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第35話 ダンジョンコア②


俺もロズルトの後を付いて行こうとサーバールームを出ようとした瞬間、足を止めた。何か、呼び止める声が聞こえたからだ。


「何だ?」


立ち止まり辺りを見渡すが誰もいない。

空耳かと思い、再度部屋を出ようとした瞬間、女性の蚊の鳴くような細い声が脳内に響いた。


『……待って下さい、行かないで』

「誰だ?」


振り返り当たりを見渡すが誰もいない。

探知魔法にも反応無し。


「人では無い? レイスか何かか?」


ゴースト系の魔物は探知魔法に反応しない。だからレイスかと思った。


「どうしたの?」


突然立ち止まったことで、エミリーが心配して戻ってきた。


「いや、ちょっと気になることがあって。先に行ってくれ。俺も後から行くから」


エミリーはちょっと不審そうな顔をしたが直ぐに頷いて走って行った。

俺は1人残り、サーバールームを見渡した。


「誰だ? 俺を呼ぶのは」


サーバールーム内をよく見ると、先程まで光っていなかったダンジョンコアが薄らと輝いていた。


「お前が呼んだのか?」


ダンジョンコアが一瞬強く光った。

どうやら正解だったようだ。


「俺に何のようだ?」

『……お願いです。魔力を流して下さい』


小さな声が頭の中で響いた。

ダンジョンコアが話しかけているらしい。

さすがの俺もそれには少し驚いた。ダンジョンコアが話しかけるなど一度も無かったからだ。

今まで破壊したコアは輝くだけで何も反応が無かった。ダンジョンマスターになることもなく、制御できるわけでもなかった。

だから破壊していたのだが、こうして会話ができるとなると俺が知っているダンジョンコアとは別物なのかも知れない。


「ここに魔力を流せば良いのか?」


ダンジョンコアが、また一瞬強く光った。

俺は水晶の上に手を乗せ魔力を流す。

すると、ダンジョンコアが強く光り出した。


「……」


しばらく魔力を流したが、一杯になった感覚が無い。底なしのようにどんどん吸われた。


「……おいおい、まだかよ」


元勇者で賢者でもある俺の魔力をほぼ与えても足りないようで、まだ、吸い取ろうとしている。

さすがの俺もこれ以上をやるとぶっ倒れるので、その前で手を離した。


「今はこれが限界だ。足りなければ、また後日だな。魔力が回復してからになる」

『……ありがとうございます。これで船を制御できます』


今度ははっきりと声が聞こえた。

魔力を与えたことで復活したようだ。


「どういたしまして。それでお前は何なんだ?」

『私は神に作られた魔素循環装置です。あなた方が知っている言葉で言えば、ダンジョンコアと呼ばれている物です」


やはりダンジョンコアか。

しかし、なぜそんな物がここに?

何か、厄介ごとの臭いがプンプンしてきたぞ。


「魔素循環装置?」

『はい。一定の場所に魔素が溜まり続けると魔物が強くなり、人間が住めなくなってしまいます。私たちはそれを防ぐために魔素を吸収し、ダンジョン内で仮想の魔物を作り、人間に倒させることで魔素を循環させているのです』

「ちょ、ちょっと待ってくれ。そうするとダンジョンコアは破壊してはいけない物なのか?」


今まで数多くのダンジョンコアを破壊してきた。

それが間違いだったとすると、国や街に多大な迷惑を掛けていたことになるが……。


『ダンジョンコアは破壊されても大丈夫です。また直ぐに新しいのが作られますので。今度は別の場所で』


そのエリアの魔素が落ち着くとダンジョンコアは役目を終えて、敢えて、破壊させるように仕向けるそうだ。

それまでは破壊されないよう階層の奥深くに隠れているので、目の前に現れたときは役目を終えたときだという。

ダンジョンの役目を知って驚いた。まさか自分から破壊されに出てくるとは。


「それなら安心したよ。それで、ダンジョンコアのお前がどうして宇宙船に? 宇宙に魔素でもあるのか」

『私たちは惑星から人類が滅亡したことで(そら)に上がる選択をしました。ダンジョンコアの役目は魔素を循環させ、人類が住めるようにすることです。その対象である人類がいなければ、私たちの存在意義がありません。ですので、その惑星から出てきたのです』

