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第25話 魔法の訓練①


翌朝、目が覚めると外から暖かい日差しが差し込んでいた。

熟睡できたようで、背伸びして外を見ると青空が広がっている。

時計を見ると9時を少し回っていた。

寝起きで頭が回らないが、何か大事なことを割れている気がするが、はて、何だろ?

ベッドから下りて、改めて時計を見て大切なことを思い出した。


「……やばい。過ぎている」


9時に食堂でエミリーの魔法訓練があるのを忘れていた。

慌てて顔を洗って身支度をすると、上着を持って急いで部屋を後にした。



あの後は、俺がしばらくお世話になる従業員用の社員寮へ案内された。

商業施設のすぐ隣にあって4階ほどの建物だ。

1階は食堂やお風呂があり、洗濯場もあった。何だか学生寮を思い出す。友人が部活で入っていた寮もこんな感じだったな。自動調理器が設置されているので食事の心配もない。外出ができない今の俺には至れり尽くせりの環境だ。

後は替えの下着や服など買わないといけないが、それは後ほどエミリーと相談ということで。

どこで買えば良いかわからないからね。



慌てて食堂に行くと、例のよく分からない青い紅茶を前に、ブスッとした表情を浮かべた美人が俺を待っていた。両腕を組んで俺を睨み付けている。

美人はどんな顔をしていても絵になるね、と思いつつ、苦笑いを浮かべ、向かいの席に腰を下ろした。


「……よく眠れたようね」

「おかげさまで。疲れていたのか、食事を取って部屋に戻ったら直ぐに寝てしまった。目覚ましで起きれなかったよ」


遅れたことを謝罪した。

部屋に戻りテレビを付けたが、報道番組しか流れていない。

活躍した兵士のインタビューや戦闘シーンなどを流しているが、どれも勝利した映像ばかり。味方がやられているシーンはなかった。そしてコメンテーターが軍を称えることしか言わない。戦争の原因になった増税の話などもなかった。

自分たちの都合が良い物しか流していないということだ。

あまりにも面白くないので早々に消して寝たのだ。

この戦争が終結すれば日常放送に戻ると思うので、それまではテレビを見ないことにした。


「チッ、それは良かったわ。もう少し寝ていてもよかったのよ。後10分遅かったら帰っていたのに」


来なかったことを理由に、ばっくれるつもりだったようだ。

困ったお嬢さんだ。


あの後、リーダーのミチェイエルを追いかけて行ったが、表情を見る限り上手くいかなかったようだ。

何を言われたのか知らないが、嫌嫌というのが感じ取れる。そこまでして受けさせないといけない理由もないはず。代えてあげれば良いのにと思う。

それとも、彼女ではないといけないような理由でもあるのかな?

追求するつもりはないので何も聞かないが、もう少しニコニコして欲しい。

教える側からしてみれば、そんな態度ではやる気をなくす。


「で、魔法の訓練はどうやってやるのかしら?」


ムスッとした顔で乱暴に言う。

気分は悪いがここで怒ったら負けだと思う。恐らく彼女はわざと怒らせて、止めさせるつもりだ。自分からは止めることはできないのでね。


「やることは難しくない。昨日、体の中で感じた物を自由に動かす。胸から腰へ、それから手や頭など、体の中で循環させる。それができないと魔法を外に飛ばすことはできない」

「体の中で感じた物……」


そう呟くと目を閉じて集中し始めた。

俺は黙ってそれを見ているが、直ぐに「はぁ……」と溜息を吐くと目を開いた。

諦めるのが早いな。1分も持たないとは。

彼女は集中するのが苦手なようだ。


「駄目だわ。魔力を感じることができない。昨日は胸に何かモヤモヤする物があったんだけど……」


難しい顔して眉間に皺を寄せている。

総魔力量が低いのか、感じることができないようだ。


「それじゃもう一度、昨日やったように俺の魔力を流す。それを感じてくれ」


そう言って彼女の手を握ると殺気が飛んできた。


「ん? 何だ?」


よく見ると周りの男どもが睨んでいる。

はて、恨みを買うようなことはしてないつもりだが……。

従業員用の社員寮なので俺たち意外にもいる。

食事をしている者やエミリーのようにお茶を飲んで休憩している人、雑談をしている人など。そういった人達がチラチラとこちらを見ていた。いや、エミリーを見ていた。

美人だからどうしても視線がそっちに行く。

なるほど、嫉妬というやつだ。俺が手を握ったから。

やれやれ、こんなところで恨みを買うとは。

美人は災いをもたらすということを忘れていた。他の異世界で、美人と居るだけで絡まれていたというのに。

野蛮な世界ではないので直接絡んでくることはないと思うが、凄く居心地が悪かった。


「ん、どうしたの?」


今の状況に気がつかないのは本人だけ。

いつものことなのか、こういった視線に慣れているのかもしれない。


「いや、何でもない」


再び手を握り魔力を流し始めた。

殺気が強くなったが気にしない。構ってられないということだ。

少しづつ魔力を流す。

そして直ぐに感じることができたのか、目を閉じて集中し始めた。


「……うーん、駄目ね。魔力を感じることはできたけど動かすことができない。どうやっているの? 何かコツがあれば教えて欲しいだけど」

「コツと言ってもなあ……」


俺の場合は勇者補正が働いたのか、割と簡単にできたから参考にならないんだよね。

口で説明するにはちょっと無理だな。


「兎に角、魔力を感じ続けることだな。意識しなくても感じられるようになれば、動かせるようになる。こういうのは地道にやらないと。直ぐにできるものでもない」


握っていた手を離すと感じられなくなったのか、直ぐに首を横に振って項垂れていた。


「消えたわ。ああ、もう、どうしてよいか分からない!」


苛々しているようで、テーブルを両手で「バンッ!」と叩いた。周りで見ていた男どもがビクッとする。

やはり総魔力量が低いせいで魔力を感じる事ができないようだ。

それにちょっと短気で集中力がなさ過ぎる。魔法使いには一番向いていないタイプだ。

これだと時間が掛かりだろう。


「どこか練習する場所はないか? 魔法を使っても迷惑にならないところが良いんだが」

「何をするの?」

「実際に使ってみた方が早いと思ってね。ここで使ったら建物が壊れる。だから迷惑にならないところが良いんだが」


ここにいる鬱陶しい男どもにぶつけても良いのだが、そうすると俺がここに居られなくなる。さすがに来て2日で退居はできない。

それ以外の魔法もあるが、一番興味が湧くのは攻撃魔法だと思うので実演して教えることにした。そうすればやる気も出ると思うのでね。


「うーん、それなら地下の実験場かな。武器の開発に使っているから音や振動を気にしなくていいし、それに壁の強度もそれなりにあるはずだから簡単に壊れることはないわ。この時間だったら博士もいると思うし」

「博士?」

「それじゃ向かいましょうか」


笑顔で席を立つとさっさと食堂を出て行った。

やれやれ、行動が早いの良いが人の話を最後まで聞いて欲しいね。

俺も少し遅れて食堂を後にした。




ご覧いただきありがとうございます。

ストックがある間は、小まめにアップしたいと思います。

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