第31話 戦艦強奪作戦①
戦闘があった日の夕方。
家庭用の自動調理器で食事の準備をしていると、ロズルトともう一人、知らない人物が現れた。
ロズルトの紹介だと、彼はグランバー・シュメールという。
見た感じ、ロズルトと同じかそれよりも歳を取っている感じがする。
白髪で厳つい顔、武闘派という感じの立派な体格。ロズルトもなかなか良い体格をしているが、グランバーほど筋骨隆々ではない。背も高く、顎鬚が生えている。ダンディーなおじさま、という感じだ。
そいつとロズルトが並んでソファーに腰を下ろすと、リビングが急に狭くなった感じがした。
「初めまして、シューイチ殿。今日時間を取って貰ったのは他でもない。我々革命軍に協力して貰いたいのだ」
前置きもなしで直球で来たか。しかも協力要請。
まあ、いつかは来るかな、と思っていたので驚きはないが、今日の戦闘を見ての判断なのだろう。こいつ、以外と使えるぞ、と判断したのだ。
「遠慮しておきます。俺がそちらのリーダーと約束したのは、エミリーさんに魔法を教え、使えるようにすること。それだけです。君たちに協力する理由はない」
「ですが、今日は我々と一緒に戦ってくれたのではないですか?」
「それは偶然というか偶々であって、俺の気まぐれみたいな物だ。いつも助けるとは限らない。それに俺がレジスタンスに入ったところで何か変わるとは思えない。おれ1人の力など高が知れているし役に立つとは思えない。丁重にお断りさせて貰うよ」
レーザーが飛び交うような世界で魔法が役に立つとは思えない。それに、嫌なんだよね、命令されるのが。俺は自由に行動したいので、組織で行動するのはちょっと。
なので断った。
「そうですか、できれば次回の作戦だけでも参加して貰いたかったのだが……」
頭を振ってガッカリした顔をしているが、何か小芝居掛かっていてわざとらしい。
目元が笑っているんだよね。
演技が下手のようだ。
「次回の作戦? 何をするのだ?」
「それは参加しないあなたに言う必要はないのでは?」
そう言って、嫌らしい笑みを浮かべる彼を見て、俺は顔をしかめた。
どうもグランバーとは反りが合わなそうだ。
「分かった。では、後はご自由に。俺は席は外させて貰うよ」
話す気がないのであればそれ以上は聞かない。
一緒に話を聞いていたエミリーを残し席を立とうとすると、グランバーが「はぁ……」とわざとらしい大きな溜息を吐いた。
「そうですか、残念です。あなたが居れば成功率は上がると思うのですが。ですがエミリーには参加して貰います。人手が足りないので」
「え? わ、私がですか?」
何も聞いていなかったのか、驚いた表情で俺の方を見る。
なるほど、俺のウィークポイントを突いてきたようだ。
エミリーが死ねば俺の契約は果たせない。戸籍が貰えないわけだ。
姑息な手を使う男だ。やっぱり好きにはなれない。
「……エミリーを使って俺を脅すのか?」
「とんでもない。ただ、人手が足りないのは事実で、エミリーは作戦に必要だから参加して貰うのです」
エミリーが作戦に必要?
何か嘘くさいが、それを否定する要素はどこにもない。
腹が立つが、従うしか無いのか?
