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第33話 戦艦強奪作戦③


外に出て目の前の大きな建物に向かった。

殆どの兵士が裏のゲートに向かったようだが、それでも何人かの兵士は外に出て警戒している。

やはりというか、作戦は上手くいかなかったようだ。

そもそもそんなに上手くいくはずがないんだけどね。持ち場から離れない奴はいるだろうし。

俺たちは少し離れた木の裏に隠れた。


「やはりいるな」


ロズルトが苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


「どうするのだ? 物陰に隠れて、と言ってもその肝心な物陰などないぞ。一本道だ」


検問所から建物までは舗装された道が繫がっているだけ。

周りには隠れられるような木々や草は生えていない。


「くるっと遠回りしていくか?」

「そんな時間はない」


陽動班も時間を掛けて粘れるほど人が多いわけではないらしい。

多くの犠牲者を出さないためにも、短時間で潜入したいそうだ。俺たちが侵入した時点で作戦が終了するからだ。


「ねえ、どうするの? このままだと先に行けないけど」

「作戦室に連絡を取ってみる。もう少し派手に暴れられないかと」

「でも、そんなことをしたら犠牲者が増えるだけよ」

「それは仕方がない。作戦のためだ」

「……」


エミリーが辛い顔をして黙ってしまった。

多少の犠牲はやも得なしか。


「しょうがない。ここは俺の出番だな」

「何をする気だ?」

「まあ、見ていろって。あそこの建物の前に行けば良いのだな? 後から付いて来い。ただし、静かにな」


俺が無造作に出て歩いて行くと、みんなが驚いた顔をした。俺はそんなの気にせずに堂々と歩く。

途中で兵士と何度も擦れ違ったが呼び止められることがなく、そのまま建物の前に到着すると、残っている連中を手招きで呼んだ。

最初はみんな啞然としていたが、意を決したのか、ロズルトを先頭に歩き出すと、その後をエミリーが、レジスタンスの2人と続き、最後はオズエルが少し遅れて付いて行った。

後ろの三人はおどおどしていて、見ているこっちが心配になる。もう少し胸を張って歩けと言いたい。

それでも無事に到着すると、みんなが安堵の溜息を漏らしていた。


「ふう、生きた心地がしないわ」

「もう二度と御免だな」


レジスタンスの2人も「うんうん」と頷いている。しかし、1人だけ違うことを言っている奴がいた。


「す、すごいな。これが魔法の力なのか? 誰も私たちに気がつかなかったぞ。この力を使えば犯罪が仕放題だな。金を盗むのも簡単にできる」


便利な力を犯罪に利用しようとするのは人間だけだな。

オズエルには魔法を教えることはできない。


「それよりも、ここまで来たの良いがこの後はどうするのだ? 無理矢理ドアを開ければ警報が鳴ると思うが」


正面玄関は閉じており開かない。自動ドアだし中から誰かが操作しないと開かないだろう。


「裏に兵士専用の入口がある。そこから入る」


そこら辺は考えていたようで、全員で移動した。


ドアの前に来ると、オズエルが鞄から1枚のカードを取り出した。

それをドアに近づけると「ピッ」と電子音がして、ドアがスーと開いた。偽造カードキーのようだ。


「このカードを作るのにかなり時間が掛かったのですよ」


カードをヒラヒラさせながら自慢げに言う。

何でもカードを作るのに個人情報が必要で、それを盗むのに軍のサーバーをハッキングしたとか。セキュリティーが高くて突破するのに3日も徹夜したと話した。

それでも突破できたのだからかなり優秀な専門家なんだろう。というか、副業で変なことをしていないか?

先程の発言といい、ちょっと心配になってきた。


「さあ、急ぎましょう。中の方が安全ですから」


解除できたのが嬉しいのか、オズエルが先頭で入って行った。



建物内は誰もいないのか静まり返っていた。

念の為に、探知魔法を発動したが人の反応がない。というか無人だ。

この建物は事務棟らしいので夜間は人がいないのだろう。それでも警備兵ぐらいはいそうだが、そういう反応もない。

外の騒ぎで狩り出されたのか?

