な場所と分かっていて行って貰いました。本来のあなたの仕事ではないのに。とても感謝しています」
「いや、戦艦に興味がありまして。それがまさか古代船とは。驚きましたよ。ハハハ」
その後はどれだけ大変だったか、オズエルが説明し始めた。ミチェイエルはニコニコしなが話を聞いていた。俺はうんざりしていたけどね。
「そして、シューイチ殿にもご迷惑をお掛けしました。あなたの魔法があれば戦艦を奪うことが可能だと判断したので作戦を実行しました。そして思っていた以上の成果を上げてくれました。心から感謝します」
再び頭を下げるミチェイエル女史。
俺の魔法があれば、とはどういう意味だ?
俺は攻撃魔法しか見せていないはず。役に立つ要素はどこにも無いが。
「……どうして俺を?」
「貴方のことはエミリーに聞きました。元勇者だとか。それで私の方でも様々な文献を調べました。そしてアニメや漫画なども。この年で漫画を読むとは思いませんでしたが」
当時の事を思いだしたのか苦笑している。
なるほど、俺では無く勇者のことを調べたのか。
「魔法には色んな種類があるそうですね。身体能力を上げる魔法や、我々が見た攻撃魔法も。それに姿を変える幻影魔法なども。相手の精神にも干渉するような魔法もあるそうですね」
「なるほど。基地に侵入するのに便利な魔法があると思ったからと」
「全ての魔法を知っているわけでは無いですが、きっと便利な魔法もあるはずです。それを期待して貴方をメンバーに入れたのです。そして、誰にも怪しまれず、基地に侵入することができました。あれは貴方なしでは無理だったでしょう」
手の平の上で転がされていたということか。
やはり食えないなあ、ミチェイエル女史は。
「今回だけにしてくれよ。あんなのはもう懲り懲りだ」
本当、勘弁してくれよ。また、ダンジョンコアに出会ったらどうなるのだ?
マスターとか呼ばれ付いて回られても困るだけだし、面倒見切れないね。
「ええ、分かっています。貴方は我々が思っていた以上の働きをしてくれました。戸籍の件はこちらで用意します。できたら受け取って下さい」
「良いのか? まだエミリーは魔法を使えていないが」
「魔法を覚えるのに半年は掛かるのでしょ? さすがにそれまでは待てないでしょうから、魔法の件とは別として差し上げます。それで終わりと言うことで」
「それじゃ、俺の役目は終わりということか?」
「別にこのまま居ても構わないのですよ。我々は常に人手不足ですので、貴方のような方が居れば、それだけで戦力になりますからね」
「考えておく。後は報酬次第だな。しばらくは自由にさせて貰うよ」
「戸籍ができても外には出ないでくださいね。貴方はまだ星系軍に追われている身。捕まっては困りますので」
俺は頷いた。
例え戸籍ができたとしても指名手配されているので出られない。結局は星系軍を倒し、指名手配を取り消さないことには自由になれないのだ。
しばらくはここで厄介になりそうだ。
ご覧いただきありがとうございます。
ストックが無くなりそうなので、1日1アップにしたいと思います。
書くのが遅くて申し訳ございません。
気長に付き合って下さると嬉しいです。




