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第191話 超高熱反応弾①

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乗船してブリッジに顔を出すと、そこにグランバーがいた。

俺が「あれ?」と言うと、グランバーが俺に気づき、露骨に嫌な表情を浮かべた。まさかここで出会うとは。

会うことは無いと思っていたのだが。


「はぁ……」

「おいおい、人の顔を見るなり溜息とは、どういうことだ?」


会いたくなかった気持ちはわかるが、露骨過ぎるだろ。俺もムッとした顔はするが、それ以上は怒れない。顔に出さないだけで、俺も同じ心境なのでね。

まぁ、出会ってしまったものは仕方がない。俺も諦めて、グランバーの隣のシートに腰を下ろした。


「もうお前と一緒に船へ乗ることはないと思っていたのだが……残念だ」


そう言って頭を振っているが、それは俺のセルフ。嫌なら乗らなければ良いのに。


「そう言うのであれば、断れば良いだろ」

「リーダーの命令なんでね。それで仕方がなく乗っているのだ」


肩を窄めて見せて、すごく残念そうに言う。

何でも向こうの指揮官とは顔を見知りとかで、知っている人が案内した方がいいということで、()()()ではあったが、乗船したそうだ。

怪しまれないための配慮らしいが、多分だけど、俺の監視も含まれているのだろう。何をしでかすかわからないからな、この船は。

そういう理由があるのなら仕方がないが、しかし、その不機嫌顔はどうかと思うぞ。

艦長として乗っているのであれば、もう少しニコッとして貰いたいものだ。

こちらを見ているクルーたちが戸惑っているだろ。


「そう言うお前はどうして船に乗ったのだ? そっちこそ断れば良かったのでは?」

「俺は報酬に釣られてね。なんと、この依頼が終われば船を1隻くれるそうだ。自由に宇宙(そら)を飛ぶことができるのだぞ。断る理由がないだろ?」


今回の依頼の報酬は船だ。

終われば船を1隻プレゼントしてくれるそうだ。しかも、面倒な手続きもしてくれるそうで、俺には至れり尽くせりだ。


「リーダーが船をくれると言ったのか?」

「そうだ。貸しも含めてそれでちゃらということだ。しかし、どんな船をくれるかまでは聞いていないが、この戦争が終わったら手配してくれるそうだぞ」

「ふむ……」


船のことは聞いていなかったのか、俺の話を聞いたグランバーが腕を組んで首を傾げている。

この船のことを考えていると思うが、俺はミチェイエルに言った、戦艦はいらないと。向こうも了承したので、この船でないのは確かである。

戦艦なんか貰っても使い道がない。戦争に行く気などないのでね。


「そういえばロズルトやエミリーはどうした? この船に乗るのであれば彼らの手助けは必要だろ?」


ブリッジ内を見渡すが見たことない顔ばかり。メンバーが全て入れ替わったみたいだ。


「彼らは他の用事があってな。迎えに行くだけなら俺たちだけで十分なので、連れて来なかった。それにロズルトを連れて来ても役には立たないぞ。あいつは地上が本職だからな」


そういえば前に乗っていた時も役に立ってはいなかったな。AIの為だけに乗って来たようなものだと言っていたし、必要ないというば必要ない人間か。


「しかし、すんなりと惑星を出られたな。一悶着あるかと思ったが」

「こちらで調べた限りだと、それどころではないらしい。何でもこの惑星に残っていたドラギニス軍は全て第三惑星に向かって出航した。残っているのはここの星系軍だけという話だ」

「え? それって大丈夫なのか? 星系軍が裏切ったりは……ないか」

「そうだな。星系軍が裏切ってドラギニス軍を攻撃するなどあるわけがない。自軍の同僚を攻撃し、惑星を明け渡しのが今の星系軍だ。今更作戦でした、で済むような犠牲者の数ではない。誰も受け入れないし納得もしないだろう」


司令官の指示に従わない艦隊は攻撃・撃沈されたという。粛清された、と言った方がわかりやすいか。

そこまでしておいて作戦でしたは無理な話。最後までドラギニス軍に付いて行くしかないのだ。


「裏切れないとわかっているから任せた、そういうことか?」

「それもあると思うが、それよりも信用していない、と言った方が良いか」

「どういうことだ?」

「オーガ族は人族を信用しない。だから周りにいるとかえって邪魔なのだ。それで参加させなかった、というのが本当のところだろう。それに奴等は平気で人族を裏切る。信用しては駄目だということだ」

「ふーん……」


何か釈然としないというか、引っ掛かるというか。

人族を信用しない、というのであれば、なぜ、監視も付けず全ての船が出航したのだ?

それに平気で裏切るのであれば、彼らを盾代わりにして戦うこともできる。人族を何ともおもっていないのだから、全滅しても、気にも留めないだろう。

やはりスッキリとこない。何か裏があるようにも思えるが……。

まあ、考えたところで答えが出るとは思えない。それに、俺の知ったところではない。迎えに行くだけで、戦闘に参加するつもりはないのでね。


「ドラギニス軍がいないとなると、残っているのは星系軍だけになる。どれだけの艦隊が残っているか知らないが、帝国軍には勝てないだろう。勝負はついたようなものだな」

「普通ならな」

「ん? やけに慎重な物言いをするな。何かあるのか?」

「戦争というのは何が切っ掛けで戦況が変わるかわからない。楽観してはいけないということだ」


急に真面目な顔で言うあたり、苦い経験でもあるのか?

