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第22話 AGC


あの後は5時間ほど走り、気が付けば陽は傾きかけていた。長い影が車と並走しており、擦れ違う車も見かけない。

あれから軍が追いかけてくることはなかったが、その代わり上空を何度も飛行機が飛んで行った。空から監視しているのかも知れない。

それについては想定内のようで、ロズルトたちは慌てた素振りは見せていなかった。


街道から脇道にそれて林の中を抜けると、雑草に被われた長い道が見えてきた。

そこでロズルトがコンパネにあるボタンを押した。すると車の色が黒から緑に変わった。

まるでスパイ映画に出てくるボ○ドカーだ。

光学迷彩の機能がついているようで、上空から見えないようにしている。

なるほど、慌てていなかったのはこの機能があるからか。だから上空から見られても気にしていなかったのだ。


その道をしばらく走ると地下に伸びるトンネルが見える。フェンスで封鎖してあったが、ロズルトがリモコンで操作すると、ゆっくりと左右に開いていった。


「秘密基地か?」

「いや、基地ではない。秘密の連絡用道路だ。恐らくあのまま進めは街道は閉鎖されている。だから、今は使われていない旧都市間鉄道のトンネルを使って街へ入る。待ち伏せされているかもしれないからな」


旧都市間鉄道とは、都市間を結ぶ交通機関として使われていたが、それよりも高速なジェットトレインが開発・運行されたことにより廃線となったそうだ。

ちなみにジェットトレインとは俺が移動に使った地下鉄のこと。

昔は地上を走っていたが、今は全線地下に移動したことで、それまで使われていたこのトンネルや路線は廃止。それをレジスタンスが連絡用道路として整備し、使えるようにしたそうだ。

すごいね、の一言に尽きる。

昔のトンネルを使えるようにするには金と時間が掛かるだろう。補修や整備もしなければならない。レジスタンスだけでできるとは思えない。きっと土建屋さんが協力しているに違いない。


「一応、このことはトップシークレットだからね。他言無用でお願いするよ」


そう言って俺の方を見てウインクする。

キザ男だね。

顔が良いので何をやっても様になる。俺がやったらドン引きされそうだ。

俺は「わかった」と言って頷いた。



トンネルの中をしばらく走ると駅が見えてきた。

誰もいないホームに明かりが1つ、ポツンと点いている。

旧都市間鉄道で使われていた駅で、今は廃駅となっているそうだ。

その手前で停車するとエミリーが降り、壁に向かって歩いて行った。そしてしばらくして反対側の壁が開き、車ごと中に乗り入れた。


「ここからは歩いて行く」


車を降りると近くの階段を上る。

扉を開けると、誰もいない暗い地下通路と繫がった。


「ここは?」

「廃駅になった地下通路と繫がっているの。そこから他のビルに入るわ」


薄暗い通路をエミリーの後に付いていくと、扉を開けて更に奥へ。どうやら、廃駅の通路を使って出入りしているようだ。

そしてそのまま進むと扉にぶつかりまた更に奥へ。最終的にはビルの地下駐車場へと繫がった。


「ここに代わりのグラヴィティカーが用意されている。それに乗ってアジトに向かう」

「グラヴィティカー?」

「ああ、グラヴィティカーを知らないのか。反重力車。アンチ・グラヴィティ・カー。一般にはグラヴィティカーと呼んでいる。略してAGCとも言うが。今はこれが一般的な乗り物で、その技術は他の分野にも応用されている。代表的なのは宇宙船だな。反重力を使って宇宙に出る。ジェットエンジンを使わないので安全で、しかもコストがかなり抑えられる。それに環境に優しいので今はそれが主流となっている。環境問題はどの惑星でもあるからね」


反重力装置が組み込まれているのから浮いているということか。てっきりリニアモーターカーみたいな原理かと思っていたが違うようだ。


「反重力装置が積んであるということは、AGCも宇宙に行けるのか?」


2人が突然笑い出した。

俺が馬鹿なことを言ったみたいだ。


「さすがにAGCで宇宙は行けないわね。装備が全然違うから。それに小型の反重力装置ではせいぜい1メーチルも浮かべば上出来よ。惑星を出るまでの出力が足りないわ。それに密閉されていないから宇宙にでたら一瞬で死ぬわよ」


エミリーが笑いを堪えながら説明してくれた。

宇宙空間は空気がないし気温も低かったはず。マイナス270度とか。普通の車が宇宙に出れるわけがない。

そりゃ、笑うわけだ。何も知らないのだから。

アニメみたいに車で宇宙を走れたら、と思ったが無理のようだ。


「すまん。何ていったって俺のいた世界では、宇宙なんてなじみが無いものだからね。一般人が宇宙に行くことはない。金を出せば行けないことはないが、宇宙に行く殆どの人は科学者とか研究者だね。俺たちにとって宇宙は夢のまた夢。簡単に行けるような所ではないんだよ」

「そうなの? シューイチが居た世界は初期文明なのね。それじゃ仕方がないわ」


初期文明。

まさか俺たちがそう言われるとは思わなかった。

でも、これだけ科学に差があれば、そう思われても仕方がない。

こっちは宇宙開発が進んで、様々な星に行っているのだから。


倉庫から出ると、別のグラヴィティカーが駐車してあった。

見た目は普通の乗用車。今度はハンドルが付いていないのでオートマ車だな。

乗り込むと直ぐに発車した。

行き先はどこか知らないが、勝手に走って行く。既に目的地がインプットされているのか、それとも無線操縦されているのか。しかし、乗り心地だけは最高だ。前に乗ったグラヴィティカーもそうだったが揺れが殆どない。滑っている感じだ。それに、エンジンの振動もないし音も殆どしない。さすが未来の車。タイヤなんていう物は存在しないのかもしれない。




ご覧いただきありがとうございます。

ストックがある間は、小まめにアップしたいと思います。

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