誰も居ないのが反って不気味で怖いぐらいだった。


「……静か過ぎるな」

「何のことだ?」

「誰もいない、ということだ」

「全員が検問所に向かったからではないのか? 良いことじゃないか。作戦が成功したということだろ」

「それでも警備兵ぐらいはいるだろ。重要な書類や資料とかもあるだろうし」

「人が足りなかったのではないのか? それだけ攻撃が激しかったのかもしれないな。我々には悪いことではない」

「そうなんだが……」


人がいないことは気にしていないようだ。というか『ラッキー』ぐらいに考えているのかも。

罠という感じがしないでもないが、それにしては監視している兵士がいない。


俺の考えすぎか?


誰も気にしていないし、まあ、何かあれば探知魔法が反応するだろう。しばらくは様子を見るか。作戦が成功したという可能性もあるし。


「それで、どこに向かっているのだ?」

「地下の特別ドックだ。そこに戦艦ウリウスが停泊してる。俺たちはそこへ向かう」


携帯端末を片手に進んでいる。

それには建物内のマップが表示されており、道順が示されていた。


「ドックは地下にあるのか?」

「ああ、衛星軌道上からの攻撃に備え、地下に建設されている。宇宙船があれば簡単だからな」

「ということは、重要施設は全て地下に?」

「出入りが激しい空港などは別だが、軍事施設は狙われやすいので地下に建設するのが主流だな。この建物の地下はドックになっているはずだ」


なるほど。

宇宙船があるとそんなことも簡単にできるのか。

地上に安全な場所はないのかもしれない。



迷うことなく、地下に降りるエレベータに辿り着くことができた。

地下のドックに行けるのは、このエレベーターと資材などの搬入口がある別の施設だけ。多くの兵士はそっちの施設を利用する。このエレベーターは上級士官が乗艦するために使うそうだ。


「夜間はこっちのエレベーターは使われないのでね。それでこっちのルートを選んだんですよ」


オズエルがそう説明し、偽造カードキーを使ってエレベーターを呼ぶと全員で乗り込んだ。


「ところで、天井にある監視カメラは大丈夫なのか? もろに映っていると思うが」

「それは大丈夫です。仲間が警備システムに侵入して、エレベータの監視カメラの映像は差し替えてあるはずです。見られている心配はないかと」


オズエルの話では、すでに一部の監視カメラは差し替えてあるそうだ。


「凄いな、そんなことまでできるとは。スパイ映画を見ているみたいだ」

「カードキーを作るついでに警備システムに細工をしておいたのです。こちらからでもアクセスできるように。今は作戦室でも、監視カメラの映像が見れているはずです」

「それじゃ、カメラは気にする必要はないと?」

「私たちが請け負ったのは、この建物とドック内の警備システムを無効にすることです。問題は巡回している兵士がいること。それだけは警備システムを弄ってもどうにもできませんので」


時間で兵士が巡邏しているそうだ。そればかりは警備システムではどうにもできないので、こっちで何とかしないといけないらしい。


「そっちの方が大変ということか……」

「それも考慮した上での陽動作戦です。巡回の兵士も応援に向かって居ないと思います」

「なるほど。陽動作戦はこっちにも関係していたのか」

「ですが、あの魔法があれば作戦が失敗しても何とかなるのではないですかね。気づかれないのですから」


嬉しそうに満面の笑顔で話している。最初は疑っていたくせに。


「しかし、魔法がなかったらどうするつもりだったのだ? 強行突破でもするつもりだったのか?」

「その時はこの2人に騒ぎを起こして貰う予定です。ドック内で騒ぎを起こせば、いくらなんでもそっちに兵士が集まるでしょうから」

「それじゃ、この2人は?」

「陽動要員です。最悪は、彼らが兵士を引き付ける予定です。そのために一緒に来たのですから」

「それって……」


彼らに死ねと言っているようなものだぞ。

まさか彼らを囮にするとは。

それでこの2人を付けたのか。

どうして居るのか疑問に思ったのが、そういう理由があったとは。


「君たちはそれを理解しているのか?」

「はい。作戦ですから」

「覚悟の上です」


話を聞いていた2人は笑顔で話す。

こんなことをしてまで手に入れないといけない(せんかん)なのか?