前にエミリーから聞いたが、グランバーは軍人上がりらしい。ただ、どこの軍隊かまでは聞いていない。興味がなかったのでね。

過去の経験からそう言ったのかもしれない。



それからしばらくして合流宙域に到着した。

そこにはすでに何隻かの軍艦が待機しており、巨大な補給艦による、補給が行われていた。


「あれが帝国軍の艦隊か?」

「そうだ。今は数は少ないが、もう少し待てばそれなりの数にはなるだろう」


さすが帝国軍とあって艦の色やデザインは統一されている。

青を基調に赤や橙色のストライプが何本も入っている。それで部隊を表しているそうだが、俺に意味はわからない。赤は第何師団とか、そういう意味なんだろう。軍人でもないので知る必要性も感じない。

戦艦のデザインはシンプルで、漢字の山タイプ。上部甲板と左右側面に主砲が付いており、艦首は後部についている。巨大なスラスターが3つ付いていた。

全て同じタイプで、このウリウスよりも一回り大きい気がした。というか、このウリウスが他と比べて小さいのだろう。大型艦と言っていたが、小さい部類に属するみたいだ。


「30隻にも満たないみたいだが、最終的にはどのぐらいの数が集まるのだ?」

「それは俺にはわからない。向こうの指揮官に尋ねないことには」

「そう言えば向こうの指揮官とは顔見知りなんだってな。どういう人物なのだ?」

「ベルンハルド・ベイロン少将のことか? 知り合いではないぞ。ただ、お前たちを待っているときに話した帝国軍の指揮官だ。それと、第2惑星がドラギニス軍に落ちたと教えて貰った人物でもある。詳しく知りたかったらネットで調べると早いだろう。イスタール王国との戦争で、銀翼十字突撃賞を貰った英雄でもあるからな。ニュースでも取り上げていたので簡単に見つかるはずだ」

「ほー、そんな英雄がこの作戦に参加したのか?」

「今回の件は、帝国もそれだけ重く受け止めているということだ」

「……」


真面目な顔で話しているが、何か噓っぽい。

惑星1つ奪われたら大事だと思うが、しかし、数ある惑星の1つを奪われたぐらいで、そんな英雄を派遣するとは思えない。

それに、占領された領地の奪還は領主がするものだろ。帝国軍が首を突っ込むには早すぎる。これから領軍が戦闘しようとしているのだから、その結果を待ってからでも遅くはないはずだ。

今回の帝国軍の派遣。これも裏がありそうだ。

まあ、何はともあれ、そんな人が来てくれるのであれば、俺の出番はなさそうだ。

迎えに行くだけで船が貰えるのであれば、楽な仕事だ。


「英雄が来てくるのだから勝ったも当然だな。しかし、それなら何で俺を呼んだのだ? 帝国軍を迎えに行くだけなら、この船でなくても良い気がするが」

「……さあな。俺にもわからない。そういったことはリーダーに聞いてくれ。俺が決めたわけではないからな」

「何だ、理由を知らされていないのか?」

「この船はお前の命令しか聞かないから呼ばれたのではないのか? 何かあったときの保険みたいなものだと思っているが」

「俺の命令しか聞かないというのは語弊だな。この船は誰の命令も聞かないぞ。従っている振りをしているだけさ。何を考えているのか俺にもわからない」


そう言って両手を上げ、お手上げのポーズをする。

本当にわからないのだから。


「それでも命令すれば言うことを聞いているではないか。それは何か理由があるからだろ? 違うのか?」


そう言ってジロリと睨んでいるが、理由といえば魔力を与えていることだ。

魔力が底を突けばダンジョンコアは何もできない。だから従っているだけに過ぎない。

しかし、そのことは話せない。こんなものがいくつもあって、復活されては困るからね。

当面は内緒にしておこうと思う。


「知らないね。偶然だと思うぞ。俺だって迷惑しているのだから」


グランバーは怪しむ目で俺を睨んでいるが、知らん振りをした。

これ以上話すとボロが出そうなのでブリッジから退出した。俺がいてもやることもないしね。

帝国軍が集まるまで、部屋でのんびりと過ごすことにした。



*****



あれから3日が経ち、帝国軍の艦隊が集結した。

話を聞くと、戦艦や駆逐艦などを含めて、総勢124隻ほどの軍艦が集結したそうだ。

旗艦を中心に、上下左右に綺麗に並ぶ。

その光景が珍しく、みんな手持ちの携帯端末で動画を撮影していた。

そもそも帝国軍がこんな辺境の惑星まで来ることはないそうで、珍しさも手伝って、というのもあるのかもしれない。


俺は部屋の中で休んでいたが、作戦内容は聞いていた。

帝国軍の後方で殿として付いていくことになっている。それはグランバーと帝国軍の指揮官で決めたことで、俺たちの出番はない、ということだ。

ただ、情報交換は行われたようで、惑星の今の状況を聞いて驚いていた。向こうはドラギニス軍と戦うつもりで来ていたようで、なにか拍子抜けしたような表情を浮かべていたという話だ。さすがは英雄。戦いたくて仕方がなかったようだ。