「人類が滅亡した?」

『はい。ですが魔物のせいではありません。人間同士の争いによってです』


ああ、戦争ということね。それで人類が滅亡したと。

あり得る話で否定はできなかった。


『それで私たちダンジョンコアはダンジョンを探査船に作り変えて、移住可能な惑星を探すことにしたのです。我々は魔力が無ければ生存できませんので』

「魔力? ダンジョンコアは魔力が必要なのか?」

『はい。我々ダンジョンコアは人間が放出する魔力を吸収し、エネルギーに変換しているのです』


だからダンジョンに人が入らないと困るので、報酬を用意し、多くの人が来て貰うように仕向けているそうだ。

報酬というのは魔物を倒したドロップアイテムや宝箱のことをいう。


「魔力は魔素があれば作れそうな気がするが……」

『ダンジョンコアにその機能はありません。ですので人間に来て貰うしか、生き残る方法がないのです』


ダンジョンコアだから何でもできると思ったが、意外にも制約があるそうで自分で魔力を作る事は禁止されているとか。

よく分からないが、万能ではないらしい。


『多くの船は、新しい惑星に着く前に魔力切れを起こし、(そら)に彷徨うことになりました。中には運良く、他の惑星に辿り着いたダンジョンコアもありましたが、魔素が無い惑星だったりして、そのまま眠りに落ちたコアも少なくはありません。私は(そら)を彷徨っていましたが、運良く、見つけて貰い、今のような船に改造されたのです」

「これ、改造されたのか!?」

『はい。今のこの船は本来の姿ではありません。外装や内装も本来の物とは別の物が付けられています。この船を無理矢理制御するために』


7割方は違う物で、残っている物はフレームと動力系のジュネレターのみだと言う。

武装も侵略を目的としていないため付けていなかったとか。

何だか面倒臭いことをしているが、何か理由があるのだろう。古代船は謎に満ちているらしいから。


「で、たまたま俺が居たので魔力を要求したと」

『はい。この惑星の人々は殆どが魔力を持っていないので補充できす、ずっと眠っていました。そこにあなたが、マスターが来たことで魔力が補充でき、復活したのです』

「マスター?」

『はい。私たちは魔力がなけれな存在できません。ですので膨大な魔力を持っているあなたに従おうと思います』

「……」


これはやっちまったのでは無いのか?

この船はレジスタンスの所有物で俺の物ではない。いや、今は星系軍の物か。

それを勝手にマスターになっては不味いだろう。

はぁ、どうしたものか……。


「そういえば今の艦長はロズルトになっているはずだが?」

『あの変な機械のことですね。あんな物、私たちダンジョンコアからしてみれば、関係ありません。今すぐ取り除くことも可能です」

「いや、それはちょっと待って欲しい。勝手に外されると俺が困る。この船は俺のではないのでな」

『? 何を言っているのか分かりませんが、この船はマスターの物であるのはこの私、ダンジョンコアが保証します。他の方に権限はありません』


頭が痛くなってきた。

これは何て説明すればよいやら。

でも、知能は高そうなので、今日の任務の内容を全て説明したほうが早いのでは。

彼女? コアなら上手く考えてくれそうだから。

なので最初から今までのことを説明した。


『……なるほど。レジスタンスがこの船を奪いに来たということですか?」

「そういうこと。だから俺が所有者になると都合が悪いんだ」

『それでしたら、しばらくこのままにしておきましょう。当分はその機械に任せるとして私はその間、この船の再構築をします』

「再構築?」

『はい。私が眠っている間、色んな物がこの探査船に取り付けられています。その取り付けられた物を分析・解析し、自分の一部とします。そうすれば、この先色々と役に立つでしょうから。それに、未知の技術は私たちダンジョンコアも興味があります』


すごいなダンジョンコア。こんなに優秀だとは思わなかったよ。


「ダンジョンコアってみんなお前みたいに人格があるのか?」

『人格ではありません。神によって作られた神工AIです。一緒ではありません』


人工ではなく、神が作ったAIということで神工AIか。

だから比べるなよと。


「でも、今まで会ってきたコアはお前のように話しかけて来なかったぞ」

『そのダンジョンコアは既に役目を終えているため、AI機能が停止していたからでしょう。生きているAIは普通に会話します』


役目を終えたからAI機能が停止していたと。

確かに話しかけられれば破壊しにくくなる。

そういうことか。


「それじゃ、一旦、ブリッジに戻る。あとはバレないように大人しくしてくれよ」

『分かりました、マスター。早いお戻りをお待ちしております』


サーバールームを出るとブリッジに向かった。そのブリッジも元々は存在しない物で、後から人間が付けた物だと言うが、いったいどうなっているのやら。

考えるのが嫌になってきた。


ご覧いただきありがとうございます。

もうちょっとストックがあるので、小まめにアップしたいと思います。

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