第20話 この世界の神様
「この世界に神様はいないのか?」
「いないわね。聞いたことがないわ。私が知っているのは歴史書の中だけ。この世界を創造したいう神『アトーム神』という神様がいたとか何とか。それも、人類が宇宙に進出する前、開拓時代より前の話ね。それこそ魔法があったとされている時代に存在してたような伝承が残されていたけれど、それを証明するような物は見つかっていないわ。私もシューイチから聞かされるまでは忘れていたし、神様なんて言葉、歴史書の中か漫画やアニメなどの世界だけ。だから、誰も信用しないと思うわよ、神様なんてね」
神様が忘れられた世界か。
文明が進んで科学も発展すれば、神様に頼らなくても何でもできるようになる。
必要ないということか。
「それじゃ、宗教も存在しないわけだ。神がいなければ信仰も何もないだろ?」
「それが宗教はあるのよね。ズール教とかいうのが」
そう言って困った顔で肩を竦めてみせる。
まぁ、その顔を見て何となく察しは付くが、碌でもないことをしているのだろう。
無茶な勧誘とか、信者から金を集めているとか、そういうのはどこの世界でも同じだからね。もしかしたら高額な壺とか売っているのかもしれない。
あまり聞きたくはないが、ここまで話したのなら聞かないわけにはいかなかった。
「おかしな話だ。神様がいなければ宗教も信仰もないだろ。対象が存在しないのだから」
「何も神様だけが信仰の対象じゃないわ。人だって奇跡に近いことをすれば信仰の対象になるわよ。水をワインに変えたり、砂を砂金に変えたりすれば神様みたいなものよ。もう、人間の枠からはみ出しているわね」
「そういう奴が存在しているのか?」
「存在、というか、居た、というのが正しいかしら。国を2つほど跨いだ先にある国で、ズール教国という国があるわ。そこの初代教王がそういった事をやったと伝えられているわね。何でも、どんな病気も忽ちに治す水とか、鉄から金を作ったとか、石を宝石に変えたなど、色々と逸話があるわ。それで財を成して国を起こしたの。それがズール教国になるわね。だから初代教王は、今も神として崇められているわ。その国の国民からね」
鉄を金に変えた……錬金術というやつか。
ひょっとしたら、そいつは魔法が使えたのではないのか?
今言ったことは魔道具を用いれば可能な範疇だ。ただ、鉄を金にするには相当な魔力と知識が必要になる。普通の錬金術師にはできない芸当だろう。
……高ランクの錬金術師か。
俺と同じで異世界人なんだろうか?
ちょっと調べたい気がするが今の状況では無理だな。先にこっちの問題を片づけないと。
「宗教があるのは分かった。しかし、あまり良い顔をしていないな。何かやらかしているのか、その国は?」
「色々とね。その教祖の教えを広げようと各国に教会を建てて、国教にするよう進言しているわ。何でも『愛は宇宙を救う』とか言って訳のわからないことを教義にしているわね。宗教の自由を邪魔をする権利はないとか騒いでいたわ。この惑星にも教会はあるわ。前任の代官は教会の建設を許可はしなかったけど、今の代官が許可を出したわ。噂ではかなりの金を貰ったとか何とかで。代官邸のある第1都市の上流一等地に、それは立派な建物が建っているわよ。私は見たことがないけど、巨大な純金の十字架が礼拝堂にあるとかで、大勢の観光客で賑わっているとか。物珍しさにね」
「十字架ねぇ……それで、信者になる奴はいるのか?」
「いないでしょうね。信者になるにはお布施が必要らしいけど、かなりの高額で上流市民でないと払えないわ。まぁ、金持ちのための宗教みたいなものね。私たちには関係ない話だわ」
しかも上流一等地にあるということで一般市民は入れないとのことだ。
建てる意味なんてない気がするが、そこにあるということに意味があるようで、信者のことなどどうでも良いらしい。
何だかちょっと危険な香りがするが、でも、宗教とはそういうものだと知っているので納得した。異世界ではよくある話だったので。
「まぁ、宗教なんて関わるものではないな。碌な事にならないから」
エミリーは頷いた。それには同意のようだ。
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