「何をするか先に話せ。でないと返事はできない」
「それは返事を聞いてからでないとお話しできません。極秘任務ですから」
俺を見てグランバーはニヤニヤと笑っている。横でロベルトが苦笑していた。
恐らくロズルトはグランバーの遣り口を知っていたか、もしくは前もって話を聞いていたか。
もしかしたら、レジスタンスのリーダー、ミチェイエル・ボルトン女史の入れ知恵かもしれない。なかなか食えないマダムだったからな。
何か策略があるのかもしれない。
「エミリーに死なれて貰うと困る……わかったよ。今回だけは手を貸すよ。だが、次回からは手を貸さないからな」
「勿論です。私も素性がわからない人は使いたくはないのでね」
その口調だとグランバーも俺を採用するのは反対だったようだ。
ということは、ミチェイエルの推薦か。
リーダーから言われたら仕方がなく、ということか。
グランバーの態度を見れば何となくわかる。こんな奴を、というのがひしひしと感じるからな。
「それで、俺は何をすれば良いんだ?」
「星系軍の基地に侵入して貰いたい」
「……」
一瞬、冗談で言っているのかと思ったが、真面目な顔で話しているグランバーを見て本気だと悟った。
それに、冗談でもそんなことは言わないだろう。
普通に考えれば、命が幾つあっても足りないのだから。
「フッ、なかなか無茶をことを言うね。そんなことができるわけがないだろ。いくら俺でも無理だ。魔法は万能ではない」
「もちろん、あなただけではありません。他のメンバーも協力します。あなたには基地に侵入後、ある物を奪って頂きたいのです」
「奪う?」
「戦艦ウリウスを」
戦艦ウリウスとは、この間見たアレとは別の戦艦で、その前に作られた新造戦艦なんだそうだ。
大きさはアレよりも小さいらしく、その代わり機動性が高いらしい。らしいとは、よくわかっていないからだ。
実戦に出てきたのが1回だけで、その後はドックで眠っている。そして急遽作られたのが、この間見た戦艦。問題があって放棄されたのでは、ということだ。
今回はこちらを奪うことになった。この間の新造戦艦のほうが警備がキツいらしく、近寄れないからと。
「放棄された戦艦を奪うのか? 動くのか?」
「放置されているだけで飛ばないということではない。それは確認済みだ」
「それを奪ってどうするのだ? あの戦艦にぶつけるのか?」
「そんなことはしない。まあ、何に使うかはお前が知る必要はない。奪うだけで良いのだ」
確かに。レジスタンスの作戦など知ったところで、何かできるわけではないし、参加もしたくはない。
これ以上は聞かないことにした。
「しかし、奪った後はどうするのだ? 俺は操艦できないぞ」
「その点は大丈夫だ。最新のAIが全てをやってくれる。ただ問題は、お前が艦長ではないので命令を聞かないことだ。それを何とかしないといけない」
AIは誰の命令でも聞くということではないらしい。任命された人でないと言うことを聞かないそうだ。
しかし、それに関してはデータをクリアすれば良いので問題ないと。問題なのは、それをクリアする専門家が必要ということだ。
ようは彼らも同行するので、守る必要があるということだ。
「護衛をしながら素人を連れて行かないといけないのか? 無茶だな。できるわけがない」
1人でも大変なのに、仲間を連れてとは。
自○しに行くようなものだぞ。
「しかし、彼らがいないと戦艦は動かない。マニュアルで動かすとなると、もっと多くの人が必要になるぞ」
「ぐっ……」
なかなか難易度が高いミッションだ。
普通には考えれば無理だ。だから、俺の魔法に期待したのだろう。
何とかできるのではないかと。
「うーん、わかった。やってみよう。方法がないわけでもないし。ただし、無理だと思った時点で退却も視野に入れる。無駄死にはしたくないのでね」
「わかっている。なるべく死者を出さないように計画を練っているつもりだ。危険だと思ったら時点で退却して頂いても結構。その代わり、連れて行くメンバーは必ず生きて連れ帰ってくれ。彼らは重要なメンバーなのでな」
当然、その中にはエミリーも含まれており、当日は俺と一緒に行動することになった。
この後は、決行日や集合場所を確認し話は終わった。
詳細な作戦は当日話すことになってグランバーは帰っていった。腹が立つほどの満面の笑みを浮かべて。
「やられたな。俺を巻き込むよう指示を出したのミチェイエルさんか?」
残ったロズルトは、答えない変わりに苦笑を浮かべていた。
否定しないところを見ると正解だったようだ。
「まあ、いいさ。乗りかかった船だ。付き合おう。それよりもこの作戦を考えたのはグランバーか? いくら建造中の戦艦より警備が甘いとはいえ、かなりの兵士が守っている。無謀にも思えるが、そこら辺はどうなんだ?」
「その点は大丈夫だと言っていたぞ。軍の中に協力者がいて、当日、手を貸してくれるそうだ」
詳しい話は当日ということで、作戦内容も教えてはくれなかった。
情報漏洩を恐れているとかで、知っている人は限られていると言う。
「わかったよ。当日まで我慢しよう」
作戦内容が分かれば、こちらもそれなりに準備もできるのだが。
まぁ、情報世界だ。漏れてしまえばあっという間に伝わってしまう。恐れるのも無理はない。
「それじゃエミリーは、それまでは魔法の訓練だな」
俺はエミリーの方を見てニコッと微笑む。
当の本人は乗り気では無いのでブスッとしてそっぽを向いた。
何がそこまで嫌うのか分からないが、作戦決行までエミリーの訓練に精を出すことにした。
ストックが無くなってきました。
更新頻度が落ちます。
ごめんなさい。