「さて、出航の時刻だな」


ブリッジに入ると、全員がシートに座り待機していた。俺が一番最後。

メインモニターにはレーダーが映し出され、艦隊の位置情報が表示されている。そしてグランバーはしきりにレーダーを気にして難しい顔していた。

見た限りだと、帝国軍の艦隊しか反応がない。

何を気にしているのかわからないが、俺はグランバーの近くに立ち、出航するまで待つことにした。


「グランバーさん。帝国軍が出航します。作戦に変更はありません」

「わかった」


通信士からの報告で出航準備が始まった。

機関士らしき人がジェネレーターの出力を上げている。前はそのシートに博士が座っていたのだが、今日は知らない人が座っていた。

居れば騒がしいが居ないと寂しいと思うのは博士に毒されているな。

今のところ問題もなく、船も素直に言うことを聞いているようだ。

俺の出番もなし、ということだ。


帝国軍が一斉に動き出した。

レーダーを見ると青い光点がゆっくり動いている。

何もなければこのままワープに入るそうで、その準備も同時に進められていた。


「近くの艦隊とワープ同期中。信号を確認。同時起動が可能です」

「ワープ装置……チャージ中です 38パーセント」


次々と報告が上がってく中、グランバーは黙って聞いていた。

その視線はレーダーに釘付けで聞いていないようにも見えた。


「一斉に動く姿は壮観だな。これで全艦隊なのか?」

「……聞いた話ではそうだ」


視線を動かさず、俺の問いに答える。レーダーが気になって仕方がないようだ。


「集まるのに以外と時間が掛かったな。もうちょっと早いかと思っていたが」

「ドラギニス軍に見つからないように来るために、少数で複数回に分けて来たのだ。時間が掛かるのは仕方がない」

「ずいぶん手が込んでいるな。それで、見つからないように来られたのか?」

「今のところドラギニス軍に動きはない。見つからなかったのか、それとも静観しているだけなのか。それはどちらかわからない。でも、俺は無理ではないかと思っている」


これだけの数が監視網をすり抜けて来るのは無理という話だ。

それに監視衛星は星系軍が管理している。気が付かないはずはないと。


「それなのに何もないということは、静観している?」

「そういうことか、それともこれから来るか。ただ、このまま惑星が帝国軍の手に落ちれば、ドラギニス軍は挟まれる形になる。無視はできないはずだ」


第3惑星で集結しているドラギニス軍からしてみれば、前後から挟まれる形になる。

前方には領軍が、後方からは帝国軍が襲ってくる。ゆっくりしていられない状況になったということだ。


「すると、ドラギニス軍は引き返してこちらに戻って来るということなるのか?」

「いや、それはどうだか。撤退を始めれば、今度は対面している領軍が攻撃を始める。引き返すことは無理だろう」


ケツを向ければ襲ってくる。

このまま事が進めばドラギニス軍も壊滅するということだ。


「なんだか話を聞いていると、一気に事が片付きそうな雰囲気だな」

「まぁ、そうなれば一番良いが……」


グランバーにしては珍しく、苦笑を浮かべながら言葉を濁した。

何が彼をそんな不安にさせているのか、話を聞いている俺の方が不安になってきた。


「何か不安な要素でもあるのか?」

「ふむ……上手く事が運びすぎていてな。帝国軍が惑星を取り戻せば、こうなることぐらい赤子でもわかる。それなのに何もせずに静観しているのがおかしくてな」


なるほど。それでレーダーをしきりに気にしているのか。

攻めてくるのではないかと。


「考え過ぎということはないのか?」

「仮にもザイラ・バーツは帝国軍にいた人物だ。黙ってやられるような奴ではないだろう。警戒は怠らない方が良い」

「この数を相手に星系軍が戦うというのか?」

「どの道残っている彼らには後がない。黙って捕まるとかはないはずだ」

「それは確かにそうだが……」


後がないのはドラギニス軍だけではない。謀叛した星系軍も同じで、捕まったら極刑は逃れられない。

ならば、打って出ることも予想される。それをしきりに気にしていたようだ。


「しかし、この戦力差で打って出ることなどあるのか?」

「わからない。しかし、もし打って出るようなことがあれば、それは何か策があるということだ。油断はできない」


慎重なのは良いが考えすぎではないだろうか?

星系軍も馬鹿ではない。そんな無謀なことをするとは思えなかった。


「グランバーさん。レーダーに星系軍の反応があります」


レーダーを監視していたクルーからの声で、全員の表情が強張った。

慌ててレーダーを確認すると敵を示す赤い光点がこちらに向かって移動していた。

グランバーの不安が的中した形となった。



ご覧いただきありがとうございます。


時間がなくて毎日アップはできないと思いますが、気長に付き合って下さると嬉しいです。

毎日ぽつぽつと書いています。

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