俺には理解できない。



話しているうちにエレベーターが地下に到着した。

降りるとひんやりした空気が頰を刺し、薄暗い通路が左右に伸びている。

マップを見ると、この通路を右に行くようだ。

それに従って歩いていくと突き当たりにドアがあり、開けると広い空間に繋がった。

ここが地下のドックらしい。

目の前には見たことのない戦艦らしき物が停泊していた。


「以外と大きいんだな」

「いや、これは巡洋艦で小さい方だ。戦艦はもっと大きい」


見惚れているに俺にロベルトが説明してくれた。初めて見る戦艦に興味津々で、声を掛けられるまで見続けていた。


「行くぞ。兵士が来る前に」


周りには誰もいない。巡回の兵士も見当たらなかった。陽動作戦が上手くようだ。

彼らを犠牲にしなくて良かったと、ホッと胸をなで下ろす。死ぬにはまだ若すぎるからね。



ドックはかなり広い。

T○Lよりも広いんじゃないだろうか。

停泊している艦が9隻もあり、全て同じデザインの戦艦が並んでいる。同型艦というやつだな。細長く、I型と言った方がわかりやすいか。

その艦を尻目に特別ドックを目差す。

やがて、他とは違う戦艦が見えてきた。

大きさはこの間見た戦艦よりは小さいが、それでも400メートル以上はありそうだ。

白く塗られた装甲が特徴で、主砲がいくつか積んでいる。ただ、主砲には砲身がないのでレーザー砲というやつだろう。俺が知っている日本の軍艦とは違い、かなりスタイリッシュなデザインをしていた。

二等辺三角形で船首が尖っている?

艦橋も後方に付いていて、どちらかというとアニメとかで出てきそうな感じ。SF映画に出ていたデスト○イヤーに近かった。あれよりはスマートでごてごてしていないが。


「見張りがいるな」


乗り込むには左舷にあるタラップから入らないといけないが、兵士がタラップの前に立ち見張っていた。ここには警備兵を置いていたようだ。

それに、艦内に入るハッチも閉じているので、まずはそれを開けないとどうにもならない。

一旦、近くにあるコンテナの裏に隠れることにした。

そこでどうするか話し合った。


「兵士がいたな。どうするのだ?」

「さすがに全員は向かわないか。オズエル、例のカードキーでハッチは開けられるか?」

「私が持っているカードじゃ開けられないね。権限が低いと思う。艦長や副艦クラスでないと開けられないんじゃないかな。それか、中から開けて貰うか」

「無理ということか。他にも入口がないか調べよう」


他から乗り込むことができないか確認するため、戦艦の周りを見て回ることになった。

当然、大勢だと危険なので俺だけで回ってみた。インヒビションの魔法が掛かっているので、堂々と歩いている分には怪しまれないはず。

その結果、船尾のハッチが開いており、そこから乗り込めそうだとわかった。


「そこしか開いていないのか……」

「一応言っておくが、そこにも見張りの兵士が立っていたぞ」

「しかし、魔法があれば大丈夫だろ?」

「多分な。念の為、かけ直しておくか? 解けていたら面倒だから」

「頼む」


もう1回呪文を唱え、かけ直しておいた。


「これで音を立てなければ大丈夫なんだよな?」

「心配性だな、ロズルトは。大丈夫だ。足音を立てなければ気づかれないから」

「はぁ。また、ヒヤヒヤするのか……」

「それが嫌なら見張っている兵士を倒して入るか? 背後から近づければ気づかれずに倒せるが」

「いや、止めておこう。兵士に何かあると通報が行くかもしれない。騒ぎを出さず忍び込めるなら、それに越したことはない」


俺は頷いた。

そして全員で格納庫のハッチへ向かった。



音を立てず忍び込む。

警備兵の横を歩いたが気づかれることはなかった。というか、眠そうな顔で立っているので、これではちょっとやそっとでは気がつかないだろう。上では騒ぎになっているはずなのに、のんきなものだ。

ここには何も指示が来ていないようだ。


「……気づかれていないよな」

「音を立てなければ大丈夫だ。それよりも中は大丈夫なのか? 兵士が乗っているようなことは」

「艦内の明かりが消えていたから大丈夫だろう。問題はセキュリティーが起動しているかだが、触ると警報が鳴るかもしれない。今は何も触れないことだ」


防犯装置があるかもしれない。だから触るなと。

俺はここでも探知魔法を使ってみる。

艦内に人が乗っていれば反応があるはずだ。しかし、仲間以外に反応がない。誰も乗っていないということだ。

深夜だし、整備をする人もいないようだ。


「入ったのはいいがこの後は?」

「艦のサーバールームに行ってデーターを書き換える。そうしないとこの戦艦を動かすことはできない」


ここからはオズエルの仕事だとか。

俺たちは艦の中央にあるサーバールームへ向かった。




ご覧いただきありがとうございます。

もうちょっとストックがあるので、小まめにアップしたいと思います。

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