第36話 戦艦での戦闘①
ブリッジに入ると出航準備に手間取っているようだ。
ロズルトは一番高い席、艦長席に座り、何やらコンソールを弄っているが上手くいっていないようで、難しい顔をしていた。
「すぐに出港できそうか?」
俺が尋ねると首を横に振る。
「AIが起動しない。それが起動しなければ、我々だけではこの船を動かすことはできない。今はそのAIの起動方法を調べているところだ」
マニュアルでも動かせるそうだが3人では無理らしい。
今はAIを起動させる事に全力を傾けている最中なんだそうだ。
「エミリーは?」
「私は艦内のセキュリティーを調べているわ。それと今はハッチの開閉操作を覚えているところ」
警備システムをオンにすれば、兵士が乗り込んで来てもここまではたどり着けないという。何でもシャッターが降りてきて通路を塞ぐとか。
さすがに船の中では魔法は使えないので、そういうのは任せることにした。
「オズエルは……」
ブリッジの角でコンソールの下に潜り込み、蓋を開けてノートパソコンらしき物を接続していた。
何を調べているのか不明だが、こちらも難しい顔をしていた。
「何をやっているんだ?」
「ん? この船のことを調べている。この船は古代船だ。どのような性能があるか調べないと戦闘になった時に困るだろ? だからセンターサーバーに繋いでデータを抜いているのさ。でも、どうもうまく起動していないようなんだ。データを見ると、主砲は本来の30パーセントぐらいの出力しか出てないし、速度もその半分ぐらいしか出てない。明らかにジェネレーターの出力不足が原因だ。なんでこんな事になっているのか分からないが、原因があるとすれば……」
そう言ってブツブツ言いながら、また難しい顔をしていた。
もしかして、ダンジョンコアの魔力不足が原因では無いのか?
だから本来の性能が発揮されていないのだろう。
だが、今回は俺が魔力を注いだのでもう少し動けるはずだ。
でも、このことは内緒だけどね。
「まぁ、飛ばないことはどうにもならないと思うが」
「それについては目処が立ちそうだぞ。見てみろ。AIが起動しただろ」
中央にあるメインモニターに何か映っている。女性の姿でなぜか軍服を着ている。女性士官だ。軍が開発したAIだからなのか、趣味が良いとは思えなかった。
『システム起動中です。しばらくお待ちください』
AIが流暢に話した。さすが未来のAI。ちょっと感動した。
表情も豊かでニコニコと微笑んでいる。金髪のお嬢様、という感じで容姿も悪くない。
もしかしたら実在のモデルでもいるのかも知れない。
とてもAIという感じには見えなかった。
『全ての起動を確認しました。おはようございます、ロズルト艦長。本日の命令をお願いします』
データの書き換えも上手くいったようで、ロズルトを艦長として認識したようだ。
さすがオズエルということか。
全員がAIを見て感動していた。
「よし、出港準備だ。ジェネレーター始動。開いているハッチは全て閉鎖。誰も乗せないように』
『了解しました、ロズルト艦長』
ブリッジの各コンソールに付いているモニターが一斉に光り出した。
全てオンになったということだ。
ブリッジから外を見ると慌てている兵士の姿が確認できた。奴らも、まさか船が動くとは思っていなかったのだろう。かなりの人数がハッチに集まってきた。
「エミリー、司令室に連絡を。作戦は成功したと伝えてくれ。これから帰投すると」
「分かったわ」
エミリーは通信係もできるようだ。
どうして彼女が今回のメンバーに選ばれたのか謎だったが、これではっきりした。彼女は船のオペレーターができるのでメンバーに入れられたのだ。
まさか彼女にそんな技能があるとは。
人は見かけによらないとはこういうことか。
「こちらエミリー。作戦は成功したわ。先ずは手はず通り格納庫ドックのゲートを頼むわ」
格納庫には入出港用のゲートがあり、そこが開いていないことには地上に出ることはできない。
なので開けて貰うようだ。
「連絡はしたわ。後は仲間が開けるのを待つだけよ」
「仲間?」
「そう、我々に協力してくれている兵士がいるので、その人に遠隔操作で開けて貰うの。私たちでは無理だから」
ゲートの開閉は管制室で制御しているので、こちらから開けることはできない。
なので連絡を取ってもらい開けて貰っているそうだ。
「協力してくれる兵士か……そいつは後で捕まるようなことはないのか?」
「直接開けるわけではないので姿を見られるわけではないわ。だから大丈夫よ」
遠隔操作なのでバレることはないらしい。
それなら良いのだが。
「早いわね、ゲートが開いたわ」
サブモニターを見るとゲートが開いていくのが確認できた。
ロズルトは全て開くのを確認するとシートに座るようにと言った。
安全のために、ということで。
俺は近くの空いているシートに座り、目の前のモニターを見ている。
多くのメーターが表示されているが、さっぱり分からない。こういうのは専門に任せるのが一番で、俺は何も触れず眺めていることにした。
「ジェネレーターの出力は安定しているわ。でも、ちょっと低いかな。飛ぶ分には問題はないと思うけど」
「わかった。では出港だ。AI、頼むぞ」
『かしこまりました。発進シーケンス起動……起動を確認しました。反重力装置稼働を確認。異常ありません』
船がゆっくり浮上した。
振動もそれほど感じず、エンジン音みたいのも聞こえない。
さすが未来の宇宙船。感動した。
後はこれで惑星を飛び出せればもっと感動するのだろうが、これから向かう先はレジスタンスの基地になるとか。
これで終わってくれると良いのだが……。
ゲートを出ると森が広がっている。
基地は森の下に作られていたようだ。
「上空に出たわよ」
「よし。エミリー、現在位置を確認。目的地の座標を入力」
「OK」
「ではAI、座標を確認後、全速前進。最大出力で頼む」
『かしこまりました』
AIが全てやってくれるのは便利だな。何もしなくても良いのだから。
ご覧いただきありがとうございます。
もうちょっとストックがあるので、小まめにアップしたいと思います。




