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第18話 逃走劇②


「ん? 追ってきている兵士の数が減ったか?」


郊外に向かっているが、追っている兵士の数が減った気がする。

街中での発砲で兵を下げたか。

それでもあれから何発か飛んできて被害が広がっているが。


「さて、もう少しすれば郊外にでるが……」


このままでは戦闘は避けられない。できれば戦いたくはないが、だからといって捕まるわけにはいかないし、どうするか……。


「戦わずして包囲網を突破するにはどうする?」


探知魔法を使うと、既にこの先は赤いマークで一杯だ。

敵しかいないということだ。


逃げ道を探していると探知魔法に白い反応があった。

それが高速で近づいてくる。

白いマークは中立を意味するので兵士ではない。敵意を持っていれば赤く光るはずだ。

好意的なら青く光るから俺と面識が無い市民か誰かだろう。ただ、戦闘が繰り広げられている真っ只中に市民が来るとは思えない。

視線をそちらに向けると黒い車が見えた。普通の乗用者サイズだが、ちょっと厳ついボディーをしている。RVタイプと言った方が近いか。ただ車輪がないので浮いてるが。

俺の近くに止まると天井がスライドし、中年男性が顔を覗かせた。


「おい!、こっちだ!」


手招きしている。

俺はどうするか一瞬迷ったが、後ろから兵士が近づいてきたので乗ることにした。

罠の可能性もあるが、このまま戦うよりは良いだろうという判断で。

屋根からそのまま車にジャンプし、後部座席に着地すると急発進し、そのまま包囲網を突破した。

途中で兵士が車の行く手を遮ろうと飛び出してきたが、止まることなく跳ね飛ばして行った。ぶつかる瞬間、シールドが展開したようなので死ぬようなことはないだろうが、ぶっ飛んでいった先が民家の中なので、そっちの方が心配になった。後で請求できると良いが。


「お兄さん、派手にやっているわね!」


助手席には美女が座っていた。俺の方を見てニコッと微笑んでいる。

茶色い髪に赤い瞳。天井が開いているせいで長い髪がはためいていた。


「えーと、助けてくれたことにお礼を言った方がいいか?」

「そんなこと気にする必要はないわ。私たちが勝手にやったことだから」


彼女は運転している男性を見て頷いた。

男性の方も彼女をチラッと見て微笑んでいる。金髪のダンディーなおっさんだ。美男美女とは、まさにこの2人のことを言うのだろう。

ちょっとイラッとしたのは内緒だ。


「まずは自己紹介から。私はエミリー。こっちの運転している方はロズルト。私たちは革命軍『赤い牙』のメンバーね」


やはりレジスタンスか。

まぁ、俺を助けるとしたらレジスタンスぐらいしかいないからな。

しかし、来るのが早いな。昨日の今日で接触してくるとは。

もう少し後だと思っていたのだが。


「俺は橘秀一郎。呼びづらければシュウイチとでもイチロウとでも好きに呼んでくれれば良い」

「シューイチね。わかったわ。それで、シューイチはどのグループに属しているのかしら?」

「グループ?」

「あら、あなたも革命軍なんでしょ? 昨日の戦闘で多くの兵士を倒したじゃない」

「昨日の戦闘? ……どうしてそのことを知っているのだ? 軍しか知らない情報だぞ」


昨日のニュースでは俺の事は言っていなかったはず。

だから知らないはずだ。


「私たちにも情報を集める部門があってね。あなたの戦闘映像はすでにハッキングして保存してあるわ。だからいくら星系軍が隠しても無駄なの。昨日の戦闘、見事だったわね。新しい兵器の開発に成功したのかしら? でも、そんな情報は届いていないのだけれどね。誰が開発したのかしら? できれば私たちにも共有して頂きたいのだけれど」


魔法を兵器と勘違いしているらしい。

でも、魔法が廃れた世界なら誰も魔法とは思わないだろう。兵器でいくらでも代用できそうなものだからな。

ここは本当のことを話すか悩むところだね。まぁ、話したところで魔法の知識が無い人に使えるとは思えないが。

訓練すれば覚えられると思うが、敵に通用する魔法となると上級魔法以上の威力が必要になる。そこまで使えるようになるまでには数年は掛かるだろう。それなら代わりの兵器を開発したほうが早い。

話したところで問題はなさそうだ。


「あれは魔法だよ。君たちに使えるとは思えないが」

「魔法?」


エミリーに『何言っているんだ、こいつ』みたいな顔をして睨まれた。

まぁ、普通、魔法と言えばそうなるよね。魔法がない世界なんだろうから。

魔法があったことすら忘れ去られている可能性もあるのだから、そういう顔をされても仕方がない。ロズルトにしてみれば苦笑を浮かべていた。


「魔法て漫画やアニメで出てくる、あれ?」

「お! アニメがあるのか。この世界も捨てたもんではないな」


アニメ好きの俺が嬉しそうに言うと、二人は変な人を見るような目をして俺を見ていた。

この歳でアニメが好きなのは駄目なのか?

ひょっとして大人向けのアニメとかないのかもしれない。いや、アニメ自体、大人は見ないのかも。

しかし、娯楽がなければどうしようかと思ったが、漫画やアニメは普通にあるらしい。

異世界物とかあるのだろうか? 

ラブコメやミステリーものなど、この世界でも定番なものは存在するのか?

宇宙に進出しているのであれば、実写版ス○ーウォーズとかもあるかもしれない。もしかしてヤ○トとかも。

後で時間があれば調べるのも悪くはない。

でも、魔法のことを知っているなら話は早い。

ゼロから説明する手間が省ける。


「俺は元勇者だ。色々とあってこの世界に来た。それで魔法が使える、と言ってもわからないか」

「えーと、勇者は分かるが、その前に「この世界に来た」というのはわからないわ。間違えてこの惑星に来たということかしら。それに勇者って……ああ、わかったわ。例のアレ、痛い人は掛かる病気。何って行ったかしら……」

「中二病だ」


ロズルトがボソッと呟いた。


「そう! それよ!」


おい! 失礼な!

と、突っ込みそうになったが、何も知らない人から見れば、俺はそういう人に見えるだろう。俺も何も知らなかったらそういう反応をする。

だから怒れなかった。


「異世界から来たと言えば分かるか?」

「異世界? 別の世界?」


2人とも険しい表情になってきた。

俺が冗談を言っていないと分かってきたからだ。


「えーと、なに。シューイチは異世界から来たから魔法が使えるということなの?」


エミリーの顔が引き攣る。

話がとんでもない方向に来たので、ついて行けない感じだ。


「そういうこと。実際に見れば分かるよ。火を集え……ファイアボール」


手の平に火の玉を作り出す。

それを見た2人は唖然とした顔をして、無言になってしまった。


「ま、このように魔法を使って兵士を倒したのさ。武器や兵器は使っていない」


俺の言葉を聞いてロズルトが小さな溜息を吐いていた。




ご覧いただきありがとうございます。

ストックがある間は、小まめにアップしたいと思います。

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